2004年6月北陸鉱物採集旅行【ダイジェスト版】

2004年6月北陸鉱物採集旅行【ダイジェスト版】

1.初めに

 2003年6月に、石川県尾小屋鉱山(金平金山)での紫水晶・緑鉛鉱の採集会の後
福井県美山町の「みらくる亭」に宿泊して以来、ここが妻のお気に入りとなり、この方面に
行く度に宿泊している。
 その妻が「みらくる亭」に行ってみたいと、兵庫県の石友・Nさんご夫妻に伝えたところ
6月末に北陸方面での鉱物採集を計画していただいた。

 @新潟県糸魚川のフォッサマグナミュージアム見学と糸魚川、青海でのヒスイ採集
 A金山谷でのストロンチア斜方ジョアキン石観察
 B富山県利賀村での鋼玉(コランダム/ルビー)採集
 C石川県尾小屋鉱山(金平金山)での紫水晶・緑鉛鉱の採集
 C福井県赤谷鉱山での自然砒、中龍鉱山仙翁坑でのモリブデン鉛鉱採集

 これらの産地を2泊3日で回り、総走行距離1,036kmであった。
 利賀村の鋼玉採集は、石川県の石友・Yさんも一緒で、実り多い巡検であった。
(2004年6月採集)

2. 金山谷の鉱物観察とヒスイ探し【第1日】

 (1)平川の”蛍石”を探せ
   金曜日公休をとり、早朝4時に甲府を出発。諏訪、塩尻、松本を経て、大糸線に沿って
  糸魚川を目指す。
   7時過ぎ、白馬村を走ると「平川」の名前が目に飛び込んできた。私のHPの掲示板に
  Zeolite氏が、”蛍石”を書き込んでくれたのを思い出し、早速川原に下りて、ピンク色
  長石を含む花崗(斑?)岩を叩く。緑色・透明感のある鉱物が斑晶として入っているが
  蛍石ではなく、緑泥石か緑色の雲母のようで、Zeolite氏が採集したものと違うようだ。

   平川

 (2)”翠の雫”にご対面
   9時にフォッサマグナミュージアムに到着、集合時間の10時まで間があるが、霧雨も降り
  ひとまず館内に入る。やがて、Nさんご夫妻が到着し、館内を見学する。
   最近発見され、博物館に寄贈されたヒスイ”翠の雫”にご対面。緑色が眩しいヒスイの名品

   ”翠の雫”

   お土産(自分用?)に、「水晶鑑定セット」(500円)を買う。

 (3)金山谷鉱物観察
   2004年3月にNさんご夫妻と訪れた時は、雪に行く手を阻まれ、スゴスゴと引き返えさざるを
  得なかった。今回は雨が降り、カッパを着て、危険な断崖の上をロープや木の根にすがって
  金山谷の奥を目指す。やがて、「鉱物採集フィールドガイド」の写真でお馴染みの、曹長石
 (アルビタイト)の巨岩が見えてきた。
   ストロンチア斜方ジョアキン石は、極限られた範囲で観察できた。

     
       曹長石巨岩          新鉱物標識
               金山谷観察風景

 (4)ヒスイ探し
   前の週に台風6号が北陸地方を襲い、海が荒れ、ヒスイが海岸に打ち上げられている期待が
  高く、勇んで海岸に向かった。いつものM海岸と、Nさんの奥さんが以前ヒスイの佳品を
  見つけた産地を案内していただく。
   小雨がパラつく中で、粘るが、一向にヒスイは見当たらない。やがて、Nさんの奥さんが
  緑色も鮮やかなヒスイの小塊を発見。

   新緑のヒスイ海岸【Nさん撮影】

 (5)ヒスイ海岸の夜は深けて
    Nさんが予約してくれたホテルは、親不知の難所にあり、前は海、後ろには山が迫っている。
   この日の宿泊客は、我々だけのようで、貸切状態であった。まずは、日本海を眼下に眺める
   展望風呂で汗を流し、冷えた体を温める。夕食は北陸の海の幸を肴に冷えたビールを呑むと
   この日1日の疲れも吹き飛ぶ。
    やがて、ホテルの人の『シカです!!』の声で、窓の外を見ると、1匹のカモシカが悠然と
   通り過ぎた。(写真をとる暇なし)

     
     玄関【貸切!?】          夕食風景
             親不知ホテル

    Nさんの部屋で2次会。持参の地酒を飲むと、この日の疲れがドッと出て、バタンQ

2. ヒスイ〜鋼玉〜紫水晶探し【第2日】

 (1)朝飯前のヒスイさがし
    採集会では恒例になっている、朝飯前のヒスイ探し。5時にホテルを出て、産地Tと
   O川河口を巡る。軟玉(ネフライト)は見つかるが、ヒスイもどきの石しかない。

   朝飯前のヒスイ探し

   スゴスゴとホテルに戻るが、早朝の運動(?)のおかげで、食が進む。

 (2)富山県利賀村で鋼玉探し

    富山県利賀村では鋼玉(サファイア)が採集できると知り、10年以上前に訪れたことが
   あったが、産地を特定することができなかった。(早く言えば、採れなかった)
    私のHPを見た石川県の石友・Yさんから、サファイアの産地を教えて欲しいとのメールを
   いただき、追いかけるように、付近の地質図も送られてきた。
    それを見ると、鋼玉を含む片麻岩が分布しているのは、山の上の方らしいことも分かった。
   念には念をと思い、京都の石友・Nさんにお願いして産地の地図を送っていただいた。
   これで、準備万端整った。
    親不知のホテルを8時過ぎに出て、親不知ICから北陸道にのり、砺波ICでおり、集合場所の
   「道の駅・利賀みどりの一里塚」に着いたのは、10時であった。
     待つほどに、Yさんが到着し、早速産地に向かう。Nさんの地図のおかげで、迷うことなく
    産地を探し出し、全員がコランダムを採集でき、私はルビーも採集した。
     また、Yさんによれば、片麻岩の下層は花崗岩になっているようで、そこからやや錆びているが
    鉄礬柘榴石も採集できた。

     
         採集風景           露頭にて
                利賀村鋼玉産地

   「道の駅」に戻り、昼食に地元の蕎麦を食べる。Yさんは、鉱物採集を始めたのが2004年3月と
   日が浅いにも拘わらず、地元の図書館などで地質図や市町村史(誌)等の文献を調べ、鉱山の
   場所、歴史を調査して、古い産地を探し出すという正統派。
    採集したという標本を頂いたが、何れも私の知らない産地のものであった。
     @海緑石                石川県七尾市佐々波
     A一部メノウ化したサンゴ化石   石川県七尾市佐々波
     B軟マンガン鉱            石川県中島町瀬嵐鉱山
     C黒鉛                 富山県高清水
     D鉄礬柘榴石             富山県高清水

    これらの産地や「宝達の蛍石」産地などを一緒に訪れるのを期して、Yさんとここでお別れ
   した。

 (3)尾小屋鉱山・金平坑
    今回の北陸採集行のキッカケとなった、尾小屋鉱山・金平坑を訪れるべく、砺波ICに戻り
   北陸道に再びのり、小松ICでおり、産地に到着。
    雨上がりで、しかも最近だれも訪れていないようで、表面採集だけで、紫水晶のほかに
   緑鉛鉱(緑・褐色)の群晶・分離結晶が簡単に採集できる。
    私の妻は、緑鉛鉱を自力で採集し、Nさんご夫妻から「腕が上がった」と誉められ
   満更でもなさそう。(シメシメ、これで・・・・・)

   採集風景

    17時近くになり、後ろ髪を引かれる想いで、産地を後にする。

 (4)「みらくる亭」の夜は更けて
    この日の宿の「みらくる亭」は、Nさんご夫妻に紹介していただいて以来、妻のお気に入りと
   なり、今回が4回目である。
    まずは、カルシュウム(Ca)を含む温泉に浸かり、この日一日の産地での出来事を振返ると
   疲れがとれる。夕食では、冷えたビールとともに、福井の海、山のものをいただく。

   夕食

   この日もNさんの部屋に押しかけ、2次会。Nさん差し入れの丹波の地酒が効き、採集の疲れも
  でて、早めに Z z z・・・・。

4.金米糖〜モリブデン鉛鉱採集【第3日】

 (1)朝飯前の金米糖探し
   早朝、「みらくる亭」から10km余り離れた赤谷鉱山に自然砒(金米糖)を探しに行く。
   チェックインのときにお願いしておいたとおり、5時には、自動ドアが開く様になっていた。
   (「紅岩山荘」の2の舞はしないで済んだ。)
   最近の台風や長雨で、ズリの状況がかなり変わっている。ズリの粘土質の土砂をフルイ掛け、
   パンニングと思い思いのやり方で採集する。
    やがて、Nさんお奥さんが「こんなの」と見せてくれたのは、1cmを越える”金米糖”
   前回、1つも金米糖が見つからなかったNさんもようやく「ありました」と見せてくれたのは
   薄い石英(玉髄?)の幕を被った”卵状自然砒”の可愛らしいものであった。

     
        ズリの変貌      産地にて
        赤谷鉱山自然砒(金米糖)産地

 (2)モリブデン鉛鉱探し
   朝食の後、朝市で野菜を買い込んだ後、中龍鉱山仙翁坑に「モリブデン鉛鉱」を探しに行く。
   麻那姫湖に掛かる若生子大橋を渡ろうとしたら、「ワイヤー破断のため通行禁止」で、止む無く
   ダムサイトの上を通り、仙翁谷に向かう。(結果的に、こちらの道のほうが良かった)
    ズリまでのルートは、背丈以上の夏草や木に覆われ、なかなか進めない。何とか苦労して
   見覚えのある、「モリブデン鉛鉱」の産地に到着した。所要時間30分。
    異極鉱に覆われたタイプのものは、直に見つかったが、”飴色・透明”のものはなかなか
   見つからない。やがて、Nさんの奥さんが、褐鉄鉱の上に”葉片状”に1枚付いたものを発見
   したがルーペサイズでは・・・・・・。
    やがて、Nさんが、異極鉱の上に飴色の結晶がビッシリ付いた良品を採集。人間、余裕が出ると
   恐ろしい。程なくして、「異極鉱を含む母岩を割ったら、こんなのが出てきた」と見せてくれたのは
   新鮮な、飴色・透明なモリブデン鉛鉱だ!!。
    この日は、Nさんデーでした。

   仙翁坑産地にて

    やがて、ガスが掛かってきて、長居は無用と、産地を後にした。
    下山し、麻那姫像のある公園で、Nさんご夫妻と次回採集会でお会いするのを約束し
   お別れした。

   麻那姫像前にて

(3)いざ帰りなん
   帰途、和泉村に入り、「アドベンチャーランド中竜」を訪れた。売店はすっかり模様替えされ
  楽しみにしていた安価な鉱物はなく、早々に引きあげた。
   白鳥、美濃を経由し、土岐ICから中央道にのり、甲府に戻ったのは21時過ぎであった。

5. おわりに

(1)10年以上前に訪れ、採集できなかった利賀村の鋼玉が簡単に採集でき、”産地情報”の威力を
   改めて認識した。
   それ以上に、3日間ご一緒していただいたNさんご夫妻、情報を知らせてくれたNさん、そして
   今回初めて知り合った石川県のYさんのように、石友のありがたさを知った北陸採集行であった。
   皆様に、改めて御礼申し上げます。
(2)今回は、鉱物だけでなく、親不知のカモシカ、尾小屋鉱山の産卵中(?)の亀、そして中龍鉱山
   への道路脇で見かけた月の輪熊など、自然の生態にも触れた旅でした。
(3)地図で見ると、ルビーを産する岐阜県河合村とコランダムの利賀村は尾根を挟んだ関係にあり
   ともに鋼玉を産する地質的な必然性を感じます。
   いつか、両方の産地を巡る採集会を計画したい、と考えています。
(4)今回は、ダイジェスト版を作成しましたが、それぞれの産地の詳報を逐次掲載する予定です。

6. 参考文献

1)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂,1994年
2)C.W.Chesterman:National Audubon Society Field Guide to
          North American Rocks and Minerals,Knopf,1995年
3)富山県教育委員会編:富山県の地質 鉱物  ー富山県地質鉱物緊急調査ー,富山県,1998年
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