細倉鉱山の鉱物

細倉鉱山の鉱物

1.初めに

宮城県鴬沢町にある(あった)細倉鉱山は、大同年間(807年)の発見と
伝えられ、かつて日本有数の亜鉛、鉛、銀の産出量を誇ったが、昭和62年に
採掘をやめた。
その後、平成2年6月に観光坑道「細倉マインパーク」として生まれ変わった。
今回、福島県平地学同好会の巡倹の一環で11名で訪れ、「鉱山資料館」
「観光坑道」などを見学したあと、特別の計らいで、ズリで採集をさせて
いただいた。30分足らずの採集でしたが、「閃亜鉛鉱」「方鉛鉱」など、
細倉鉱山ならではの標本を採集できた。
(2001年8月採集)

2.産地

東北自動車道「築館IC]で下り、国道4号線を走り、「細倉マインパーク」の
標識に従って左折して、標識の通りに進めば、細倉に到着する。
佐藤典正著「細倉鉱山史」によれば、昭和30年代の最盛期には2000名の
従業員を数え、その賑わいは今の町の佇まいからは想像もできません。
まず、鉱山資料館の見学(入館料300円)をお勧めします。

左:鉱山資料館        右:和田コレクション
資料館には、細倉鉱山に係わる古文書、採掘道具、写真などのほかに、模型などを
展示し、鉱山での採掘・精錬の様子と製品が理解しやすくなっている。
今回、細倉鉱山で先進ボーリングを担当していた下山さんが案内してくれ、採掘の方法や
道具の使い方などを解説をしてくれたので、より分かりやすかった。
また、和田コレクションのコーナには、全国各地の有名鉱山の有名標本が展示して
あり、ここが「三菱鉱業」の鉱山であることに思いがいたります。
細倉鉱山の代表的な産出標本として、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、方解石などを展示しています。
金属鉱物は、脈・塊状で、見栄えはパッとしませんが、その重量感には圧倒されます。
次に、観光坑道(入場料900円)に入ると、昔の狸堀の跡やシュリーレン工法で
大々的に採掘した跡などを見学できます。
観光の1つとして、砂金をパンニングするコーナもあります。(別料金)

3.産状と採集方法

細倉鉱山は、第三紀の安山岩に胚胎した鉛・閃亜鉛鉱脈で、黄銅鉱や黄鉄鉱なども
伴っている。脈石としては、石英が一般的で、方解石や時には蛍石が随伴する。
前記の「細倉鉱山史」の附図「細倉鉱山地域図によれば、町のいたるところに坑口や
ズリがあるが、ズリの多くは公害防止のため土を被せ植林してあるので、採集に
あたっては、事務所で了解を得るのが望ましい。
今回、福島県平地学同好会の巡倹ということで、特別の計らいで、「感天坑」の上の
ズリで採集をさせていただいた。 ズリの表面の鉱石を割って、採集しました。

細倉鉱山ズリでの採集風景

4.産出鉱物

(1)方鉛鉱【Galena:PbS】
鉛灰色で、金属光沢があり、へき開面がサイコロのように割れる。
ここのは、塊状のものと、単一の結晶として脈石の中に埋もれているものがある。
(2)閃亜鉛鉱【Sphalerite:ZnS】
閃亜鉛鉱は、副成分として、鉄、カドミウム、マンガンあるいは蒼鉛
などを含み、鉄分が多い場合は真っ黒であるが、鉄分の少ない部分は、
あめ(琥珀)色をしており、鼈甲亜鉛とも呼ばれる。


左:細倉鉱山産方鉛鉱  右:閃亜鉛鉱
(3)水晶【Rock Crystal:SiO2】
売立てなどで、ここの水晶を見かけることがあり、3本500円で買った記憶がある。
石英脈の空洞部分に生じた柱面の成長していな水晶を採集した。


細倉鉱山産水晶

5.おわりに

(1)今回、巡倹なので、団体行動のため、じっくり採集する訳にはいきません
でした。次回は、個人で訪れ、ジックリ資料館の見学と採集を、と考えています。
(2)江戸時代、伊達藩では、自藩で産出する豊富な鉛を使って、登米・栗原両郡だけで
通用する刀の鍔の形をした貨幣「細倉当百」を発行した。当百とは、百文に相当し、
お米が5升買えたと伝えられている。(今の3000円くらいの価値)。
これのレプリカを売っているので、記念として購入した。


細倉当百

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