愛媛県土居町・五良津の鉄礬ザクロ石

愛媛県土居町・五良津の鉄礬ザクロ石

1.初めに

 我々夫婦の結婚30周年・「真珠婚」を記念する鉱物採集兼観光旅行として
兵庫県の石友・Nさんご夫妻に四国・中国の産地を案内していただいた。
 徳島県の高越(こうつ)でルチルを採集し、幸先の良いスタートを切った。
翌日、五良津の産地を案内していただき、「菫泥石」「チタン鉄鉱」そして
「ルチル(金紅石)」など、「日本の鉱物」に掲載してある鉱物を一通り
採集することができた。
 既報の通り、妻が林道の車を止めた周辺で、「鉄礬ザクロ石」の良品を発見し
その近くの母岩をいくつか車に積み込んで持ち帰った。
 昨年暮れは、公私共に忙しく、バタバタし、標本整理ができていなかったが
 1月に入り、標本の整理に着手し、整理が終わった産地から、HPへ掲載し始めた。
 1月17日に、東京で開催された鉱物同志会の新年会バザーに五良津の「鉄礬ザクロ石」
をはじめ、四国、中国の産地標本を寄贈した。同志会員のNさんが、私の出品した
鉄礬ザクロ石に興味を持たれ、「母岩を割ると、大きい結晶が出ますか?」と話し
掛けてこられたが、「サア」と曖昧な返事をしてしまった。
 2月に入り、この経緯を思い出し、残っていた「鉄礬ザクロ石」の母岩を割って
見ることにした。ハンマの一撃で、”コロン”と長径20mmの完全12面体の結晶が
飛びだし、母岩側にもほぼ同じ大きさの結晶がついていた。
 これを眺めていると、楽しかった鉱物採集兼観光旅行が思い出され、案内して
いただいたNさんご夫妻に、改めて厚く御礼申し上げます。
(2003年11月採集・2004年2月発見)

2. 産地

 東明石山(1,706m)を初めとする連山を源とする関川(上流は大川)の河原や
谷筋が産地で、「鉱物採集の旅-四国・瀬戸内編-」に詳しく掲載されています。

   五良津【鉱物採集の旅より引用】

 悪路を、車の底を擦らない様、注意深く走り、入口の国道から河又(こうまた)まで
約15分で産地に到着します。

3. 産状と採集方法

 ここは、四国の三波川変成帯のなかでも、最も変成度が高い1700m級の
東明石の連山から、ほぼ海岸に近い麓まで、急傾斜で関川(せきがわ)が流れており
河原には、おびただしい量の礫があり、しかも種類が多い。
 河原や沢の転石から、目的の鉱物を探し出します。

   関川河原で採集するNさんご夫妻

 この産地を何回も訪れて、眼が慣れているNさんの奥さんは、いとも簡単に
 「金紅石(ルチル)」「透緑閃石」の良品を次々と発見する。
  こちらは、母岩がどのようなものか分からず苦戦。それでも、「ルチル」「菫泥石」
 「透緑閃石」「チタン鉄鉱」など、代表的な標本は一通り採集できた。
  車に戻ると、妻が「こんなのが、あった。」と差し出したのは、立派な母岩付きの
 「鉄礬ザクロ石」であった。道路の脇で、ダンプに踏み割られて、結晶面が無傷で
 出たものらしい。

4. 採集鉱物

  「鉱物採集の旅」には、ここで採集できる67種の鉱物が紹介されています。
  今回、発見したのは、鉄礬ザクロ石だけです。
(1)鉄礬ザクロ石【Almandine:Fe3Al2(SiO4)3】
   赤褐色の12面体結晶が片岩の中に点在しています。結晶の大きなものは
  5cmちかいものもあるが、変成岩の中のザクロ石の宿命で、角が丸まって
  ひび割れも多く、美しいとは言い難い。
   むしろ、1cm以下の小さなものに、美しいものがあります。
   今回発見した分離単晶と母岩付きは、大きいのにもかかわらず、結晶も
  割れ・欠けがなくシッカリし、表面の光沢もマズマズで、気に入っています。

       
       分離単晶【20mm】           母岩付き
                  鉄礬ザクロ石

5.おわりに

(1)私の趣味である鉱物・鉱山関連のマテリアルを探していたところ、五良津産地が
   ある、愛媛県土居郵便局の消印が大正末期に押された、5銭田沢切手を入手できた。
    これも、何かの縁と感じている。
   (今流行の市町村合併で、土居町の名前がなくなるって、本当でしょうか?)

    愛媛・土居局の消印

(2)2003年に採集した鉱物標本は、全て洗浄・トリミング・同定・ラベル付けという
   一連の作業が完了した。
   ”マル秘”以外の産地は、全てHPへのアップロードも完了した。
(3)自宅近くの湯村温泉にある塩沢寺(えんたくじ)は、”願い事を何でも聞いてくれる
   厄除け地蔵”で有名で2月13日から14日にかけて、夜通し大祭が行われる。13日には
   10万人を超える参拝客が集まると言われています。
    この地域では、”厄地蔵が終わると、寒が明ける”との言い伝えがあり、
   ハンマーを持ってフィールドに出られる日も間近です。

6.参考文献

1)宮久 三千年・皆川 鉄雄:鉱物採集の旅 四国・瀬戸内編,築地書館,1975年
2)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3)松原 聰:日本の鉱物,学研,2003年
4)木股 三善、宮野 敬:原色新鉱物岩石検索図鑑,北隆館,2003年
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