技術コンサルタントとして招請をいただき千葉県に単身赴任して3ケ月が過ぎようと
している。
「石(鉱物)なし県」と言われた千葉県でも、各種の興味深い鉱物があり、中には
『平久里の肉眼サイズ自然銅、赤銅鉱』そして『水晶』など、この3ケ月のミネラル・
ウオッチングで、千葉県として初めてになる新しい発見もあった。
2008年3月、奇石・珍石の「へそ石」を採集し、HPに掲載したところ、長野県川上村の
マル秘の産地に着いて驚いた。地形が一変しているのだ。最初、ここを発見したとき
これが、冒頭に『 いつまでもあると思うな産地と鉱物 』、と書いた理由である。
ただ、20名程度が十分に楽しめる脈は確保してあるので、秋のミネラル・ウオッチング
「新産地の自然銅」なので、貴重なものだと思い、何人かの石友に差し上げた。
輝緑凝灰岩【Schalstein】は、安山岩・玄武岩・ひん岩などの火山灰が固化した岩石
言われてみれば、塊状で境界(表面)は赤っぽい。割ると緻密な部分は硬いが
採集方法は、塊状のものをハンマで割って破断面を観察する。破断面に勢い良
『平久里の肉眼サイズ自然銅、赤銅鉱』の産地は、千葉県として初めての
それだけ、この産地は専門的な調査が済むまで、大切にすべきと考えている。
それまで、『 産地に封印 』である。
(2) 岩石と鉱物
平久里で偶然会ったSさんに「輝緑凝灰岩」だろうと教えていただき、改めて「鉱物
大勢の人々に支えられている幸せを改めて感じている。
( COPPER from Heguri , Tomiyama Town , Chiba Pref. )
( COPPER from Heguri - Part 2 - , Tomiyama Town , Chiba Pref. )
湯沼鉱泉社長が「へそ石」をいたく気に入り、リクエストがあったので、翌週再び訪れる
ことにした。
「へそ石」だけでは詰まらないので、”月遅れGWミネラル・ウオッチング”の”玉手箱”
や”オークション”に出品する「自然銅」も採集する予定だった。
出会った地元の方が「◎◎◎がこの辺りを採掘する予定になっている」、と聞いてはい
たのだが、こんなに早いとは思わなかった。
かろうじて残っていた脈を追いかけ、何とか”玉手箱”と”オークション”に出品する
分は確保した。
の候補地として”ソ〜ッ”としておくことにする。(夏の房総は交通渋滞でダメらしい)
( 2008年2月採集 3月再訪 4月再々訪 )
2. 産地
千葉県富山町平久里は、館山自動車道「鋸南富山IC」でおり、10kmほどで
産地に到着する。
産地は、『平久里』としてあるが、正式には『△△』である。
3. 産状と採集方法
「関東地方の鉱物」には、『 はんれい岩ペグマタイトの斜長石中に極微粒と
して産する. 』 、とある。
その1人、千葉県のSさんから、『 母岩は「蛇紋岩」や「かんらん岩」ではなく、「輝緑
凝灰岩」だろう 』、とのメールをいただいた。
で、古生代や中生代の地層中に出る。普通緑色だが赤色のこともある。塊状、層状
そして剥状のものもある、と「鉱物岩石検索図鑑」にある。
ハンマの一撃で平面状に簡単に割れたり、曲面に沿って”玉ねぎ状”に剥げる部分
もある。
く息を吹きかけ破砕時の粉を飛ばすと、晴れた日なら、肉眼でも”赤銅色”の自然銅
が見つかることがある。
( 肉眼で見えないものは、採集しても・・・・・・・・・ )
1箇所見つかったら、その塊を小割りすると、もっとコンディションの良い標本を
得ることができる。
何回かやっている内に、自然銅がきそうな母岩の特徴がわかってくるはずだ。
4. 産出鉱物
(1) 自然銅【COPPER:Cu】
一様に”赤銅色”、薄い箔状〜粒状で観察できる。ただ、産状にはいろ
いろあるので、まとめておく。
No 産 状 説 明 採 集 標 本 備 考
1 凝灰岩の中
凝灰岩の中に箔状で
産するもっとも多い産状
2 班晶に伴う
班晶(最大5mm)の中や
隣接して箔状で産する班晶は、
「カンラン石」(?)3 脈に伴う
凝灰岩を切るガラス質
(石英?)脈に産する脈幅最大1mm
4
炭酸塩鉱物に伴う
塊の境界を埋める
白色方解石あるいは
ペクトライト脈に産する
方解石に伴う
ペクトライトに伴う
4 ぶどう石に伴う
塊の境界を埋める
ぶどう石の中に
産する
5. おわりに
(1) 『 産地に封印 』
技術コンサルタントとして招請をいただき千葉県に単身赴任したとき、悲壮な(?)
決意 『 ハンマに封印 』だ、と親しい石友にお知らせしたが、今になって思い返すと
封印したのは、『 マイナス一週間 』、だった。
つまり、正式赴任の2月1日より、一週間前に千葉県でのミネラル・ウオッチングを
存分に楽しんでいたことになる。
新しい発見だろう。
具体的には、「千葉県立中央博物館」への標本寄贈などで、貴重なものと判断
されれば、その調査が済んでからミネラル・ウオッチングを開催したいと考えてい
る。
この産地の自然銅の母岩がわからなかった。見た目、「カンラン岩」や「蛇紋岩」に
似ており、判断がつかず、二転三転した。
岩石検索図鑑」を読み直した次第だ。
この図鑑は、2007年3月まで単身赴任していた茨城県ひたちなか市の古書店主
Oさんが2008年2月に贈ってくれたものだ。
6. 参考文献
1) 柴田 秀賢、須藤 俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和39年
2) 益富 寿之助:原色岩石図鑑,保育社,昭和40年
3) 加藤 昭、松原 聰:鉱物採集の旅 東京周辺をたずねて,築地書館,1982年
4) 松原 聰:関東地方の鉱物,鉱物情報100号記念出版物企画委員会
池田重夫技官退官記念会,平成10年
5) 加藤 昭:二次鉱物読本,関東鉱物同好会,2000年
6) 千葉県立中央博物館編纂:千葉県の鉱物,同館,2000年
7) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年