愛媛県土居町・五良津の鉱物

愛媛県土居町・五良津の鉱物

1.初めに

 我々夫婦の結婚30周年・「真珠婚」を記念する鉱物採集兼観光旅行として
兵庫県の石友・Nさんご夫妻に四国・中国の産地を案内していただいた。
 徳島県の高越(こうつ)でルチルを採集し、幸先の良いスタートを切った。
翌日、五良津の産地を案内していただき、「菫泥石」「チタン鉄鉱」そして
「ルチル(金紅石)」など、「日本の鉱物」に掲載してある鉱物を一通り
採集することができた。
 案内いただいたNさんご夫妻のお陰と、厚く御礼申し上げます。
(2003年11月採集)

2. 産地

 東明石山(1,706m)を初めとする連山を源とする関川(上流は大川)の河原や
谷筋が産地で、「鉱物採集の旅-四国・瀬戸内編-」に詳しく掲載されています。

   五良津【鉱物採集の旅より引用】

 悪路を、車の底を擦らない様、注意深く走り、入口の国道から河又(こうまた)まで
約15分で産地に到着します。

3. 産状と採集方法

 ここは、四国の三波川変成帯のなかでも、最も変成度が高い1700m級の
東明石の連山から、ほぼ海岸に近い麓まで、急傾斜で関川(せきがわ)が流れており
河原には、おびただしい量の礫があり、しかも種類が多い。
 河原や沢の転石から、目的の鉱物を探し出します。

   関川河原で採集するNさんご夫妻

 この産地を何回も訪れて、眼が慣れているNさんの奥さんは、いとも簡単に
 「金紅石(ルチル)」「透緑閃石」の良品を次々と発見する。
  こちらは、母岩がどのようなものか分からず苦戦。それでも、「ルチル」「菫泥石」
 「透緑閃石」「チタン鉄鉱」など、代表的な標本は一通り採集できた。
  車に戻ると、妻が「こんなのが、あった。」と差し出したのは、立派な母岩付きの
 「鉄礬ザクロ石」であった。道路の脇で、ダンプに踏み割られて、結晶面が無傷で
 出たものらしい。

4. 採集鉱物

  「鉱物採集の旅」には、ここで採集できる67種の鉱物が紹介されています。
  今回、次のような鉱物が採集できた。
(1)透緑閃石【Actinolite:Ca2(Fe,Mg)5Si8O22(OH)2】
   日本の透緑閃石といえば、五良津産と相場が決まっています。六角柱状と言われるが
  結晶の集合体は丸みを帯びた楕円柱状で、変成を受けた結果、C軸方向にゆるやかに屈曲し
  滑石や結晶片岩に埋もれて産する。
   ガラス質、透明〜半透明の美しい緑色です。

   透緑閃石

(2)緑閃石【Actinolite:Ca2(Fe,Mg)5Si8O22(OH)2】
   角閃石の一種で、灰緑色・針状結晶の集合体で産する。放射状になることがあるので
  光線石とも呼ばれることがある。
   変成の最後に、輝石から変化するといわれている。

   緑閃石

(3)ルチル(金紅石)【Rutile:TiO2)】
   角閃岩を切る石英脈の中に””赤褐色、半透明、四角柱状結晶”で産する。
   永い間に、表面が錆びて、鉄錆色を呈しており、短柱状結晶の場合、”武石”と
  間違い易い。金紅石は、鋭錐石、板チタン石と同じ化学成分をもつ同質異像の
  関係にあり、ここでは、ルチルだけが採集できる。
   Nさんの奥さんが採集した良品を恵与いただいた。

   ルチル【Nさんの奥さん採集】

   (4)チタン鉄鉱【Ilmenite:FeTiO3】
   白銀色の箔状〜葉片状で産出する。外観は、赤鉄鉱(鏡鉄鉱)と似ているが
  チタン鉄鉱の小片は、強い磁石に吸引するので、赤鉄鉱と区別できる。
   チタン鉄鉱の回りには、ルチルがくる可能性が高いので注意が必要です。

   チタン鉄鉱

  (5)鉄礬ザクロ石【Almandine:Fe3Al2(SiO4)3】
   赤褐色の12面体結晶が片岩の中に点在しています。結晶の大きなものは
  5cmちかいものもあるが、変成岩の中のザクロ石の宿命で、角が丸まって
  ひび割れも多く、美しいとは言い難い。
   むしろ、1cm以下の小さなものに、美しいものがあります。

   ザクロ石

  (6)菫泥石【Kaemmererite:クロムを含む緑泥石】
   菫泥石はクロムを含む緑泥石の一種で、チタン鉄鉱に伴い、紫(菫)色の
  雲母に似た外観で産出する。
   菫泥石の塊状のものは、鮮やかな菫色で、”菫泥石”と名付けられた理由が
  納得できます。

   菫泥石

  (7)クロム雲母【Fuchsite:K(Al,Fe、Cr)2(SiAl)O10(OH)2】
   クロムを含む雲母で、クロム鉄鉱に伴い、鮮緑色の薄片状外観で産出する。

   クロム雲母

 

5.おわりに

(1)”変成鉱物のメッカ”とも呼ばれる五良津をNさんご夫妻の案内で初めて訪れ
   代表的な鉱物を網羅して採集できた。
    案内していただいたNさんご夫妻に改めて感謝申し上げます。
(2)この近くには、明石鉱山や透緑閃石を産した滑石坑などがあるとのことですので
   いつか、訪れるのを楽しみにしています。

 

6.参考文献

1)宮久 三千年・皆川 鉄雄:鉱物採集の旅 四国・瀬戸内編,築地書館,1975年
2)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3)松原 聰:日本の鉱物,学研,2003年
4)木股 三善、宮野 敬:原色新鉱物岩石検索図鑑,北隆館,2003年
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