京都府相楽郡加茂町法花寺野の満バン柘榴石

京都府相楽郡加茂町法花寺野の満バン柘榴石

1.初めに

10年ほど前に法花寺野を訪れたが、満バン柘榴石は採集できなかった。
その後、京都の石友Nさんから法花寺野産の美しい満バン柘榴石をいただき
是非自分の手で採集してみたいと思っていた。
今回、10年ぶりに訪れ、産地の変りようにビックリし、最初は満バン柘榴石は
ダメだろうと思っていたが、運良く取り残しを採集できた。
この産地の目玉は、@木下石A園石B満バン柘榴石ですが、木下石と園石は
ジックリ攻めないと難しいようです。
(2002年11月採集)

2.産地

国道24号線を南下し、木津川にかかる泉大橋を渡り、すぐに斜め左に下り
すぐ左折する。JR奈良線の下をくぐり、JR関西本線に沿って県道47号線を東へ走る。
やがて、木津川沿いになり、バス停「法花寺野」があり、その先右側に採石場が
ある。ここが産地です。
法華寺野採石場
採石場には、留守番の老人がおり、採集を頼むと簡単に許可してくれる。

3.産状と採集方法

ここは、領家変成帯とよばれる一帯で、数億年前に泥やプランクトンなど
珪質の遺骸が降り積もった泥岩とチャートが熱と圧力で変成を受けた。
これらの間にマンガン鉱物が層状に入っています。
10年ほど前に来た時は盛大に操業し、砕石が赤みを帯びたマンガン系
だったのに、いまは細々と砕石し、石も花崗岩系の白い石だけです。
採石場を一巡りし、かつてマンガン鉱物を採集したあたり(上の写真の右端)に
辛うじてマンガン鉱の露頭を認め、誰かの取り残しの満バン柘榴石やバラ輝石を
タガネと2kgハンマの威力でかき採る。

4.採集鉱物

(1)満バン石榴石【Spessartine:Mn3Al2(SiO4)3】
バラ輝石や石英に伴って、黄褐色の脈をなし、それらの中に自形結晶が見られた。
満バン石榴石
(2)バラ輝石【Rhodonite:MnSiO3】
肉紅色でテフロ石などに伴って産出する。マンガン鉱は層をなしており、この場所が
層状変成マンガン鉱床であることが分かる。
バラ輝石
(3)このほか、ここでは@木下石A園石の産出が記録されていますが
ジックリ攻めないと難しいでしょう。

5.おわりに

(1)約10年ぶりに再訪でき、産地の変化に驚きながらも、この産地の目玉の
1つである満バン柘榴石を採集できたのは幸運であった。
遠くの産地はもっとこま目に情報を集める必要性を痛感した。
(2)夕闇も迫り、産地を後にした。国道24号線を南下し、奈良県に入り
「極楽湯」で採集の汚れを落し、鉱物採集の部のまずまずのスタートにビールで乾杯。
正しく、極楽、極楽。

6.参考文献

1)京都地学会編:京都の地学図鑑,京都新聞社,1993年
2)大阪地域地学研究会:関西地学の旅 宝石探し,東方出版,1998年
3)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
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