静岡県浄蓮鉱山の銀鉱物

1. 初めに

   例年、お正月は元旦、2日を過ぎると、帰省していた息子達夫婦も帰ってしまい
  お相手する人もなく、暇を持て余している。
   毎年のことなので、昨年の内から、東京の石友・Mさんと、今年初めの”運試し”
  として、1月3日に「浄蓮鉱山」を訪れる約束をしていた。

   早朝、甲府盆地を出て、御坂峠から日の出直前の富士山を眺め、富士山の裾野
  を回ると、今年は暖冬で、山中湖近くの路面には全く雪がなく、快適なドライブ
  となった。

    御坂峠からの河口湖と富士山

   御殿場に抜け、伊豆半島に入り、「浄蓮の滝」の駐車場には、9時前に到着した。

   浄蓮鉱山には、2、3度訪れているが、良い思い出が全くない。それでもここを選
  んだのは、以前数mm大の「ルビーシルバー」を採集した人がいるのと、2006年に
  われわれは、西澤金山、根羽沢鉱山を足繁く訪れ、腕を磨き(?)、”ルビー
  シルバーなら採れる”
 気になっていた。

   しかし、現実は甘くなく、それが錯覚だと思い知らされた。『銀黒』(?)は
  かなり出るのだが、「輝銀鉱」ましてや「ルビーシルバー」は全く姿を見せない。
   やがて、Mさんが「輝銀鉱」の美晶を採集したが、私の”運試し”は”凶”では
  ないが、”末吉”くらいで終わってしまった。
  ( 2007年1月採集 )

2. 産地

   伊豆の踊り子などで有名な「浄蓮の滝」の近くにある。ここは、過去に鉱物
  同志会の採集会が開かれるなど、有名な産地なので、詳細は省略する。

3. 産状と採集方法

   浄蓮鉱山は、伊豆半島に多い熱水型金銀鉱床にあった鉱山で、沢沿いには古い
  坑口が見られ、沢を渡った先が、広い平坦地で、選鉱場跡か何かのようで、その
  周辺にズリが2箇所に残されている。( 「上」「下」と呼ぶらしい )
   「ルビーシルバー」や「輝銀鉱」は硫化鉱物を伴う石英の晶洞部分にくるので
  ズリを掘ったり、表面採集で石英の見える石を探し、これを叩いて晶洞部分を
  ルーペで観察する。

       
          坑口                ズリ
                  浄蓮鉱山跡

4. 採集鉱物

 (1)輝銀鉱/針銀鉱【ACANTHITE:Ag2S】
     石英の中に、真っ黒、微細な粒状の針銀鉱が集合し、褶曲した筋状の
    「銀黒」として観察できる。

    「銀黒」

 (2)紫水晶/石英【amethyst/QUARTZ:SiO2
     母岩に入っている石英脈は、時として紫色に色づいていることがある。
    しかし、紫石英と呼ぶべきもので、柱面や水面が見える「紫水晶」は全く
    見当たらない。

    紫石英

 (3)方解石【CALCITE:CaCO3
     母岩の中には、方解石が脈状に入っている個所がある。それらの晶洞部
    分には、犬牙状の方解石結晶が見られる場合もある。

    犬牙状方解石【Mさんの恵与品】

    このほか、「方鉛鉱」などの硫化鉱物が採集できるが、取り立てて、紹介
   するほどのものはなかった。

5. おわりに

 (1) 浄蓮鉱山を訪れたのはこれで3回目だと思う。10年ほど前、鉱物同志会の
    某氏が、数ミリ大のルビーシルバーを採集した直後に採集会が開催された。
     30名以上の参加者があったが、ルビーシルバーを採集できた人は皆無だっ
    た、と記憶している。

     そのくらい 「浄蓮鉱山のルビーシルバー」は難関なのである。

 (2) この日は、静岡県の猟友会の人たちが鹿を駆除するため、大勢山に入り
    込んでいた。私たちが「下」のズリで石をハンマで叩く音で鹿は近寄らな
    いし、銃で撃たれると困るのでわれわれは「上」のズリに行きたくても行
    けず、お互いに迷惑な存在だった。
     そんな訳で、早々に引き揚げてしまった。

 (3) ここは、伊豆での採集の休憩ポイントになっており、また機会を見て訪れ
    捲土重来(リベンジ)を期している。

6. 参考文献

 1)加藤 昭ほか:鉱物採集の旅―東海地方をたずねて―,築地書館,1983年
 2)櫻井 欽一:軍需鉱物資源肉眼鑑定法,柁谷書院,昭和19年
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