2004年春 ひすい探し【ダイジェスト版】

2004年春 ひすい探し【ダイジェスト版】

1.初めに

 2003年11月は我々夫婦の結婚記念の月で、結婚30周年・「真珠婚」の年であった。
 兵庫県に住む石友・Nさんご夫妻に四国と兵庫県の鉱物産地と観光名所を案内して
いただき、鉱物採集だけでなく、観光も十分堪能でき、妻にとって、記念となる
「真珠婚」だったようです。
 千葉県の石友・Oさんからは、35周年の「ヒスイ婚」、40周年の「サファイア婚」を
目指すようにと、励ましのお言葉をいただいていた。
 結婚したのがほぼ同じ時期のNさんご夫妻と、春になったら、一足早い「ヒスイ婚」の
ひすい探しをご一緒しましょう、と約束していた。
 3月の最終土・日に1泊2日でNさんご夫妻の案内で「ひすい探し」を堪能し
ヒスイ、軟玉(ネフライト)そして「キツネ石」を始めとするひすいもどきの石を
採集できた。(採集していただいた。)
 宿泊した「宮崎鉱泉別館」は、眼の前がひすい海岸で、採集会恒例となっている
『朝飯前のひすい探し』も楽しんだ。
 案内していただいたNさんご夫妻に、御礼申し上げます。
(2004年3月採集)

2.【いざ、出発!!】

 役所の人事異動にともなう送別会のあと、急いで帰宅し、21:30に自宅を出発する。
甲府から塩尻まで国道20号線を走り、中央道にのり、豊科ICでおり、糸魚川を目指す。
 大町市の手前から小雪がチラツキはじめたが、暖かいせいか路面は濡れているだけで
凍結していない。
 0時30分過ぎに、「道の駅小谷(おたり)」に到着し、車中泊。

3.【いざ、ひすい峡へ】

(1)「親不知ピアパーク」に集合
   翌朝、4時に起床、姫川沿いに下り、糸魚川市を抜け、集合場所の親不知IC近くの
  「親不知ピアパーク」に5時前に到着。集合時間まで間があるので、しばし仮眠。
   約束の時間よりやや早く、Nさんご夫妻がきた。挨拶もそこそこに、出発。

(2)産地T
   国道9号線を南下。T海岸にて採集する。既に採集に来ている人の服装・装備をみると
  地元の年季の入った人と見受けられる。
   海岸を行き来しながら、目を皿のようにして「緑色のひすい」を探すが、ない。
  かろうじて、「軟玉」を何個か採集

   産地T

(3)産地S
   この日は暖かで、うまくすれば「金山谷」まで行けるのではないかと期待して青海川
  沿いに登る。橋立ひすい峡の手前に雪の吹き溜まりがあり、行くか戻るか躊躇していると
  すれ違った地元の人の話では、橋立ひすい峡から先は、雪で通れないとのこと。
   仕方なく、Uターンし、産地Sを案内していただく。

   産地S

  ここでは、「四国の五良津か?」と錯覚する「透緑閃石」の柱状結晶塊を採集。
   さらに、緑色鮮やかな「含ニッケル・クロム白雲母」脈が走った「キツネ石」の
  大きな塊を珍しいものと思い込み、ハンマーとタガネで掻き取った。
   後で、冷静になって考えると、既に『キツネに化かされていた』状態

   Nさんの奥さんが採集したひすい塊をいただく。

(4)産地O
   青海川河口に戻り採集。ここは、15年近く前、金沢への出張途中、背広、革靴で採集した
  思い出の場所。その当時は、海岸にテトラポットが全くなく、長い海岸線を行ったり来り
  しながら探し、結局白色ひすいの大塊を地元の人にいただいた記憶がある。
   われわれが引き上げようとすると、ここでも、本格的な井手達の地元の人がきた。
  「ひすいを見る(買う)かい?」と自分の車に案内してくれた。地元の人、と思いきや
  M県ナンバーの車から取り出した、採集したというヒスイを見せていただく。
   翌日のこの時間だったら、間違いなく買っていたが、このときは自力採集に夢を繋いで
   いたので、見せていただいただけ。

4.【ひすいラーメンで腹ごしらえ】

  国道9号線沿いに「ひすいラーメン」と看板がでているので、昼食に食べて見ることにした。
  「ひすいラーメン」は本物のひすいがトッピングされている筈だ、とか”グリーンピース”だ
  と言っている間に出てきたのは、ごく普通のラーメンにしか見えない。
   麺を見たNさんが、「緑色の麺だ!!」。これが、ひすいラーメンの正体でした。
   緑色は、ほうれん草を裏ごしして麺に練り込んだものとかで、身体には良さそうです。

5.【青海町自然史博物館】

   静岡県の石友・Yさんから「自然史博物館」のことは聞いてはいたが、今回案内していただき
  初めて訪れた。「青海を知れば、日本が見える」をキャッチフレーズに、地方の博物館ながら
  町ぐるみで健闘している様子がわかります。

   青海町自然史博物館

   博物館入口には、巨大なひすいが展示されています。もともと、このひすいは橋立ヒスイ峡に
  あったものを”盗掘を免れるため”ここに移設されたと、案内にあります。
   緑色とラベンダー色の鮮やかな部分には、盗掘者が付けたと思われる”タガネ”跡が残って
  いる。

       
       Nさんご夫妻と       ヒスイ拡大【盗掘のタガネ跡】
               青海町自然史博物館前

   鉱物ファンにとって、ここの展示の目玉は、「ヒスイ」と「青海を特徴づける鉱物」の
  コーナーで「青海石」「ストロンチオ斜方ジョアキン石」「コランダム」そして「橋立金山の
  金鉱石」などが展示してあります。

   橋立金鉱石

   博物館の裏手は、「岩石園」として、石灰岩、ヒスイ輝石、蛇紋岩など、青海町内に
  見られるほぼ全ての種類の岩石をほぼ実際の分布どおりに配置してあります。

   岩石園

6.【宮崎鉱泉別館の夜は深けて】

(1)宮崎ひすい海岸
    宮崎ひすい海岸に到着し、「ホテルN」前を中心に、採集する。海岸を何往復か
   しながら、只管探すが、私は「軟玉(ネフライト)」だけが目につく。
    妻は、Nさんの奥さんに手ほどきを受け、”ひすいの感触”を体得したらしく
   折り紙つきのひすいを自力でゲット?!。
    夕日が傾きかけた頃、朝早くからの活動で疲れた私の顔には『宿舎に行きたい』と
   書いてあるのを、Nさんが察してくれ、今日はここまでとなった。
    我々が宿舎に着いて、窓の外を眺めると、未だ家族連れがひすい探しをしていた。

   産地M【ひすい探しの家族連れ】

(2)宮崎鉱泉別館の夕食
    別館と言うからには、「本館は?」と尋ねると、今でも銭湯をやっているとのこと。
   夏には、海水浴の客でごった返すらしいが、この時期は、客も少なく、”貸切”状態。
    最上階4Fにある浴室からは、日本海が見渡せ、鉄分を含む熱めの風呂に浸ると
   この日一日の疲れも吹き飛ぶ。
    夕食は、「カニ」「タラの煮付け」「ブリの照り焼き」「刺身」「カレイのから揚げ」
   そして宮崎鉱泉自慢の”タラ汁”と日本海の幸が目白押し。

       
       夕食の膳          夕食風景【撮影:Nさん】
             宮崎鉱泉別館の夕食

(3)宮崎鉱泉別館の夜は深けて
    食後にもう一風呂浴びると、お腹も一杯、昨夜からの疲れで21時過ぎに”バタン、Q"
   海岸に寄せては返す日本海の荒波が、子守唄代わりでした。

7.【宮崎海岸の朝は早い】

(1)早朝のひすい探し
    採集に行く前にインターネットの「潮見表」で宮崎海岸の干潮時間を調べておいた。

   採集日の潮見表

   できるだけ早いほうが良さそうなので、いまや遅し、と5時過ぎに起床。夜が明けるのを
  待ち兼ねて、海岸に出ると、既に大勢出ている。

   早朝のひすい探し

   長い海岸線を端まで行けず、途中で引き返すが、それでも、宿に戻ったのは朝食を予約した
  8時を大きく回った、9時近くであった。
   この日も、私は、「軟玉(ネフライト)」ばかりだったが、「琅かん」を思わせる
  緑色の小さな塊を採集した。

(2)宮崎鉱泉の朝食
    早朝から3時間のひすい探しで、お腹も空いて、出されたものを全ていただいた。

   朝食風景

     

8.【糸魚川でのひすい探し】

(1)糸魚川物産センター(?)
    糸魚川駅前の「糸魚川物産センター(?)」で、ひすい、地酒、海産物などのお土産品を
   物色する。
    ここではひすい以外に「薬石」と称する、斑レイ岩を結構良い値段で売っている。
   Nさんご夫妻によれば、これから案内していただく産地では、嫌というほど採集できるとのこと。

(2)産地K
    ここには、「薬石」がアチコチに落ちている。しかし、ひすいを探すのは、「大海から針1本」を
   探すのに似ている。

   産地K

    ここで、Nさんご夫妻とひとまずお別れした。

(3)産地H
    甲府に帰るべく、姫川に沿って松本に向かう、途中で「兵庫ナンバー」の見慣れた車が
   道端に駐車してある。付近を見渡すと、Nさんご夫妻がひすい探しの最中。我々も再び
   合流する。
    ひすいの大塊(重さ500kg以上)を前に、記念写真だけ撮り、ここでお別れする。

   産地H

9.おわりに

(1)一足早い「ひすい婚」でしたが、絵に描いたような緑色のひすいは、なかなか採集
   できなかった。
    それでも、Nさんの奥さんが採集した「ラベンダーひすい」と「緑ひすい」を戴いたり
   「琅かん(?)」を思わせる緑色・半透明の塊や多数の「軟玉(ネフライト)」を
   採集できた。
    案内していただいたNさんご夫妻に改めて感謝申し上げます。
(2)宮崎鉱泉社長のお話では、海が荒れた3月初めに、宿泊客が良品を採集した、とのことで
   ひすい探しは、海が荒れる季節が良いようです。
(3)今回の採集(頂戴)品を掲載します。

       
         ラベンダー              緑

       
         琅かん(?)          軟玉(ネフライト)
                今回の採集(頂戴)品

10.参考文献

1)茅原 一也:ヒスイ-その謎と輝き-,青海町自然史博物館,平成12年
2)小野 健:青海 4億年の大地,青海町,平成8年
3)ヒスイ文化フォーラム委員会編:ヒスイ文化フォーラム,同委員会,2003年
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