糸魚川・青海地域の鉱物めぐり

糸魚川・青海地域の鉱物めぐり

1.初めに

 2002年5月のミネラル・フェアで、フォッサマグナミュージアムの宮島博士による
「ひすいその素敵な世界」の講演を聴き、ヒスイと新鉱物の虜になり、これらを求めて
1週間後に糸魚川・青海地域の鉱物めぐりとなった。
 青海川河口の海岸でヒスイらしき石を拾ったが、自信がなくフォッサマグナミュージアムの
宮島博士に鑑定していただいたところ、軟玉が1ケで、他はすべて「きつね石」とのこと。
 宮島博士にポイント(ヒスイの見分け方、採集確率の高い場所)を教えていただき、
ヒスイ海岸で再挑戦。見事、琅かん(ろうかん)と呼べるヒスイを採集できた。
 金山谷では、曹長石ペグマタイトから、新鉱物のジョアキン石を採集できた。
お忙しい中、アドバイスしていただいた宮島博士に感謝申し上げます。
(2002年5月採集)

2.鉱物産地と関連施設

 2.1 小滝ヒスイ峡
   148号線を小谷から糸魚川に向かって走ると、姫川を渡る手前に「↑小滝ヒスイ峡」の
  標識があり、これにしたがって進むにつれ、シンボルの明星山が迫り、右側は断崖絶壁に
  なってくる。
   ここは、国の天然記念物で採集禁止ですので、只、ただ大きなヒスイの塊を見るだけ。
  ヒスイを売るお土産屋があります。

       
       明星山         姫川ヒスイ峡【白いのがヒスイ】

 2.2 フォッサマグナパーク
    148号線を更に糸魚川に向かって走ると、道路の右側に、トイレなどを備えたフォッサ

   マグナパークがある。
    ここでは、1875年(明治8年)にナウマン博士が発見したしたフォッサマグナ

   (大地溝帯)の糸魚川-静岡構造線を直接観察できます。

   フォッサマグナパーク

 2.3 フォッサマグナミュージアム
   148号線から大糸線の踏切を渡り、糸魚川市の高台「美山公園」の一角に、地元のヒスイを
  中心に鉱物・化石・地質を展示する博物館「フォッサマグナミュージアム」がある。
   土曜日ということもあり、観光バスが何台も来ており、博物館の中は、元気な高齢者で
  騒がしいほどでした。

   フォッサマグナミュージアム
  (1)主な展示内容
    @第1展示室(地球誕生)・・・・・・隕石、大気・海・陸・生命の誕生
    A第2展示室(魅惑の石たち)・・・・化石、鉱物、ひすい・ヒスイに似た鉱物
    B第3展示室(大地のロマン)・・・・糸魚川と世界のヒスイ、日本列島の誕生
                      ナウマン博士
    C第4展示室(人間と石)・・・・・・石器、勾玉・玉、金属時代から新時代へ

   巨大な糸魚川産ヒスイ
  (2)各種サービス
     ここで受けられる各種のサービスには次の様なものがあります。
    @無料・・・・・・・鉱物・岩石・化石の鑑定、展示解説、観光案内など
    A有料・・・・・・・鉱物の分析(EPMA,XRF)、岩石の切断・研磨など

    宮島博士がいらっしゃるとの事なので、早速、青海川河口で拾ったヒスイらしき石を
   鑑定していただいたところ、軟玉が1ケで、他はすべて「きつね石」とのこと。

   きつね石

    私たちのような相談者が多いせいか、博士は対応が手馴れた感じで、「ヒスイと
   間違い易い石」のコーナや「きつね石」の切断標本などを使って説明していただいた。

  (3)ヒスイと出会うコツ
      宮島博士に教えていただいたひすい探しのポイントは次の通りです。
    @今までヒスイが発見されている河川、海岸
      当たり前ですが、昨夜の大雨でできた水溜りには魚はいませんので、今までヒスイが
     発見されている河川(姫川、小滝川、青海川)や海岸(糸魚川市押上〜青海川河口
     〜親不知〜富山県朝日町宮崎(通称ヒスイ海岸))。特に、海岸で発見の確率が高く、
     XXXXXXの前が良いようです。
     季節的には、「海が荒れる冬が良い」とはレストラン「勝山」の奥さんの弁。

   ヒスイ探しマップ
    A白っぽい石
      ヒスイは緑色と考え勝ちだが、全体が緑色のヒスイはめったになく、白色で
     部分的に色がついているのがほとんど。
    B重たい石
      ヒスイを地元の方は漬物の重しにしていたと言う話があるように、ひすい輝石の
     比重は3.2で白い石の代表の石英の比重2.6前後に比べると同じ大きさでも
     重たいのが特徴です。
      宮島博士に、握りこぶし大のヒスイを持たせていただき、ズシリとした手応えが
     ありました。
    C角張った石
      ヒスイは強靭で磨耗しにくいため、他の転石は丸みを帯びるのに、ヒスイだけは
     角張っている。
    Dキラキラ輝いている石
      ヒスイ輝石は、0.1〜5mm程度の繊維状の結晶をしており、これが太陽光線などで
     キラキラ輝く。したがって、探し方として、太陽を背にして探すのが良いようです。

  (4)博物館売店
      博物館の展示の終わりのところに、鉱物、(半)貴石アクセサリ、書籍などを売る
     ミュージアムショップがあります。ここならではの私のお奨めは、
    @鉱物関係書籍・・・・・「日本の新鉱物」、「展示解説」、「とっておきのヒスイの話」など
    A糸魚川産ヒスイ・・・・3ケ袋入りで700円

 2.4 長者ケ原遺跡・長者ケ原考古館
    フォッサマグナミュージアムの道路を挟んだ反対側が国の史跡の長者ケ原遺跡で
   その入口に長者ケ原考古館があります。
    ここは、今から4500〜3500年前の縄文中期に玉や斧の生産、交易で栄えた
   集落跡と考えられています。
    何年か前に、青森県三内丸山遺跡で見たヒスイの大珠は、糸魚川の長者ケ原で
   作られたものだったかも知れません。
    遺跡には、竪穴式住居が何棟か復元してあるが、ここは湧水も近く、眼下に日本海を望める
   今でも一等地に暮らしていたことが分かります。

   長者ケ原復元住居【日本海を望める】

    館内には、ここで出土したヒスイの玉や蛇紋岩の斧などの完成品と製作途中のものなども
   展示してあります。
    ここで出土した水晶の群晶が展示してあります。解説には、ヒスイより硬い水晶を
   使って玉の研磨や穴あけをしたのではないか、とあります。

   長者ケ原出土水晶の群晶

 2.5 ヒスイ探し
    早朝から、昼過ぎまで、何箇所かでヒスイ探しにトライしました。
  (1)青海川河口
      ここには、今まで何回か訪れたがいつも空振りに終わっています。何年か前に、
     テトラポットが置かれ、潮の流れが変わったため、めっきりヒスイが採れなくなったと
     地元の方がボヤいていました。

   青海川河口でのヒスイ探し
  (2)レストラン「勝山」
      ここは、10年ほど前に某雑誌にヒスイが採集できる場所として紹介されましたが、
     ここも何回か訪れたがいつも空振りです。
      レストランのガラスケースの中にあるご主人が採集したヒスイは一見の価値があります。
  (3)宮崎海岸(通称ヒスイ海岸)
      北陸本線の市振(いちぶり)駅から越中宮崎駅の間にヒスイ海岸があり、現在

     ヒスイが採集できる可能性がもっとも高い場所のようです。
      この日、地元の方のほかに、ヒスイ探しをしているご夫婦や家族連れなどにお会いし
     ヒスイ人気の高さをうかがわせます。

   ヒスイ探しの家族連れ
      ここで、海岸の波打ち際を約500m往復していると、緑色の石が眼に飛び込んできた。
     思わず「ヤッター」と叫んでしまいました。

       
     宮崎海岸でのヒスイ探し        宮崎海岸のヒスイ

 2.6 金山谷の新鉱物
    青海川支流の金山谷では、「ストロンチオ斜方ジョアキン石(奴奈川石)」を初め
   各種の新鉱物が発見されており、産地を訪れた。

  (1)産地
      デンカの発電所がある金山谷の入口に車を停め、発電所に向かうと警告の案内板の

     右に山道がある。
      ここを登りきると、金山谷に沿った平坦な山道になる。
      ただし、谷側は断崖絶壁になっている場所もあり、安全には最大の配慮が必要。
      道は、段々と谷の河原と同じレベルに近づき、最後は河原を歩くと、川の真ん中に
     曹長石ペグマタイトの巨岩が見える。

   曹長石ペグマタイト

  (2)産状と採集方法
      ストロンチオ斜方ジョアキン石を初めとする新鉱物は、曹長石ペグマタイトに含まれて

     いる。
      目的とする新鉱物を、曹長石ペグマタイトの転石から掻き採ります。母岩は堅いので
     大き目のハンマとガッチリしたタガネが必要です。
      (転石には、タガネの先端を食い込んだままの、残骸を何箇所でも見ました。)

  (3)採集鉱物
    @ストロンチオ斜方ジョアキン石
     【Strontio-orthojoaquinite:Na2+xBa4Fe1.5(Sr,Ba,REE,Nb)4-xTi4(O,OH)4(Si4O12)4・2H2O】
      曹長石ペグマタイトの中に、黄色、ガラス光沢で産出する。ストロンチウムを
     含む複雑な組成の鉱物で、他に産地がない、金山谷のみで産出する珍しいものです。
     奴奈川石と呼ぶことはできるが、正式な学名ではないとの事。

   ストロンチオ斜方ジョアキン石【黄色い部分】
     今回採集できた標本は、両端の錐面が残り、C軸に直角に条線も見え、身近な結晶と
    しては同じチタンを含んだ「鋭錐石」を思わせます。

 2.7 橋立ヒスイ峡
    金山谷の手前に、「橋立ヒスイ峡」の案内標識があります。産地保護のため、車は
   途中までしか入れません。約10分歩くと、ヒスイが見られるヒスイ峡です。
    10年ほど前は、今のように整備されておらず、ヒスイの巨岩に触れてみることが
   できたのですが、盗掘を恐れて、移動してしまったと聞いています。

   橋立ヒスイ峡

3. おわりに

  (1)約8年ぶりに、糸魚川・青海地域を巡ってみました。まず、道路が整備され私の住む
     甲府からでも日本海がずっと身近になったことを感じました。
  (2)ヒスイの人気は高く、あちこちでヒスイ探しの人達に会いました。金山谷の奥まで
     ヒスイ探しに行く人に会ったのは驚きです。
  (3)長者ケ原遺跡は、訪れる人も少なく、フォッサマグナミュージアムの賑わいと
     対照的です。
     遺跡の周辺には、野いちごが真っ赤な実を付け、食料となるユリの花も咲き
     ここは、4,000年前も住みやすい場所だったのだろうと思いました。

   長者ケ原遺跡のユリ【ササユリ?】
  (4)青海の橋立には、昔「橋立金坑」があったと、ものの本で読んだことがあります。
     いつか、訪れて見たいと考えています。

   橋立金坑跡
  (5)最後になりましたが、お忙しいところ、親切に対応していただいたフォッサマグナ
     ミュージアムの宮島博士に感謝申し上げます。

4. 参考文献

1)宮島 宏著:日本の新鉱物,フォッサマグナミュージアム,2001
2)宮島 宏著:とっておきのヒスイの話,フォッサマグナミュージアム,2000
3)東京国際ミネラル協会:東京国際ミネラルフェア2002公式ガイドブック,2002
4)糸魚川市長者ケ原考古館:埋もれる大集落  長者ケ原 〜ヒスイのふるさと〜 ,2002
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