栃木県板荷鉱山の鉱物

栃木県板荷鉱山の鉱物

1.初めに

栃木県鹿沼市の唐沢鉱山の川を挟んだ南側に板荷鉱山があり、加藤、松原
両先生の「鉱物採集の旅-東京周辺をたずねて-」に詳しく、記述してあります。
1年半前に、板荷鉱山の途中まで行ったのですが、豪雨で引き返してしまい、
そのままになっていました。
2002年の採集初めに、Mさんに、唐沢鉱山を案内してもらった帰りに、
おおよその場所を教えてもらいましたので、今回訪れてみました。
目玉のコランダムはダメでしたが、紅柱石、輝水鉛鉱など、この産地の代表的な
鉱物を採集できましたので報告します。
(2002年2月採集)

2.産地

東北道鹿沼ICでおり、小来川に向かって走ると有名な板荷の集落の次に
木戸ケ沢の集落がある。バス停「唐沢」の約100m先を左に曲がり、「堂坂橋」を
渡り、右に曲がり、約450mで「林道狢穴・梅の木沢線」に入る。
神社の後ろを通り、沢を渡り、林道の入口から約1.3kmで橋の手前に駐車
スペースがある。ここから、やや急な道(途中まで舗装してある)を約200m行くと、
道の路面が大雨でえぐれた状態になっている。
この付近の転石(一部ズリ石)を良く見ると、黄銅鉱や紅柱石などが含まれている。
この、左上の山の斜面にズリが広がっており、露頭もある。

左:板荷鉱山ズリ      右:板荷鉱山露頭

3.産状と採集方法

板荷鉱山は唐沢鉱山同様に、花崗岩の貫入に伴った、典型的な気成鉱床といわれ、
唐沢鉱山が花崗岩中に鉱脈が発達しているのに対して、板荷鉱山は、粘板岩と花崗岩の
接触部に鉱物が濃集しています。また、唐沢鉱山が蒼鉛(ビスマス)、モリブデン、
タングステンなどの重元素を含む鉱物が採集できるのに対して、板荷鉱山は、アルミ
ニューム、硼素、フッ素など軽元素を含む紅柱石、トパーズ、蛍石などが見られるのも、
不思議というか、自然の妙味です。
露頭にはめぼしい鉱脈が見当たらず、ズリの表面やズリを掘り返して、白雲母を挟んだ
粘板岩や石英塊を探し、叩き割って、目的の鉱物を探す。

4.産出鉱物

(1)紅柱石【Andalsite:Al2SiO5】
グライゼン化した花崗岩の中に、細かい粒状で母岩を紅色に染めて産出します。
一方、真っ白い石英塊の中に文字通り薄紅色の柱状結晶でで産出します。
板荷鉱山産紅柱石
(2)輝水鉛鉱【Molybdenite:MoS2】
花崗岩の晶洞部分や花崗岩の中に銀灰色鱗片状で産出します。
板荷鉱山産輝水鉛鉱(A)
(3)黄銅鉱【Chalcopyrite;CuFeS2】
石英の晶洞部分に、黄銅鉱の結晶が晶出した標本を採集した。
黄銅鉱
(4)その他の鉱物
ここでは、鉄マンガン重石が主要鉱石だったとありますが、カケラも見かけません
でした。この他、トパーズや蛍石も産出するとありますが、探せませんでした。
(気づかなかった?)
しかし、白雲母などは、比較的楽に採集できますので、”コランダム”も期待できます。

5.おわりに

(1)板荷鉱山も唐沢鉱山同様、古典的な産地で、各種の採集
記事を読むと、何も採集できないとされています。
しかし、「古泉に水枯【涸】れず」で、今でも、各種の鉱物が採集できることが分かりました。
ズリは豊富で、掘り返された様子もありません。
次回は、鋼玉(コランダム)、トパーズと蛍石に挑戦したいと考えています。
(2)ズリの位置がわからず、約1kmほど先の尾根近くまで登って
しまった。ここは、北斜面なので、数日前に降った雪が所々に残り、清冽な雰囲気の
中での久しぶりの鉱物採集で、予算や監査で多忙をきわめた生活をリフレッシュ
できました。
産地を教えていただいた、Mさんに感謝しています。
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