山梨県上佐野の透輝石 -新産地-

     山梨県上佐野の透輝石 -新産地-

1.初めに

 山梨県は、水晶で有名なのは言わずもがなですが、それ以外に、古い教科書や
図鑑に必ずと言って良いくらいに掲載されている鉱物がいくつかあります。
 その1つが、上佐野のクロム透輝石でした(過去形)
 ここの透輝石は微量のクロムを含み、エメラルドグリーンの宝石を思わせる結晶は、
単晶のほかに双晶もあり、大きなものは3cmを超え、母岩付きも採集できる露頭が
あった。しかし、ここは、山梨県の自然記念物となり、採集できないにもかかわらず
訪れる人たちによって、露頭が大きく掘り込まれ絶産状態と聞いている。
 2005年5月に、長野県佐久穂町(旧佐久町)の産地を案内した京都の石友・Tさんから
クロム透輝石の新しい産地があることを教えていただき、5年ぶりに上佐野を訪れた。
 新しい透輝石の産地は、ほとんど採集された跡がなく、結晶は昔の産地ほど
大きくはないが、綺麗な透輝石を採集できた。
 情報を教えていただいたTさんに感謝しています。
(2005年5月採集)

2.産地

 身延線「内船(うつぶな)」駅の富士寄りの踏切りを渡り、天子湖を目指して進みます。
上佐野の集落が終わる寸前左に「共栄商店」があり、その斜め前方に「茶工場」がある。
ここに、駐車させてもらい、古びた鉄橋(橋の木の板は腐っていて非常に危険)を渡り
廃屋の前を上流に向かうと、透輝石の露頭がある。

    透輝石産地【鉄橋上から】

3.産状と採集方法

 ここの透輝石も旧産地同様、安山岩の斑晶として産出します。露頭は”ボロボロ”に
風化しており、簡単に単晶が採集できますが、透輝石の結晶も風化が進んでおり
やや堅い母岩の部分からハンマとタガネで掻き取ったほうが良品を得られる。
 同じ要領で、母岩付きも採集できます。

4.産出鉱物

(1)透輝石【Diopside:Ca(Mg,Fe)Si2O3】
    緑〜緑黒色で完全結晶として産出するが、劈開が激しく、母岩から”無傷”で取り
   出すのは難しい。

         
          単晶【研磨品】           母岩付き
                      透輝石

5. おわりに

 (1)「自然記念物」の指定区域外で、旧産地に劣らない透輝石の結晶が採集できることがわかり
    情報を教えていただいたTさんに感謝しています。

 (2)ここの透輝石は、エメラルドグリーンの美しい結晶なので、「宝飾の都・山梨県」として
    商品化の動きが過去にあったようですが、”劈開”が災いし、商業ベースにのるまでには
    至らなかった、と聞いています。

6. 参考文献

 1)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
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