新潟県産不明鉱物の鑑定

新潟県産不明鉱物の鑑定

1.初めに

最近、私のHPを見た方から、産地の詳しい情報が欲しいとか産地を案内して
欲しいなど沢山メールをいただくようになり、その都度対応させていただいています。
その中の1通に、親子で採集した鉱物の名前がわからないので教えて欲しいとの
内容のものがあり、程なくして、標本の一部が送られてきました。
送られてきた標本が、「鏡(赤)鉄鉱」であることは数秒で分かったのですが、
なぜ鏡(赤)鉄鉱と判断したのかを説明する段になり、ハタと考え込んでしま
いました。
そのとき、バードウオッチングの講習会の講師のかたが、コースの何回目かに
「すずめ」を指して「あの鳥は何ですか」と質問するという事を思い出しました。
「すずめ」であると分かることは、「すずめ」とは一般的にこういう鳥だと知って、
さらに「からす」でも「はと」でもない事を知っていることが必要だと言って
おられました。
鳥や昆虫に比べ、鉱物の鑑定の難しさは、桁違いだと思います。小学生でも
蝶とトンボが区別できるのに、水晶ですら頭を悩ませる結晶に出会うことが
あるくらいです。
産地案内だけでなく鉱物鑑定などのメールのやり取りを通じで、1人でも鉱物が
好きな人が増えてくれればと願っています。
(2001年10月鑑定)

2.標本の来歴

(1)東京に住むTさんから、次のようなメールをいただいた。
『昨年(2000年)の夏、新潟県村松町付近を流れる早出川上流に杉川という支流があり
そこに川遊びに出かけた際、息子が錆びだらけの鉱物(?)を川原で拾いました。
その時は全く気にしなかったのですが、帰宅して叩いてみると内部は金属状の
きれいなものでした。
図鑑等で調べてみたものの何だか判明しません。
突然で誠に失礼とは存じますがサンプルを送らさせていただきますので
アドバイスいただけたら幸いです。
(もちろんサンプルは適当に処分してください)』
(2)仕事が立て込んでおられて、サンプル送付が次週になるとのメールの後、次の
ようなメールを受信しました。
『鉱物サンプルが準備できましたので、明日、郵送させていただきます。
(時節柄、不審な郵便物と勘違いされると困るので封筒上に『岩石サンプル在中』と
記してあります)』
間もなく、封筒に入ったサンプルが送られてきました。

鑑定依頼のあった不明鉱物   左:外観【錆びている】右:へき開

3.鑑定方法

3.1 肉眼とルーペでの鑑定
早速、不明鉱物2ケを見て、赤鉄鉱(鏡鉄鉱)だと3秒で分かりました。
送られてきた不明鉱物の目視やルーペで分かった特徴は
(1)破断(へき開)面が鏡のよう。
  (鏡鉄鉱の鏡鉄鉱たる所以です。)
(2)薄くなっている部分が、光を透過して赤く見える。
  (赤鉄鉱の赤鉄鉱たる所以です。)
  ルーペで蛍光灯の下で見ると、点々と赤い部分が見える。
(3)周りが錆びて赤褐色になっている。
  (鉄を含む鉱物である証拠です。)
3.2 磁石での鑑定
(4)念のため糸に磁石をつけて近づけると吸い付きます。
  間違いなく、鉄の鉱物です。
3.3 似た鉱物との違い-消去法による絞込み-
(5)似たものに、「方鉛鉱」があるが、これに比べて
  比重が小さく軽いし、へき開面も違う。
(6)「閃亜鉛鉱」も似ているが、閃亜鉛鉱は、鉄分が少ない黄褐色(ヤニ)の
  部分があり、通常方鉛鉱を伴っているが、この標本にはない。
3.4 産地からの絞込み
(7)「日本鉱産誌」(全巻 72,000円)によれば、新潟県中蒲原郡川内村に
   かつて「村松鉱山」があり、赤鉄鉱を採掘したとあります。
  Fe40〜60%で、この本が出た昭和29年(1954年)には「休山」とあります。
  参考文献にある、1911年発行の「地質調査報告:本邦の鉄鉱」と
  1932年の「商工省鉱山局: 鉄鉱調査概要」に掲載されているところから
  1911〜1932年の間は稼動していたことになりそうです。

4.おわりに

(1)メールでの鉱物鑑定依頼でしたが、これに対応させてもらうことで、
@暇つぶしができた。
A文献を調べるなどで、少し頭を使って”ボケ防止”になった。
(2)これからも、このような質問にお答えして、鉱物ファンを増やせればと
   念願しています。
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