岐阜県神岡町「鉱山資料館」の鉱物

岐阜県神岡町「鉱山資料館」の鉱物

1.初めに

 石友のNさん御夫妻と「自然砒」で有名な赤谷鉱山で”金米糖”や”サイ形”の
採集を楽しんだ後、現地でお別れした。
 私ども夫婦は、家に待つものの居ない気楽さで、赤谷鉱山から中竜鉱山そして
神岡鉱山と鉱山めぐりの梯子で、鉱物採集を堪能した。
 岐阜県神岡町は、昔から鉛・亜鉛では日本有数の神岡鉱山があるので有名でしたが
神岡鉱山が採掘を完全に止めた現在、2002年のノーベル賞・受賞対象となった
「ニュートリノ」の観測施設がある「スーパーカミオカンデとノーベル賞の町」として
新たに売り出し中です。
 神岡城の一角にある「鉱山資料館」に神岡鉱山の鉱物が展示されており
販売もしています。また、無料配布の鉱物を置いてあることもあります。
 ここでも、中竜鉱山に続いて、”現金採集”になってしまいました。
(2003年7月訪問)

2. 場所

 中竜鉱山のある和泉村から、東に走り、白鳥町を経て、荘川村を過ぎ、清見村から
「卯の花街道」(古川清見線?)に入り、古川町に至る。
 国道41号線を北上し、神岡町に入る。神岡町の市街を見下ろす高台に、神岡城と
これに隣接して、「鉱山資料館」があります。
 12月1日から3月31日まで、休館になっているようですので、注意が必要です。
  神岡鉱山資料館【神岡鉱山史から引用】

3. 神岡鉱山の地質・鉱床と歴史

 3.1 神岡鉱山の地質・鉱床
   昭和15年に発行された「日本鉱山總覧」によれば『岐阜県と富山県の境にあり
   地質は種々の片麻岩及び石灰岩、硅岩などからなり、鉱床はそれらを母岩とし
   その薄弱部に鉱質熱気叉は溶液が昇騰浸入し、母岩と相交代して生成する接触交代
   乃至熱水交代鉱床にて、鉱体と母岩との境界は往々明白ならず。
    主要鉱床は、栃洞・茂住・蛇腹・漆山・池ノ山などにして・・・・・・・・
   鉱物は、主として含銀方鉛鉱・閃亜鉛鉱にて、随伴鉱物には、黄銅鉱・黄鉄鉱
   硫砒鉄鉱などがあり、また脈石として石英、方解石を主とする部分(例えば漆山)と
   接触鉱物たる灰鉄輝石・石榴石・緑簾石を主とする部分(例えば栃洞)とがある。』

 3.2 神岡鉱山の歴史
   「神岡鉱山史」によれば、神岡鉱山の一部をなす、和佐保、茂住の銀山は
    養老年間(720年ころ)に発見されたとの伝説が明治以来流布している。
     『飛騨国中案内』の茂住銀山町の条に、山から崩れ落ちた銀石を銀吹人に吹かせた
    ところ、灰吹き銀80匁を得たのが、二百五十年前、15世紀末〜16世紀初めの
    明応・永正のころと伝えられている。
     天正14年(1586年)8月、金森長近が飛騨に移封され、神岡鉱山を領有することと
    なった。茂住宗貞は、越前の人で、はじめ糸屋宗貞と名乗り、長近に従い、天正の末
    (1590年ころ)金山奉行として、金・銀山の開発、とりわけ高原川筋の鉱山の開発
    増産に大きく貢献した。
     元禄5年(1692年)に飛騨は幕府の直轄領となり、鉱山は引続き稼行され
    明治20年ころ、三井組が借区の買収統合をなし、「三井組神岡鉱山詰所」として
    近代的な鉱山経営がスタートした。

 3.2 鉱山資料館
    昭和42年(1967年)に、奈良・正倉院の校倉造りをイメージして建設された資料館の
   中には、鉱山の貴重な資料が展示してあります。
    神岡鉱山初め全国の鉱山の鉱石や元禄時代、手掘りで金や銀を採掘していた頃の
   道具から現代にいたるまでの鉱山用具が展示してあります。
    また、鉱山の歴史や採鉱、選鉱・製錬・製品に至るまでの作業工程が模型とともに
   パネル展示してあります。
  展示資料の一部【パンフレットから引用】

   後列:坑内で使用された燈具
      江戸時代には、サザエの殻に種油を入れ、綿の灯芯で灯していたが
      明治32年(1899年)には、鉄のカンテラに、明治43年(1910年)には
      アセチレン灯になり、大正14年(1925年)には、現在の電灯照明となった。
   前列:左から神岡産魚眼石(2つ)    銀ばかり(計量器)

4. 採集鉱物

   採集したと言っても、”現金採集”です。売店では、神岡鉱山の鉱石を
  販売しています。
   鉱石の値段は、種類や大きさで違い、1,000〜10,000円くらいです。
   数種類の鉱物がセットになったものが、1,000円で売っていましたので、1つ記念に
  購入しました。
   また、ボール箱の中に雑多な鉱石のカケラが置いてあり、無料配布とのことでしたので
  一通り、いただいて来ましたが、10種類近くの鉱物があり、透明な灰鉄輝石や魚眼石もあり
  購入したものより、こちらのほうが気に入っています。
   神岡鉱山の代表的な鉱物を示します。
(1)方鉛鉱【Galena:PbS】
   鉛の主要な鉱石である。鉛灰色で、ズシリと重く、サイコロのようにきれいに四角に
   割れ(劈開す)るので、似たような鉱物の閃亜鉛鉱とは区別ができる。
  方鉛鉱
(2)方解石【Calcite:CaCO3】
   方解石の結晶形は、多種にわたり、代表的なものとして、”犬牙状”、”釘頭状”
   ”陣笠状”などがある。
   この標本は、釘頭状の代表的な標本である。
  方解石【釘頭状】
(3)閃亜鉛鉱【Sphalerite:(Zn,Fe)S】
   破断面が黒色〜飴色で金属〜ガラス光沢である。割れ口(劈開面)が葉片状になるので
   似たような鉱物の方鉛鉱とは区別ができる。
  閃亜鉛鉱
(4)魚眼石【Apophyllite:KCa4Si8O20(F,OH)・8H2O】
   マッチ箱がひしゃげたような方解石結晶の表面に、ザラメ砂糖をまぶしたような形で
   産出する。
   魚眼石も神岡鉱山を代表する鉱物の一つである。
  魚眼石
(5)灰鉄輝石【Hedenbergite:Ca(Mg,Fe)Si2O6】
   灰緑色で透明感のある四角柱状結晶で方解石に埋もれて産出する。
   灰鉄輝石も神岡鉱山を代表する鉱物の一つで、「日本の鉱物」にも記載されている。
  灰鉄輝石
(6)黄銅鉱【Chalcopyrite:CuFeS2】
   真鍮色の塊状で産する。
  黄銅鉱
(7)異極鉱【Hemimorphite:Zn4Si2O7(OH)2・H2O】
   閃亜鉛鉱床の酸化帯に普通に産出する鉱物で、硫化鉱物が変質してできた
   褐鉄鉱(茶色)の空隙に、白色の球状集合体をなして産出する。
   隣接して、金属光沢の閃亜鉛鉱が見える。
  異極鉱

5.おわりに 

(1)神岡鉱山は、ここに示した鉱物以外にも「緑鉛鉱」「クサビ石」などが知られており
   一度はズリで採集してみたいと考えています。

6.参考文献

1)三井金属鉱業(株)編:神岡鉱山史,同社,昭和45年
2)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3)澤田 久雄編:日本鉱山總覧,日本書房,昭和15年
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