銚子で昼食の後、別れしな、Sさんの奥さんから『 Yが、希元素鉱物を採集したい
と言うので、茨城県の産地を教えて欲しい 』、と頼まれた。希元素鉱物は産地
そのものが説明しても判りにくい上、鉱物はさらにわかり難い。
「石(鉱物)なし県」でのミネラル・ウオッチングも一段落したので、いっそのこと
案内するにして、「常陸太田市小妻(こづま)」と「高萩市大能(おの)」の産地を
ご一緒した。
『 希元素鉱物 大小シリーズ 』、である。
2年ぶりに訪れた「小妻」の産地は誰も訪れた形跡がなく手付かず状態だったが
「大能」の産地は最近誰かが訪れ掘り込んだ形跡があるものの、木々が生い
茂り、あと数年もするとズリがあったことすら忘れ去られてしまいそうだ。
希元素鉱物には、『 ガイガー・カウンター 』があると採集、鑑定に便利で
Yさんは自作してみたい、と意欲を燃やしている。私は昔、電子回路を多少かじっ
ているので、アドバイスできれば、と思っている。
( 2008年5月採集 )
2.2 高萩市大能
茨城県北部には、長島 乙吉・弘三両氏の「日本希元素鉱物」に紹介された
希元素鉱物が採れるペグマタイト堀場跡がいくつかある。
その1つが、高萩市下大能(しもおの)ヒイシで、「乙吉氏が昭和13年(1938年)頃
畑 晋、飯盛 武夫両氏と同行し、その時は露頭しかなく、小さなフェルグソン石を
採集したのみであった。
戦後、ここは開発され、昭和28年(1953年)乙吉氏らが木村 幹氏と訪れ、調査
したところ、『 微斜長石中にサマルスキー石らしい鉱物、フェルグソン石、褐簾石
変種ジルコン、モナズ石、そして緑柱石を採集した 』 とある。
この産地には、愛知県の石友・KDさんと1998年12月に訪れたのが最初で、その
後、私の茨城県への転勤に伴い身近な産地の1つになり、何回か訪れ、その度
に各種の希元素鉱物を採集していた。
しかし、2002年に山梨県甲府に戻ってからは、スッカリ足が遠のき、ここを訪れ
るの2年ぶりだった。
「日本希元素鉱物」には、いくつかの堀場が記載してあるが、今回私が採集した
場所は「下大能ヒイシ」で、大きな堀場跡が残されている。
しかし、産地は藪に変わりつつあり、近い将来、ここにペグマタイト堀場があった
ことすら忘れ去られそうだ。
「大能」の産地では、ズリ石を土嚢袋に入れ沢まで運び大きな塊は歯ブラシで
洗いながら表面をルーペで観察する。細かい土砂は、パンニングし、重鉱物だけ
残し、それ以外は洗い流す。
鉱 物 名 (英語名) | 化 学 式 | 説 明 | 採 集 標 本 | 産地 | 備 考 | 小妻 | 大能 | フェルグソン石 (FERGUSONITE-(Y)) | YNbO4 |
灰〜茶褐色の分解物に 覆われた四角柱状で 徐々に尖り(細くなり) 頂上部には四角い 平坦面が見られる ケースもある。 | ○ | △ |
小妻では量は 多い 強い放射能 |
ジルコン (ZIRCON) | ZrSiO4 |
ガラス光沢、透明で 先端が尖った錐状 結晶の集合
小妻のものには |
赤色透明宝石質【大能】
| △ | △ |
やや強い 放射能 |
ジルコン (ZIRCON) /変種ジルコン (Altered Zircon)
苗木石 |
(Zr,Hf,Y,etc) (Si,Nb,Ta)O4 |
緑褐色半透明柱状 結晶が平行連晶をなし 扇状に並ぶ | △ | △ | やや強い 放射能 |
サマルスキー石 (SAMARSKITE-(Y)) | (Y,Ce,U,Fe3+)3 (Nb,Ta,Ti)5O16 |
黒色、ガラス光沢で 油脂感がある。 塊状 | △ |
鉄電気石と まぎらわしい 強い放射能 |
ゼノタイム (XENOTIME) | YPO4 |
小妻のものは 灰褐色〜灰緑色の球状 で産する。 大能のものは ピラミッド状の 8面体で産し、 結晶形が教科書 通り。
ジルコンと平行 |
球状【小妻】
| ◎ | ○ |
下側の柱状を 示すのが ジルコンと 考えられる。
外国には、柱状の |
鉄コルンブ石 (FERROCOLUMBITE) | FeNb2O6 |
真っ黒い亜金属光沢を 示す板状結晶の集合で 産する。 | △ | モナズ石 (MONAZITE-(Ce)) | CePO4 |
黄褐色透明〜半透明の ガラス光沢を示す板状 結晶で産する。 |
頭付き【パンニング品】 | ◎ | △ | 褐簾石 (ALLANITE-(Y)) |
CaYAl2 Fe2+(SiO4) (Si2O7) (OH) |
黒褐色亜金属〜樹脂光沢を 帯びた柱状結晶で産する。 | △ | 磁鉄鉱 (MAGNETITE) | FeFe3+2O4 |
長石に挟まれ黒色 亜金属光沢の層状 〜塊状で産しまれに 八面体の自形結晶で 産する。 強い磁性を示す。
「日本希元素鉱物」に | 八面体自形結晶【13mm】 | ◎ | 鉄礬柘榴石 (ALMANDINE) | Fe3Al2(SiO4)3 |
大きなものは長石に 挟まれ黒色の層状 〜塊状で産し、まれに 結晶面が数面 見られる。 小さなものは、 真紅、透明の 24面体で、表面に結晶 成長時の累帯構造を 残すものが多い。 |
結晶面が数面見られる 【20mm】
| ◎ | 鉄電気石 (SCHORL) |
NaFe3Al6 (BO3)3 Si6O18 (OH)4 |
長石の中に 柱状結晶として 見られる。 希元素鉱物を 含まない部分は 結晶がシッカリ しているが 多くは、ボロボロに なりやすい。 表面が白雲母に 覆われている のも見られる |
母岩付き | ◎ |
電気石と長石の 境界附近に希元素 鉱物が見られる。 |
『 まずひとつは、まえにMHのホームページを見ていたときに、「お手製の
もうひとつは、中津川で見てきた鉱物博物館の展示(ペグマタイトに放射
で、お母さんにガイガーカウンターのことを聞いてみたら「キットを売って
ガイガーカウンターを持って」と書いてあったので、「へぇー、作れるんだぁ
」と思い、自分でも作ってみたかった。
それと、自分で作ったガイガーカウンターで放射線を検知してみたかった
のとがあります。← 一番大きな理由です。
性鉱物が含まれているので、中津川一帯は他の所より放射線量が多いと
いうようなことが書いてありました)がずっと頭に残っていて、なんとなく
それを思い返していたら、
物にしよう!」と思いついてしまったのです。
るよ。」と教えてくれて、お父さんも「作るんなら協力するよ。」と言ってくれ
たので、「あとは希元素鉱物だ。」と困ったときのMH頼みで、お願いしたの
です。 』
『 目ざせ 日本のマリー・キューリー !! 』
キューリー夫妻がラジウムから放射線がでていることを発見したのが
1898年で、今年はその110周年です。
(2) ガイガーカウンターキット
私が使っている自作ガイガーカウンターは、15年ほど前、秋月通商で販売
していたキットで、5,000円程度だった。浜松ホトニクス製のガイガーミュラー管
(GM管)をセンサーにして、ガンマ線と高エネルギー・ベーター線を検出すると
圧電ブザーが2kHzの変調音で鳴る簡単なものだった。
回路パターンの修正が必要だったり、組み立てるのは簡単ではなかったが
一発で、”ぴっ ”ぴっ ”と鳴ったときは、嬉しかった。
数年ほど前、浜松ホトニクスがGM管の製造を止めてしまったので、キットも
販売中止になってしまったようだ。
現在、ガイガーカウンターを自作しようとすると、ネット上の回路図をダウン
ロードし、部品を秋葉原で買い集め、GM管はロシアなど外国製のものを購入
するしかなさそうだ。検出窓面積が大きいので、感度は良さそう。
GM管だけでも1万円を超え、高圧用のトランスやダイオードなども必要で、
かなりの費用と電子回路の知識が必要だ。さらに、半田付け技術も・・・・・・。
『 がんばれ !! 』