2008年 採集初め K川の砂金

          2008年採集初め K川の砂金

1. 初めに

   2007年は、大勢の石友に案内していただいたり、逆に私が開拓(再発見)した産地を
  案内したりがきっかけで、今までになく 『 巨晶、美晶そして微晶 』 に恵まれた1年
  だった。
   これらのミネラル・ウオッチングの結果については、HPに掲載し、2007年度分が81件
  だった。つまり、平均4.5日に1件更新した勘定になる。
   これだけの産地に案内・同行していただいた大勢の石友に改めて御礼を申し上げる。

   さて、2008年の採集初めを、いつ、何処にしようかと迷っていると、横浜のK夫妻から
  メールをいただいた。「 K川で、5.5mmの砂金を採集したので、案内します 」、との
  ありがたいお誘いである。しかも、今まで訪れたことも聞いたことすらない産地なので、
  2つ返事で案内をお願いした。

    砂金【5.5mm Kさん採集】

   2008年が明けてまもなく、K夫妻と合流し、K川に沿った道を上流に向かい、マル秘
  ポイントに到着した。
   天気は良いのだが、日陰の沢は、パンニング皿の水が見る間に凍てつく寒さで、焚き
  火を起こして、暖をとりながらの採集となった。

    産地で記念写真

   早々とKさんの奥さんが砂金を採集したが、当方はフルってもフルっても、砂鉄や鉄砲
  玉(散弾銃弾)だけで、砂金は一向にでない。
   場所を転々と代え、とある場所でようやく小さな粒が採れた。そこを深く掘った土砂を
  フルってみると、時々パンニング皿に小さな砂金が残った。

   結局、この日採集できた砂金は全部で、11粒だったが、新しい産地を1つ知ったのは
  新しい年の初めに相応しい大きな収穫だった。
   マル秘ポイントに案内していただいき、HPへの掲載も了解していただいたKさん夫妻に
  厚く御礼を申し上げる。
    ( 2008年1月採集 )

2. 産地

   山梨県内とその周辺には武田信玄ゆかりの金山や温泉などが数多くある。「信玄坑」
  や「信玄橋」などの名前が残る津具金山などもその1つで、西は愛知県、静岡県そして
  長野県から東は神奈川、埼玉県、そして東京都まで、広い範囲に分布している。

   この産地の近くには、「武田信玄の隠し湯」と称される鄙びた温泉(鉱泉)などがあり、
  今でも伝説が息づいている場所でもある。

3. 産状と採集方法

   もともと砂金は、堆積岩に貫入した石英脈に伴う自然金が起源と考えられ、川岸の
  転石には花崗岩のものに混じって、母岩を思わせるものが見られる。

   「日本鉱産誌」によれば、この産地の近くにあった金山は、第3紀砂岩・頁岩・凝灰岩の
  凝灰岩中の鉱脈(石英脈)で、黄鉄鉱や黄銅鉱を伴い、鉱石1トン当たり、金(Au)50g、
  銀(Ag)30gと、品位が高かったようだ。ただ、1954年(昭和29年)時点で、某氏が探鉱中と
  あり、本格的に操業した記録は見当たらず、ほとんど知られていないようだ。

    母岩【白いのが石英脈】

   川の岸辺の転石の間に堆積した土砂の中に砂金が含まれている。転石をバールや
  つるはしを使って移動させ、その下の土砂をスコップで掘り、パンニング皿に入れ、川ま
  で運んでパンニングする。
   この産地には、砂鉄が多いので、パンニング作業の終盤に磁石を用いて取り除くと
  砂金を見つけやすい。Kさんは、磁鉄鉱などを含んだまま持ち帰り、自宅で「精密パンニ
  ング」で砂金をより分けている。このほうが”効率”は良さそうだ。
   ( ”見逃し” も少ない )

      
         土砂を掘る             パンニング
                   採集方法

4.採集鉱物

 (1) 砂金/自然金【Placer Gold/GOLD:Au】
     黄金色、粒状でパンニング皿の底に最後まで残る。この産地のものは、厚みが
    あるのが特徴で、肉眼サイズのものは見るからに ”砂金” だ。
     また、拡大してみると石英を噛んだものや、石英粒が抜けた跡が”抜け殻”になっ
    ているものも観察できる。
     肉眼で確認できたのは、写真の中の大きい3、4個だけで、それ以外は自宅で実体
    顕微鏡をのぞきながら、唾液で濡らした爪楊枝でピックアップしたものである。

        
         全体【最大 2mm】            拡大
                     砂金

 (2) パンニング皿の底には、砂鉄以外に、1mm弱の微細な重鉱物が残る。その主な
    ものは、「ジルコン」、「鉄礬ザクロ石」などで、花崗岩起源のものが多い。

5. おわりに

 (1) 砂金を採集していると、パンニング皿の底に鉱物以外のいろいろなものが残る。赤
    茶色に錆びた鉄釘、緑色の緑青を吹いた銅線、そして白い硫酸鉛鉱(?)に覆われ
    た鉛製品などが多い。
     Kさんはじめ、砂金採集に慣れた人によれば、これらの比重が大きな品が出てくる
    場所(層)は、砂金が出る可能性が高いらしい。
     この日は、真ん丸い鉄砲玉(散弾銃弾)が出た辺りから砂金が出た。そういえば
    パンニングしている間に、”バ〜ン”という銃声らしきを音を何回か聞いた。

       銃弾

 (2)氷と炎
    この日は快晴に恵まれたが日陰の産地は零下の気温で、パンニング皿を10分も
   放って置くと皿の水が氷になってしまう寒さだった。
    冬の採集での仕事は、先ず焚き火を起こすことで、流木を拾って燃やすと暖かく
   妻などは、パンニングしているより焚き火の番をしていた時間のほうが圧倒的に
   長かったようだ。

         
          パンニング皿の氷            焚き火
                      氷と炎

6. 参考文献

 1) 地質調査所編纂:日本鉱産誌 金・銀 その他,東京地学協会,昭和30年
 2) 松原 聰:日本の鉱物,株式会社 学習研究社,2003年
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