2012年 GW 翡翠探しの旅







            2012年 GW 翡翠探しの旅

1. 初めに

    2012年GW が始まる28日の夜遅く、久々に山梨に戻った。その目的は、『農園』を耕し、
   夏野菜の種をまいたり、苗を植えることだった。
    長男一家が孫を連れて2日の夜に来ると言うし、3日ごろから天気も悪くなるという予報だっ
   たので、それまでに終わらせなければならなかった。
    早朝5時から、母親と畑に行き、7時過ぎに妻が朝食を運んできて、暑くなる10時前まで
   3日連続で農作業に勤(いそ)しみ、30日の夕方には何とか畑としての体裁が整った。

    5月1日は、自由な時間になった。手近な産地でミネラル・ウオッチングと考えたが、妻はと
   もかく、80歳をとうに過ぎた母親を連れて行ける産地はそうそうない。かくいう私ですら、出る
   か出ないか判らない露頭を何時間も叩き続ける根性もない。そんなことで、何となく日本海・
   糸魚川あたりで翡翠探しをして名物の「タラ汁」を食べて帰ることに決まった。

    1日の朝、5時前に起床し、自宅近くのSAから高速にのり、八ヶ岳近くを走ると前方に大きな
   虹が突然現われた。『 何か良いこと有る如し 』

       虹 『 何か良いこと有る如し 』

    豊科ICで下りたのが6時過ぎだった。どこかで朝食を、と思ったが、ファミレスは全部閉まっ
   ていて、朝マックしたのが7時だった。
    そこから、糸魚川に向けて一路北上、青海川河口のいつもの翡翠採集ポイントに到着した
   のは9時前だった。お茶会を前にして日に焼けるのが怖い妻と足元が不如意な母親を車に
   残し海岸沿いを歩き始めた。
    以前に比べ、「キツネ石」や「ネフライト」の類は増えているような印象だが、これぞ翡翠と
   言うのには巡り会えなかった。1時間ほどで車の近くまで戻るとこれから採集に向かう人と出
   会った。話を聞くと九州から翡翠探しに毎年何回か来ているベテランとのことで、御一緒させて
   もらい教えを乞うことにした。

    元高校教師・Iさんの後をついて、海岸沿いを南下、有名なレストラン・Kをはるかに過ぎる
   所まで来ていた。この先は、「親不知、子不知」の難所で、海岸沿いには行けない。
    この間、「これは曹長石」、「これは蛇紋岩」、「これは翡翠かな?」、とOJTしていただいた。
    戻りにIさんが、「これが翡翠の原石です」、と示してくれたのは大人の頭ほどあり、ズシリと
   重く、ゆうに7、8kgはありそうだ。恐ろしいのは”欲”で、これを担(かつ)いで1km余り車ま
   で戻った。

       翡翠原石

    時間も12時を回ったところで、待ちくたびれた妻と母親の機嫌を取るべく、「ビアパーク」の
   レストランに案内した。ここの名物は「タラ汁」で、定食を注文すると旬の”ホタルイカ”、鯛の
   刺身、コシヒカリのご飯、そして「タラ汁」が運ばれてきた。妻や母親はダシのでたタラ汁に満
   足し、御機嫌も戻ったようだ。仕上げに、「アイスクリーム」まで奮発した。

       名物・『タラ汁』

    この後、さらに南下し富山県宮崎の「ひすい海岸」を目指した。いつも立ち寄る翡翠店で最
   近の状況を聞くと、「今年の冬は雪が多く、海も荒れたが、砂ばっかり打ち寄せられて、重た
   い翡翠は砂の下の潜ってしまった」、とのことで、これぞという品を採集した人はいないらしい。

    3時過ぎ、海岸を後にし、白馬に向かって走ると、道路脇に軽自動車が停まっていて、荷台
   には何やら石がたくさん積んである。車を降りて話を聞くと、「祖父の時代に作った自宅の石
   垣を崩したら、「ひすい」が出てきたので売っている」、とのこと。値段もめちゃくちゃ安いので
   何個か購入した。

       恒例の(?)『現金採集』

    こうして、いつものように最後は『現金採集』になってしまった。それでも、緑色も鮮やかな
   翡翠を入手でき、満足して帰宅した。

    ここのところ、HPのネタに、「石友恵与の緑色鉱物」が続いたが、締めは、「緑色の翡翠」だ
   った。
    糸魚川で丁寧に解説いただいた九州のIさんに厚く御礼を申し上げる。
    ( 2012年5月 採集・購入 )

2. 産地

    私たち夫婦が翡翠探しで訪れるポイントはいくつかあるが、姫川や青海川沿いは雪解けの
   濁流が渦巻き、危険を感じ近づか(け?)なかった。
    そんな訳で、波穏やかな海岸沿いが産地だ。

         
               産地A                       産地B
                         糸魚川翡翠産地

3. 産状と採集方法

    翡翠は川岸や海岸に転石となって転がっている。採集の基本は浜辺や海の中を観察して、
   それらしい石を拾い上げる至って簡単な方法だ。こんな所から、「東京から来たハイヒール履
   きの若い女性が素晴らしいヒスイを見つけた」、というような話(伝説?)が生まれるのだ。

    しかし、何回か通ってみて、そうそう甘いものではないことを身にしみて思い知らされている。
   ”それらしい石”がわからないのだ。
    地元の翡翠店を訪れると、『ひすいと出会う方法』というチラシが置いてある。10円(コピー
   代か)を取る店もある。サブタイトルに「糸魚川・青海地域の河原や海岸でひすいに出会うた
   めのコツを伝授しよう」という、何とも頼もしい限りだ。店の人の話では、原典(オリジナル)は、
   フォッサマグナミュージアムだろうとのこと。これを引用させていただく。

    ・ 実績のある場所で探すべし。
        これまでひすいが発見されている河川(姫川、青海川、小滝川など)や海岸(糸魚川
       市押上〜青海町〜富山県朝日町宮崎)に行くことじゃ。(当たり前じゃがのう・・・・)
        今まで誰もひすいを見つけていない場所からひすいを見つけてやろうというチャレン
       ジ精神は立派だがのう・・・・・・これはかなり難しいのじゃ。

    ・ 白っぽい石を探すべし。
        君はひすいは緑色の宝石だと思っているじゃろう。それがそもそも間違いなんじゃ。
       全部が緑色のひすいはめったにないぞ。緑の石ということを忘れて、むしろ白色の石を
       意識することが大事なんじゃ。ひすいの原石の大部分は白色で、一部に緑色や紫色
       青色のきれいな部分があるんじゃ。緑色の石を探していると、まずほとんどの人が本
       物のひすいにはめぐりあえず、透閃石岩(軟玉)、緑色岩、碧玉などを見つけるんじゃ。
       それからのう、白っぽい石がたくさん集まっているところにはひすいはまずないんじゃ。
       そのわけは、白っぽい石の多くは軽いんじゃが、ひすいは白くても重いんじゃ。そのた
       め黒っぽい石に混じっている落ちている白い石を探すことじゃ。

    ・ 角ばった石を探すべし。
        ひすいはものすごく割れにくい石なんじゃ。トンカチでたたいたら、トンカチが丸くなる
       ほどじゃ。ひすいはかたいために、あまり丸くならず角張っていることが多いんじゃ。

    ・ 重たい石を探すべし。
        ひすいの主要構成鉱物であるひすい輝石の密度は約3.2g/cm3もあるんじゃ。この
       値は白色の鉱物としてはかなり大きな値でのう、同じく白色の鉱物である石英や曹長
       石との差は歴然としているんじゃ。慣れてくると持ったときの感じで、ひすいかどうかを
       判定できるようになるんじゃ。慣れていないとどんな石でも重たく感じてしまうから、握
       ることができるぐらいのサイズのひすいを手に入れて重さを覚えることじゃ。

    ・ なめらかな表面の石を探すべし。
        海岸で発見されるひすいの多くは、なめらかな表面をしているんじゃ。ザラザラという
       ことはめったになおぞぉ。やけにすべすべするようなものは、軟玉や蛇紋岩、滑石なの
       じゃ。手で触ってみたときの感触も大事なんじゃ。

    ・ キラキラと輝いている石を探すべし。
        ひすいの大部分は0.1mm〜5mmの大きさをもつ、ひすい輝石の結晶が集合している
       んじゃ。太陽光線や強い光を当てるとキラキラ輝いてきれいじゃぞぉ。ルーペなどで拡
       大してみるとはっきりわかるから、ルーペは必需品じゃな。一つ一つの輝きの形はひ
       すい輝石が短柱状〜長柱状の結晶であるため、ふつうは細長く見えるぞ。ただし、結
       晶が大変微細なヒスイだと見えないこともあるんじゃ。

    ・ ひすいモドキを見抜く力をつけること。
        糸魚川・青海地域でひすいによく間違えられる石として、石英(碧玉など)、チャート、
       変質した酸性火山岩、ロディン石、軟玉、クロム含有白雲母があるんじゃ。ベテランでも
       間違えるぐらい、よく似ているんじゃ。中にはひすいよりもきれいなものもあるから、困
       ったもんじゃ。フォッサマグナミュージアムでひすいモドキの特徴をよーく見て、特徴を
       覚えることじゃ。

4. 採集鉱物

 (1) ひすい輝石【JADEITE:NaAlSi2O6
      ひすいの特徴はすでに書いたとおりだ。今回の採集品をいくつか紹介する。

         
                   青                      ラベンダー

         
                                緑
                            糸魚川産翡翠

5. おわりに

 (1) 『緑色の鉱物』
      石友・Kさんからいただいた「朝日トンネル産弗素燐灰石」に始まり、「茂倉沢鉱山の鈴
     木石」、そして「GWミネラル・ウオッチングの糸魚川産翡翠」と『緑色の鉱物』シリーズだ
     った。
      波の穏やかな糸魚川の海岸をノンビリと歩きながら「翡翠」を探していると、日ごろの雑
     事を忘れ、そのうえ美味しい「タラ汁」定食を食べ、身心ともにリフレッシュできた1日だった。

      GWで思い出したが、恒例の「月遅れGWミネラル・ウオッチング」の計画を練り始めたとこ
     ろだ。今年も、大勢の石友と「湯沼鉱泉」でお会いできるのを楽しみにしている。

6. 参考文献

 1) 茅原 一也:ヒスイ −其謎と輝き−,青海町自然史博物館,平成12年
 2) 宮島 宏:とっておきのヒスイの話 第3版,フォッサマグナミュージアム,2010年
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