岐阜県柿野東洞の灰鉄輝石と緑水晶

岐阜県柿野東洞の灰鉄輝石と緑水晶

1.初めに

加藤・松原・野村先生共著の「鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-」に
「岐阜市北方の接触鉱床とスカルン鉱物」の章があり、その中に、
『柿野東洞の集落から山をかなり登ったところで、灰鉄輝石の美晶が多産し
「菊寿石」として採掘している。
これに伴って、草入水晶や磁硫鉄鉱も産出する。』とある。
洞戸鉱山の後、ここを訪れたところ、灰鉄輝石の採掘は既に休止しているようですが
磁硫鉄鉱を噛んだ「菊寿石」の名に相応しい灰鉄輝石の美晶と小さな緑水晶を
採集できた。
しかし、この産地はヒルが多く、訪れる時期を選ぶ必要があります。
(2002年6月採集)

2.産地

美山町を柿野川が流れており、この支流(東洞谷から流れてくる)沿いに
東洞に向かって走ると集落の手前、谷の反対側に墓地があり、欄干のない橋が
かかっている。
この橋の手前に2台くらい駐車できるスペースがあり、ここに車をとめ
墓の真ん中を登っていき、沢を遡上する。約150m登ると、右上に、物置
(鉱山の施設だった?)のような建物が2棟あるあたりから上流が灰鉄輝石の
産地です。
東洞のズリ

3.産状と採集方法

ここも、洞戸鉱山と同じように、古生代の粘板岩、砂岩、チャート石灰岩と
これらを石英斑岩が貫く典型的なスカルン鉱床です。
沢の転石を叩いて、採集します。

4.産出鉱物

(1)灰鉄輝石【Hedenbergite:Ca(Mg,Fe)Si2O6】
緑黒色をした針状結晶の放射状集合体として、産出します。母岩の方解石の中に
灰鉄輝石の透明結晶が含まれています。塩酸で方解石を溶かせば、綺麗な結晶が出て
きます。雨水などで方解石が溶け、灰鉄輝石の結晶が出ている標本もあります。
磁硫鉄鉱を伴う、灰鉄輝石もあります。

左:灰鉄輝石結晶       右:菊寿石【磁硫鉄鉱と共生】
(2)草入水晶【Rock Crystal includig Hedenbergite:SiO2】
灰鉄輝石の集合体が取り込まれた(残った?)石英の部分があり、その晶洞部分に
緑色の草入水晶がある。
緑色に色づいている原因は、灰鉄輝石の針状結晶です。
草入水晶

5.おわりに

(1)「日本鉱産誌」によれば、この近くに柿野鉱山(金城鉱山)や
新柿野鉱山があり、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱などを採掘した。
柿野鉱山は、銀が370〜540g/tと、高い品位だったようですが、輝銀鉱などの
銀鉱石の記述が見られませんので、これらの銀は方鉛鉱や閃亜鉛鉱などに含まれていた
と考えられます。
今回は、猛烈なヒルに襲われ、日没が迫っていたこともあり、柿野鉱山(金城鉱山)と
新柿野鉱山は、未探査で、次回の楽しみです。
(2)今回採集した緑水晶は5mmサイズでした。どのくらい大きなものまであるのか
これも次回の楽しみです。

6.参考文献

1)加藤昭、松原聡、野村松光共著:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-,築地書館,1982年
2)日本鉱産誌編纂委員会編:日本鉱産誌 T-b(銅・鉛・亜鉛),東京地学協会,昭和31年
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