このときのミネラル・ウオッチングの目的は「ゾノトラ石」を初めとする炭酸塩
鉱物だった。千葉県の石友・Yさんの情報では、『 運が良ければ、ゾノトラ石
【XONOTLITE:Ca6Si6O17(OH)2】が見つかるかも知れない 』、とあり
密かに闘志を燃やしていた。
しかし、このとき、「肉眼サイズの自然銅」という ”瓢箪から駒” が飛び出し、
「ゾノトラ石」は次回のお楽しみ、となった。
2008年3月、満を持して、2回目の「平久里」ミネラル・ウオッチング行となった。
6時前にマンションを出発、すぐ京葉道路にのり、「市原SA」で60歳以上シルバー
割引の”朝食バイキング”をシッカリ食べ、9時前には「平久里」に到着した。
何となく、匂いがする斑レイ岩の露頭を叩くと、いきなり「細かい針状」結晶が
密集した鉱物が飛び出した。ルーペで確認すると、加藤・松原両先生の「鉱物
採集の旅 東京周辺を訪ねて」にある写真そっくりの『ゾノトラ石 』だった。
あまりのあっけなさに、拍子抜けした。この近くの蛇紋岩からは、美しい「霰石」が
さらに近くの露頭では「方沸石」など未だ入手できていなかった鉱物種も採集できた。
女性や小学生でも安全な場所なので、次回のミネラル・ウオッチングの候補地の
1つになれそうだ。
貴重な文献「千葉県の鉱物」を恵与いただいたMさん、産地情報をいただいた
Yさんに厚く御礼申し上げます。
( 2008年3月採集 )
B沢
産地
加藤、松原両の先生の ” Xonotlite from Heguri ”には、平久里で観察できた
結晶図が掲載してあるので、引用させていただく。
先端が尖ったものと平坦なものの大別して2種類、細分すれば3種類ある
ようだ。
(2) 霰石【ARAGONITE:CaCO3】
蛇紋岩のヒビ割れ面に、透明〜白色、薄長板状結晶が”花びら状”に集合
した標本が得られた。
今まで千葉県で採集した霰石の中で一番美しいもので、女性に好まれそうだ。
(3) 方沸石【ANALCIME:NaAlSi2O2・H2O】
透明、石榴石のような偏稜24面体結晶で玄武岩質凝灰岩の中に脈として
見られ、脈の空隙には、写真のような径3mm程度の自形結晶の集合が見ら
れる。
屈折率が高く、”キラキラ”輝くので、晴れた日には数メートル離れた場所
からでも気づく。
(4) 方解石【CALCITE:CaCO3】
2005年12月、池袋のミネラルショーで加藤先生の講演を聴き、その内容を
普通、鉱物の化学式は単純な整数で表現できるが、ローゼンハーン石は
ひょっとして、平久里でもローゼンハーン石が、と期待しているのだが、岡山
(2) 千葉の鉱物産地
まだまだ、訪れてみたい産地、探してみたい鉱物種が残っており、単身不倫
ページュ色、不透明で稜が融けて丸みを帯びた”犬牙状”結晶が斑レイ岩の
空隙の中に見られる。
周辺にある”針状”結晶は、「ゾノトラ石」と思われる。
方解石
5. おわりに
(1) ゾノトラ石とローゼンハーン石
私のHPに「同質異像鉱物」なる1ページがある。
( Polymorphism Minerals , Tokyo )
まとめたものである。
「準同質異像鉱物」の章で、現在では全く別な組成とわかっているゾノトラ石
とローゼンハーン石が分析精度が低い時代に、同じ成分で結晶系が違う「同質
異像」と間違われていたようだ。
【ROSENHAHNITE:Ca3Si3O8((OH)2-4xOx(CO3)x)】と方程式のようになって
いる。
県布賀のような『高温スカルン』と呼ばれる条件でないと難しいようだ。
千葉に単身赴任して、1ヶ月半が過ぎた。あちこちの産地を回って、行くたびに
新しい鉱物種や産状の標本が採集できる素晴らしい場所だ。
『石(鉱物)なし県』、と名付けた人はよほど眼力がなかったのだろう。
でなくて単身赴任はタップリ楽しめそうだ。
6. 参考文献
1) Akira Kato and Satoshi Matsubara: Xonotlite from Heguri , Chiba Pref. , Japan
National Science Museum , 1975
2) 加藤 昭、松原 聰:鉱物採集の旅 東京周辺をたずねて,築地書館,1982年
3) 松原 聰:関東地方の鉱物,鉱物情報100号記念出版物企画委員会
池田重夫技官退官記念会,平成10年
4) 千葉県立中央博物館編纂:千葉県の鉱物,同館,2000年
5) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年