日立鉱山の菫青石

日立鉱山の菫青石

1.初めに

故日下先生の「鉱物採集フィールドガイド」には、日立鉱山のズリで
菫青石が採集できるとあり、柴田博士の「原色鉱物岩石検索図鑑」
にも長さ5cmに達する柱状結晶が出る、とある。
過去に2回ほど訪れ、空振りでした。それもその筈、どのような母岩に
どのような色・形で産出するのか知らないで探していたのですから。
茨城県自然博物館で実物を見て、産状をシッカリ頭に叩き込んで3度目の
挑戦をした。3度目の正直でようやく採集できましたので、報告します。
(平成13年1月採集)

2.産地

国道349号線から、「きららの里」を目指して登って行くと頂上に
「本山トンネル」がある。トンネルの手前右手に大きな駐車スペースがあり、
ここに車を止める。
駐車スペースの南側に旧道が残っており、これを登っていくとトンネル
(「フィールドガイド」にあるトンネルだが今は入口が塞がれている)がある。
トンネルの手前から右にはいる道が「高鈴山ハイキングコース」になっており、
ここを約100m行くとゲートがあり、そこがズリ入り口である。
「日立鉱山ズリ入り口」
ここから、約200m轍のある広い道を進むと、左側の斜面一帯が日立鉱山の
ズリである。

3.産状と採集方法

「日立鉱山史」によれば、明治末期、茨城県に赤沢と呼ばれる小さな銅山が
あった。久原房之助がここを買い取り、日本有数の大鉱山に成長し、これが
日立鉱山であり、日立製作所もここから生まれた。
日立鉱山は、別子銅山と同じように含銅硫化鉄鉱(キースラガー)鉱床を採掘し
菫青石は含銅硫化鉄鉱床を切るペグマタイト質石英脈に産出する。
白い石英を含むズリ石の表面を観察すると菫青石が付いていることがある。
大きな石英脈は、割ってみると中から現れることもある。
表面は、緑色のピニ雲母に覆われている場合もあるし、紅柱石と共生するよう
なので、緑や赤紫がかった部分がある石英脈が有望である。
日立鉱山ズリ【高鈴】

4.産出鉱物

(1)菫青石【Cordierite:(Mg,Fe,Mg)2(Al,Fe)4Si5O18】
斜方晶系であるが、面角が60度に近いので、反復双晶をなす場合、六方晶の
ように見える。結晶の形は、多様なので、怪しいと思ったら持帰った方が良い。
日立鉱山の菫青石【結晶長さ8mm】

5.おわりに 

(1)3度目の訪問でようやく菫青石が採集できた。
やはり、原産地の標本を一度見て、産状を飲み込んでから、採集に行くのが
効果的なようです。
(2)1999年1月に行った時には、本山トンネルの日立市街寄りに、簡易
郵便局「日立鉱山本山」があったので、記念に押印をと思って訪れたところ、
既に、廃局になっていました。また1つ、日立鉱山の歴史が消えてしまいました。

日立鉱山本山局の消印を押した切手【昭和16年】

在りし日の日立鉱山本山局【平成11年】 inserted by FC2 system