石川県小松市金平金山の紫水晶と緑鉛鉱

石川県小松市金平金山の紫水晶と緑鉛鉱

1.初めに

 1週間ほど前に、石友のNさんご夫妻に案内していただき、石川県小松市の
金平(”かなひら”と呼ぶらしいが、尾小屋鉱山の管理をしている方は
”かねひら”と呼んでいた)金山跡で、紫水晶と緑鉛鉱を採集した。
 この知らせが、東海地域の石友にも伝わり、産地の場所を教えてとの
メールが入った。
 私が自力で採集し緑鉛鉱は、貧弱なもので、もう少し見栄えのする
標本が採集したいと思っていた。妻が福井県美山町の宿泊施設が気に
入ったこともあり、Nさんの了解を得て、同じコースを回る「ミニ採集会」を
企画した。
 愛知のKさん親子、静岡県のYさん一家そして我々夫婦の9名での
採集会となった。愛知の自称”雨男”のHさんが不参加の御蔭(?)で
梅雨時には珍しく、晴れ間が見える中で、全員が緑鉛鉱と紫水晶を採集
できた。
 ズリの一部で、昔の坑道跡や、尾小屋鉱山へ鉱石を輸送した鋼索の
遺跡などを確認し、ここが金平金山(後に尾小屋鉱山金平坑)の一部で
あったと考えています。
 さらに、2次鉱物と思われがちな「緑鉛鉱」ですが、初生と思われる
産状の標本も採集することができ、有意義なミニ採集会であった。
 産地を案内するのを快諾いただいた、Nさんご夫妻に、厚く御礼申し
上げます。
(2003年7月採集)

2.産地

 いろいろなHPなどに掲載されている産地だと思いますので、詳細はそちらを
参照してください。
 ここでは、「金平金山」跡と思われる竪坑(陥没跡?)や斜坑などのほか
尾小屋鉱山金平坑の時代のものと思われる鋼索鉄柱やバケットの残骸が見られます。
 坑口付近には、”金草”と呼ばれるシダが繁っており、いかにも金山跡に相応しい。
           
        竪坑(陥没?)跡            斜坑
                   金平金山遺跡

           
         鋼索鉄塔            バケット
               尾小屋鉱山金平坑遺跡

3.産状と採集方法

 紫水晶は、分離結晶あるいは群晶として、黄土色の粘土混じりのズリ石の
中に埋もれている。
 緑鉛鉱は、ドロドロのズリ石の中から探し出すのは至難の業で、雨に洗われた
ズリ石の表面を”ジックリ”眺めて捜すのが確実でしょう。
 翌日行かれた奈良のAさん親子は、ズリ石を川まで運んで、水で洗って
採集したとのメールをいただいた。
 先週、Nさんご夫妻と我々夫婦が採集して以来、誰も訪れた様子がなく
掘り返した痕が、長雨で洗われ、採集には絶好の状態でした。
 到着早々、Yさんの奥さんが、小さいながら「緑鉛鉱」の美しい標本を採集し
それから先は、続々と良品が見つかる度に歓声があがる。
 Kさんと息子のS君も、石友の分までシッカリ確保できたようです。Yさんの息子達
Y君とS君は目の良さを生かして、小さな分離結晶を次々と見つけ出す。
老眼の当方は苦戦。妻に至っては、結局小さな分離結晶1つ。
 私は、Yさんの娘さんのAちゃんと水晶探しに興じていました。
           
          Kさん親子             Yさんご一家
                 金平金山跡採集風景

4.産出鉱物

(1)紫水晶【Amethyst:SiO2】
   『ここの紫水晶は、全体に色が薄く、母岩の部分は濃い紫色ですが、先端では
  透明になっているのも珍しくありません。
   また、結晶の表面が”キレイ”なものは少なく、”子持ち水晶”状になって
  いるのが普通です。』と言っていましたが、透明感のある群晶と単晶がある
  ことが分かりました。
   Yさん、我々夫婦が引き上げた後、最後まで粘ったKさん親子が、5cmクラスの
  良品を採集したとの、画像付きの喜びのメールを頂いた。脱帽!!。
   紫水晶は、ズリにまんべんなくあるわけではなく、特定のスポットに散らばって
  いるようです。
           
            群晶            単晶
                金平金山産紫水晶
(2)緑鉛鉱【Pyromorphite:Pb5(PO4)3Cl】
   緑鉛鉱というくらいですから、神岡鉱山産のもののように”緑色”が普通ですが
  ここでは”灰白色””緑色”〜”紫色”のものが産出します。
   黄土色の土状の上に生成したものと、紫水晶などの上に生成したものの2通りが
  あり、是非両方採集したいものです。
   (紫)水晶の上に晶出しているものは、結晶の一端が、(紫)水晶に埋もれた
  ように見え、緑鉛鉱は、鉛の2次鉱物とされますが、この産地には初生鉱物もある
  のではないだろうか、と考えている。
         
   緑鉛鉱【水晶を貫く初生鉱物?】   紫色の緑鉛鉱【自力採集品】
               金平金山産緑鉛鉱

(3)このほか、白鉛鉱、青鉛鉱、硫酸鉛鉱などの鉛の2次鉱物や孔雀石など銅の
   2次鉱物が採集できるとの情報もあり、”色物”をいくつか持ち帰りましたが
   まだ調べきれていません。

5.おわりに 

(1)久しぶりの「ミニ採集会」でしたが、懐かしい顔ぶれと一緒の採集は
   日頃の雑事を忘れさせる、楽しいひと時でした。
(2)この日は、後ほどHPに掲載する予定の「小松市博物館」で、金平金山の
   展示を見た後、福井まで足を伸ばし、先週Nさんご夫妻と泊まったと同じ宿
   「みらくる(美楽来)亭」で一夜を過ごした。
   杉林を取り囲むように配置された、地元特産の杉の間伐材をふんだんに使った
   静かで広い部屋、日本海や近くの山川の素材を活かした美味しい料理そして
   チョット熱めのいい湯で採集の疲れを、癒すことができた。
    また、訪れたい場所です。
  ロビーにて
6.参考文献

1)石川県地方開発事務局編:石川縣地質鑛産誌,同局,昭和28年
2)石川県地方開発事務局編:石川縣地質図:同局,昭和26年
3)加藤 昭:二次鉱物読本:関東鉱物同好会,2000年
inserted by FC2 system