日本希元素鉱物の草分け的存在の長島 乙吉氏が採集した標本の多くが乙吉氏ゆ
かりの地に寄贈された。「弘三石」などに名前を残している子息・弘三氏がそれらを
再度鑑定し、展示には万全を尽くした、と聞いている。
@ 岐阜県中津川市
A 岐阜県立中津川高校
B 岐阜県蛭川村(現在中津川市)「紅岩山荘」
@、Aは、中津川市に設立された「中津川鉱物博物館」に集められ、展示されて
いる。
3年ほど前、Bを見たくて「紅岩山荘」脇の鉱物展示館をのぞくと、ガラスケース
だけが埃をかぶっている状態だった。中の標本は、中津川鉱物博物館に運ばれたとの
ことで、館に問い合わせすると整理が終わるまで後1年はかかりそうだ、と聞いた。
それから3年近くが経ち、このたびようやく展示される運びとなった。
「希元素鉱物」が中心で、派手さはないが、1つ1つの標本に、乙吉氏が”草鞋
(わらじ)履き”で国内のみならず、中国、朝鮮、台湾にまで足をのばして採集し
た苦労の跡が残されており、一度観覧するのをお勧めする。
展示図録も発行されるとのことなので、開催している間に、もう一度訪れたい
と考えている。
( 2006年11月訪問 )
区分 | 展示標本数 | 登録番号 | 備 考 | 長島鉱物コレクション | 93 | EA66N〜 | 旧蛭川村標本 | 86 | EA66NC〜 | 「紅岩山荘」展示標本 |
「紅岩山荘」に展示されていたものは見たことがなく、それらの中から私が
注目した標本をご紹介する。
鉱物名 (英語名) | 産地 | 登録番号 | 備 考 | 褐簾石 (Allanite-(Ce)) | 山梨県大菩薩峠 | EA66NC0576 | 山梨県産 | ベスブ石 (Vesuvianite) | 福島県長久木(矢塚) | EA66NC0274 | 益富地学会館監修 「日本の鉱物」に 記載標本と同じ産地 |
カリ長石 ”アマゾナイト” (Amazonite) | 長野県田立ヤンゾレ | EA66NC0359 | 「日本希元素鉱物」に ”ヤンゾレ”とある |
菱マンガン鉱 (Rhodochrosite) | 長野県波田町竜島鉱山 | EA66NC0161 | ここの菱マンガン鉱は ”クトナホラ石” 【Kutnohorite:CaMn(CO3)2】 の可能性もある |
燐灰ウラン石 (Autunite) | 山口県柳井市石井 | EA66NC0371 | 訪れたが採集できなかった 残念な産地 |
結晶形が立派、色が綺麗、といった万人好みの標本はほとんどなく、黒褐色
皮膜〜塊状の標本が主体で、これから”鉱物をはじめよう”という人向きでは
ない。
ある程度”鉱物を経験した人”にとっては、今まで追い求めていた世界と違
った世界があることを知る良い機会となるだろう。
3.2 常設展示
2005年、パンニングによって希元素鉱物をアチコチで採集した。改めて常設
展示を見直してみた。
ここには、次の3つのコーナーがある。
(1)日本の3大ペグマタイト鉱物産地である苗木地方の鉱物
(2)希元素鉱物の研究で著名な長島コレクション
(3)世界の鉱物
手で触れたり、紫外線での蛍光実験、希元素鉱物の放射能強度測定など
体験を通して、岩石や鉱物をより身近に感じる工夫もなされている。
(2) 2005年暮れ、ここで見た長島 乙吉氏ゆかりの「苗木石」や「サファイア」
などがきっかけで、2006年には、「苗木石」「サファイア」を自分の手で採集
できた。
このように、鉱物展示を見て、現物と産状をシッカリと頭に叩き込んで産地
に臨むと効果が大きいような気がする。
(3) 常設展示、特別展示ともに一見の価値があり、この方面にお出かけの折には
立寄られることをお奨めする。