雨合羽に身を包み、ダムサイトから、道なき道を藪こぎしなら進むと、体中汗まみれになる
のに、吹き溜まりには厚さ1m以上の残雪があったり、可憐なササユリが花を咲かせていた
りと、春〜夏が一緒くたになっている。
多少の事に驚かない私が、「ここを登るの!」、というような急な崖を直登することになる。
その先のルートは筆舌に尽くしがたいが、何とかYさんが見覚えのある場所に到着した。そ
こから探しだした坑口からは、肌を刺すような冷気が噴き出していて、眼鏡があっと言う間に
曇ってしまうし、カメラも汗をかき、ひどい写り方だ。
坑道は迷路のように前後左右斜め、そして縦に走っていて、限られたポイントでのみ「黄
鉄鉱」や「ドロマイト(苦灰石)」が採集できるらしい。
ライトに照らされて”キラキラ”と輝く「黄鉄鉱」には、私だけでなく皆さんから感嘆の声が上
がり、「ドロマイト」の大きな塊には、どれを持ち帰るか、悩んでいた人もいた。
登りと違ったルートで急な崖を下り、何とかダムサイトに到着した時は、毎日5km歩いてい
る私ですら”バテバテ”気味だった。
素晴らしい標本が採れる産地を案内していただいたYさんと、同行いただいた皆さんに
厚く御礼申し上げる。
( 2010年6月採集 )
「黄鉄鉱 巨晶」の良品は、壁面から天井にかけて走る粘土脈の中に埋もれていて、脈の
中から直接取り出すこともできるが、床面に堆積している青粘土の中から掘りだすのが楽
だ。今回、フルイを持参し、水たまりでフルイ掛けした人は、1回に10個は採れたようだ。
「ドロマイト(苦灰石)」は、鉱山が稼働中に崩した壁面の脇に山のようになっている中から
好みのものを選んで、必要ならハンマーで”トリミング(整形)”するだけだ。
この産地の入り口には、赤谷鉱山があり、隣接する小岐鉱山で産出し「日本の鉱物」,
に掲載されている「一見菱面体風」の黄鉄鉱のような面白い結晶形は見られず、ほとん
どが単純な「六面体」だ。
(2) 苦灰石【DOLOMITE:CaMg(CO3)2】
ガラス光沢、白色、半透明の菱面体結晶の集合として観察できる。方解石(石灰岩)
【CALCITE:CaCO3】と菱苦土石【MAGNESITE:MgCO3】が合わさった鉱物と見ることも
できる。
採集ポイントの壁面全体が苦灰石で、晶洞部分に立派な自形結晶が観察できる。
飯豊(いいで)と聞くと、日本100名山の1つ『飯豊山』がある山形県飯豊町を連想する
単身赴任先にいるので飯豊鉱山の歴史、地質などについての学術的な資料を調べら
「日本の鉱物」に掲載されている「ブルーあられ石」が産出した「赤谷(あかたに)鉱山」
今回、一度訪れたことがあるYさんの案内で、産地を訪れることができ、産状を観察し、
(2) 「ブルー霰石」の赤谷鉱山
( New Year Meeting of Friend of Mineral in 2004 , Tokyo )
人がほとんどだろう。私も、標本ラベルを見て、新潟県にあった、と初めて知ったくらいだ
った。
れないが、インターネットによれば、昭和初期(1930年代)には、豪雪地帯ゆえ雪崩で鉱
山で働く人々が多数犠牲になった悲しい出来事も繰り返されたようだ。
( 6月も末近いのに、1m以上も雪が残っている !! )
が近くにある。赤谷鉱山は、2005年10月に訪れているのだが、その奥の飯豊鉱山は、
”ルートが判りにくく、険しい”、”坑内が複雑で迷路のよう”、などと聞くだけで、尻込みし
ていた。
目的とした「黄鉄鉱巨晶」と「苦灰石」を採集でき、Yさんと同行いただいた石友に厚く御
礼申し上げる。
福島県立博物館主催の地学巡検の予定に、「赤谷鉱山」が入っているようだ。現在でも
採れるとは思えないが、「ブルー霰石」を求めて、参加する積りでいる。
6. 参考文献
1) 柴田 秀賢、須藤 俊男:原色鉱物岩石図鑑,北隆館,昭和48年
2) 益富地学会館編:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3) 松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年