茨城県笠間市稲田石資料館

茨城県笠間市稲田石資料館

1.初めに

茨城県笠間市の国道50号線を走っていると「石の100年館」の標識が
目に入ったので立ち寄ってみた。ここは、地元石材会社(株)タカタの付属施設
である。
この地域の通称「石切山脈」と呼ばれる広大な地域に眠っている白い花崗岩、
登録商標「稲田石」「稲田みかげ石」を本格的に採掘、加工を始めた明治22年
(1889年)頃から現在まで100年以上も採掘・加工が続いている。
一世紀を越える歴史を記念するため、歴史資料や採石・加工道具そして花崗岩の
マグマに伴ってもたらされた各種の岩石・鉱物を展示してある。
採石場での採集は許可していただけませんでしたが、稲田をはじめ茨城県で産出
した鉱物の販売もしており、一度は訪れる価値があります。
(2001年10月訪問)

2.場所

東京方面からだと常磐道水戸ICでおり、国道50号線を笠間方面に向かって
走ると、JR水戸線稲田駅入口手前右側に、「石切山脈」の大きな石作りの標識が
あるので右折する。約500m行くと「石の100年館→」の看板が見える。
資料館は、稲田石を外壁全面に使い、杉綾模様に石を配列した壁面は、
デザイン的にも素敵な建物です。
稲田石資料館

3.資料館の展示内容

資料館の内部は、次のようなコーナがあり、稲田石についての知識を系統的に
理解できるようになっています。
また、屋外には、稲田石の搬出用のトロッコやそり(確か、「修羅」と呼ぶもの)
などの大型道具が展示してあります。
順路に従って、次のようなコーナがあります。
(1)資料コーナ
   明治20年代の採掘や売買に関する書類や写真が展示してある。
   15分ほどのビデオで、最新の採掘、加工の模様と稲田石を使った全国各地の
   建物やモニュメントを見ることができる。
資料コーナ
(2)採掘・加工具展示室
   100年を越える採掘・加工の歴史の中で使われた各種の道具が実物展示・解説
   してある。
   また、壁には、世界30ケ以上の国で産出する石材のサンプルが展示してある。
世界の石材と採掘・加工具
(3)岩石・鉱物展示室
   鉱物愛好家にとって最も魅力的なコーナで、この地域の地質や花崗岩に捕獲
   された各種の岩石とこの地域と茨城県近県で採集された鉱物標本が展示してある。
(4)調査・研究コーナ
   稲田石や各種石材、鉱物に関する書籍が自由に閲覧できます。また、ここの館員
   の方が採集した稲田をはじめ茨城県や世界の鉱物を販売している。

4.岩石・鉱物展示室

岩石展示室には、稲田地域の地質図や稲田石が生まれた6000万年前の地下の様子を
パネルで展示している。

左:稲田周辺地質図     右:6000万年前の地下の様子
これによると、八溝層群とよばれる古生代〜中生代の堆積岩に花崗岩マグマが入り込んで
500万年かけて冷え固まり隆起して、上の堆積岩は侵食され、花崗岩が地表に現れ、それを
採掘している。
花崗岩ペグマタイトや捕獲岩は花崗岩マグマの上部にみられ、石灰山に代表される
ドロマイト接触交代鉱物などはマグマとの境目に見られる。
透輝石を含む捕獲岩
堆積岩の一部には、石灰岩もあり、それらと花崗岩マグマが接触した部分では、
加賀田鉱山に代表されるスカルン鉱物も見られるなど、バラエティに富んだ産地です。
鉱物展示室には、稲田周辺の採石場で産出した鉱物や錫高野、山の尾など茨城県産の鉱物を
はじめ、日本各地や外国の鉱物も展示してある。
ここで、興味を引かれたのは、稲田岩倉産の魚眼石と山の尾伝正寺産の蛍石です。
稲田岩倉産の魚眼石

5.調査・研究コーナ 

 稲田石や各種石材、鉱物に関する書籍が自由に閲覧できます。以前、古書店で
購入した「稲田石材百年史」なども置いてあります。
ここの館員の方が採集した稲田をはじめ茨城県の鉱物や外国産の鉱物を販売している。
この近くのものでは、大正鉱山の錫石、錫高野のトパーズ、鉄マン、山の尾の柘榴石、
福島県矢塚の斜灰簾石(緑簾石?)などがあります。
ここで、笠間市石寺産の硫砒鉄鉱(100円)と山の尾産頭付き小さなコルンブ石
(200円)を購入した。

6.おわりに 

民間の会社がこれだけ立派な施設を作り、参観料(300円)と参観者の数から見て
決して儲かってはいないだろう(失礼!)と思われるのに、維持されている努力には
敬意を表します。
これからますます内容が充実し、訪れる人々が増えることを願っています。

7.参考文献 

1)稲田石材組合編:稲田石材百年史
2)(株)タカタ;稲田石
3)(株)タカタ;稲田石資料館「石の百年館」パンフレット
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