日立鉱山の絹雲母

日立鉱山の絹雲母

1.初めに

2001年の採集納めに、日立鉱山のズリで菫青石を採集した。その際、
同行のOさんが絹雲母の大きな塊を発見し、みんなで分け合った。
帰宅して何日かして、吉本文平著「鉱物工学」を読んでいると、絹雲母の項に
日立鉱山産の絹雲母が記述してあり、採集してそのままになっていた標本を
HPに掲載することになった。
(2001年12月採集)

2.産地

常磐道日立中央ICでおり、日立有料道路(100円)を通り日立市街に
向かうとT字路になる。ここを右折して進むと、右手に東洋一といわれた煙突
(今は、根元の部分しか残っていない)をもつ、日立鉱山精錬所がある。
日立鉱山精錬所
ここを過ぎ、さらに登って行くと、左手に「日鉱記念館」がある。
「日鉱記念館」
さらに「きららの里」を目指して登って行くと頂上に「本山トンネル」がある。
トンネルを抜けると左手に大きな駐車スペースがあり、ここに車を止める。
駐車スペースの南側に旧道が残っており、これを登っていくとトンネル
(「フィールドガイド」にあるトンネルだが今は入口が塞がれている)がある。
トンネルの手前から右にはいる道が「高鈴山ハイキングコース」になっており、
ここを約100m行くとゲートがあり、そこがズリ入り口である。
ここから、轍のある広い道を約200m進むと、左側の斜面一帯が日立鉱山の
ズリである。ちょうど、「日鉱記念館」の裏手になっている。

3.産状と採集方法

日立鉱山は、別子銅山と同じように含銅硫化鉄鉱(キースラガー)鉱床を
採掘していた。絹雲母(セリサイト)は、微細な白雲母を指す野外名に過ぎない
とされている。
絹雲母の成因は、次のように分けられる。
(1)結晶片岩に産するもので、動力変成で生成。
(2)金属鉱床に産する流紋岩、凝灰岩などがアルカリ性熱水で変質。
(3)岩石中の長石類が火山作用による熱水で変質。
(4)水成岩の成分をなす。
日立鉱山産のものは、(1)に属し、セリサイトの結晶片の発達が大きく、片理の
面と平行に重なって配列している。
ズリ石を探し、表面を観察するとすべすべの緑がかった白い絹雲母が付いている
ことがある。

4.産出鉱物

(1)絹雲母【Sericite:KAl2(Al,Si3)O10(OH)2】
微細な白雲母結晶の集合体で、乾燥した表面は絹糸状の光沢を示すことから、
絹雲母と呼ばれるようになったと言われる。
日立鉱山産の絹雲母は、SiO2:47%,Al2O3:37%,K2O:7.4%,MgO:1.7%,Na2O:1.4%のほかに
微量のFe2O3やTiO2を含んでいるといわれる。
日立鉱山の絹雲母
下の顕微鏡写真を見れば、層状に生成している様子がわかる。
日立鉱山産絹雲母の拡大写真【鉱物工学から引用】

5.おわりに 

(1)2002年1月30日に、日本最後の炭鉱「太平洋炭鉱」が閉山し、現在、日本で
稼動している鉱山は、数えるほどになってしまっている。
絹雲母は、化粧品やOA用紙などへの用途に支えられ、現在でも愛知県の振草鉱山の
ように稼行している鉱山がある。
山梨県白州町にあった蓬莱鉱山でも、平成の初めごろに、絹雲母を採掘して、
水篩して精製していたが、いつの間にか廃業してしまったようです。

6.参考文献 

1)吉本 文平:鉱物工学,技報堂,昭和42年 inserted by FC2 system