福島県川俣町水晶山産新鉱物の岩代石

福島県川俣町水晶山産新鉱物の岩代石

1.初めに

 私は、鉱物関係のいくつかの団体に所属していますが、その1つに東京に
本拠を置く、「鉱物同志会」があります。
 この会は、毎年1月に新年会の企画として、鉱物のバザーとオークションが
行われ、稀産、絶産、遠方、外国産鉱物の1級品から駄物まで、幅広く出品
されるので、できるだけ出席しています。
 2004年は、1月17日に開催され、堀会長から、福島県川俣町で産出した新鉱物の紹介が
あり、鉱物名は旧國名・岩代國にちなんで岩代石(いわしろせき:Iwashiroite)
と聞いたが、公表しないで欲しいとのことでしたので、私のHPでは伏せてありました。
 昨日、福島県に住む石友・Sさんから、新鉱物発見のニュースを掲載した地元紙
「福島民報」の切抜きを送っていただいたので、これを元に、紹介したいと思います。

      「福島民報」切抜

 これらの情報で、水晶山が賑わう(=荒らされる)年になるのでしょうか?
(2004年2月情報)

2. 発見の経緯

  船引町(川俣・水晶山から約20km南)の船引高校・小林教諭が平成11年秋に
 水晶山で採集した。長さ約9cmの母岩の中に、2cmほどの”十字型をした黒っぽい結晶”が
 あるのを発見。水晶山で見かける結晶は通常1cm前後で長方形をしているケースが
 ほとんどであることから、小林教諭は珍しい鉱物であると思い、鉱物科学研究所に
 標本を送った。
  同所の分析で新鉱物の可能性があることが分かり、さらに国立科学博物館に調査を
 依頼し、世界で報告例のない鉱物であることが確認された。
  標本は現在、国立科学博物館に所蔵されている。

   岩代石【福島民報より】

3. 新鉱物の命名

  新鉱物の名前は化石などと違って、発見者の名前は付けられないそうです。
  そこで、一般的には、次のようにして決められるようです。

  (1)献名
     鉱物関係で偉大な足跡を残された人の名前を冠する。
     和田石、神保石、若林鉱など
  (2)産地名
     産鉱物を産出した鉱山、都道府県市町村字名、地質構造帯や有名な山などに因んだ名前。
     手稲石、河津鉱、滋賀石、蓮華石など
  (3)新鉱物の外観などの特長
     色、形などの特長から名付けられた。
     褐錫鉱、芋子石など
  (4)今まで知られていた鉱物と違う化学組成や結晶構造を強調。
     自然ルテニウム、苦土フォイト電気石、ソーダ魚眼石、単斜トベルモリ石など

4. 「岩代石」命名の経緯

   新鉱物名「岩代石(Iwashiroite)」は、鉱物科学研究所の堀代表らが命名したとあります。
   最初、発見された水晶山がある「川俣町」に因んで「川俣石」が候補として挙げられた
  そうですが、今流行の市町村合併で、「川俣町」の名前がなくなることが予想され
  見送られた。
   結局、明治元年に「出羽・陸奥」を7つの旧國に分けたとき、川俣町が属した「岩代國」から
  新鉱物名をとった。

   奥羽旧国名

 

5.おわりに 

(1)「岩代石」はフェルグソン石に近い構造をもち、フォーマン石に類似しているが
   Ta>Nbであるところから、新鉱物と認定された。
    現物は、国立科学博物館に1点あるのみなので、皆さんに探して欲しいとのこと。
(2)私のもう1つの趣味である「郵趣」のテーマである、鉱物・鉱山関係のマテリアルで
   「岩代・川俣局」の消印が、今から100年以上前の明治36年(1903年)に
    5銭菊切手の縦ペアに押されたものを入手できた。

  岩代・川俣局消印

6.参考文献 

1)松原 聰監修・宮島 宏著:日本の新鉱物,フォッサマグナミュージアム,2001年
2)福島民報:新鉱物発見,同社,2004年
3)久松潜一監修:新潮国語辞典,新潮社,昭和40年
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