岐阜県中津川市鉱物博物館 第10回企画展 「長島鉱物コレクションと蛭川の鉱物」

       岐阜県中津川市鉱物博物館 第10回企画展
          「長島鉱物コレクションと蛭川の鉱物」

1. 初めに

   2006年11月、ミネラルウオッチング納めの一環で、岐阜県苗木地方に行った。本
  格的なミネラルウオッチングを翌日に控え、夕方近くに中津川市鉱物博物館を訪れ
  た。
   今回訪問の目的は、2006年10月3日〜2007年2月4日(日曜日)まで開催されてい
  る、「長島鉱物鉱物コレクションと蛭川の鉱物」と題する『第10回 企画展 』を
  観覧することにあった。

   日本希元素鉱物の草分け的存在の長島 乙吉氏が採集した標本の多くが乙吉氏ゆ
  かりの地に寄贈された。「弘三石」などに名前を残している子息・弘三氏がそれらを
  再度鑑定し、展示には万全を尽くした、と聞いている。

   @ 岐阜県中津川市
   A 岐阜県立中津川高校
   B 岐阜県蛭川村(現在中津川市)「紅岩山荘」

   @、Aは、中津川市に設立された「中津川鉱物博物館」に集められ、展示されて
  いる。
   3年ほど前、Bを見たくて「紅岩山荘」脇の鉱物展示館をのぞくと、ガラスケース
  だけが埃をかぶっている状態だった。中の標本は、中津川鉱物博物館に運ばれたとの
  ことで、館に問い合わせすると整理が終わるまで後1年はかかりそうだ、と聞いた。
   それから3年近くが経ち、このたびようやく展示される運びとなった。

   「希元素鉱物」が中心で、派手さはないが、1つ1つの標本に、乙吉氏が”草鞋
  (わらじ)履き”で国内のみならず、中国、朝鮮、台湾にまで足をのばして採集し
   た苦労の跡が残されており、一度観覧するのをお勧めする。

    展示図録も発行されるとのことなので、開催している間に、もう一度訪れたい
   と考えている。
  ( 2006年11月訪問 )

2. 場所

   中津川市夜明けの森 高峰湖の北側にあり、苗木地方を代表する鉱物の”水晶”を
  イメージした六角柱ガラス張りのエントランスが印象的である。

    中津川市鉱物博物館【2005年12月】

3. 展示内容

 3.1 企画展 「長島鉱物コレクションと蛭川の鉱物」
     長島乙吉氏が採集した標本を中心に展示している。その内訳は次の通りであ
    る。
     旧蛭川村、つまり「紅岩山荘」にかつて展示されていた標本が約半分を占めて
    いる。

区分展示標本数登録番号備 考
長島鉱物コレクション93EA66N〜  
旧蛭川村標本86EA66NC〜「紅岩山荘」展示標本

     「紅岩山荘」に展示されていたものは見たことがなく、それらの中から私が
    注目した標本をご紹介する。

鉱物名
(英語名)
産地登録番号備 考
褐簾石
(Allanite-(Ce))
山梨県大菩薩峠EA66NC0576山梨県産
ベスブ石
(Vesuvianite)
福島県長久木(矢塚)EA66NC0274益富地学会館監修
「日本の鉱物」に
記載標本と同じ産地
カリ長石
”アマゾナイト”
(Amazonite)
長野県田立ヤンゾレEA66NC0359「日本希元素鉱物」に
”ヤンゾレ”とある
菱マンガン鉱
(Rhodochrosite)
長野県波田町竜島鉱山EA66NC0161ここの菱マンガン鉱は
”クトナホラ石”
【Kutnohorite:CaMn(CO3)2
の可能性もある
燐灰ウラン石
(Autunite)
山口県柳井市石井EA66NC0371訪れたが採集できなかった
残念な産地

     結晶形が立派、色が綺麗、といった万人好みの標本はほとんどなく、黒褐色
    皮膜〜塊状の標本が主体で、これから”鉱物をはじめよう”という人向きでは
    ない。
     ある程度”鉱物を経験した人”にとっては、今まで追い求めていた世界と違
    った世界があることを知る良い機会となるだろう。

 3.2 常設展示
     2005年、パンニングによって希元素鉱物をアチコチで採集した。改めて常設
    展示を見直してみた。
     ここには、次の3つのコーナーがある。

    (1)日本の3大ペグマタイト鉱物産地である苗木地方の鉱物
    (2)希元素鉱物の研究で著名な長島コレクション
    (3)世界の鉱物

      長島父子の展示コーナ

     手で触れたり、紫外線での蛍光実験、希元素鉱物の放射能強度測定など
    体験を通して、岩石や鉱物をより身近に感じる工夫もなされている。

     
        放射能強度測定器
        【苗木石、フェルグソン石、モナズ石、ウラノトール石の4種】

4.おわりに

 (1) 私たち夫婦が訪れた時、見学者は私達だけで、貸切状態だった。改めて常設
    展示を見回してみると、苗木地方で採集された各種の鉱物の立派な標本が展示
    してあるのに気付く。

 (2) 2005年暮れ、ここで見た長島 乙吉氏ゆかりの「苗木石」や「サファイア」
    などがきっかけで、2006年には、「苗木石」「サファイア」を自分の手で採集
    できた。
     このように、鉱物展示を見て、現物と産状をシッカリと頭に叩き込んで産地
    に臨むと効果が大きいような気がする。

 (3) 常設展示、特別展示ともに一見の価値があり、この方面にお出かけの折には
    立寄られることをお奨めする。

5.参考文献

 1)長島乙吉、弘三:日本希元素鉱物,日本鉱物趣味の会,1960年
 2)中津川鉱物博物館:第10回企画展 長島鉱物コレクションと蛭川の鉱物
            展示標本一覧,同館,2006年
 3)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
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