茨城県長谷鉱山の鉱物

茨城県長谷鉱山の鉱物

1.初めに

茨城県常陸太田市の長谷鉱山では、自形結晶をした磁鉄鉱が産出する事で
有名です。
 平成13年の鉱物同志会の新年会バザーに、2cmを超える自形結晶を某氏が
出品し、皆の垂涎の的でした。
 また、最近「ペグマタイト」に掲載されたように、板チタン石やルチルが採集できる
との情報があり、日立鉱山の帰りに訪れた。
 平成11年3月28日に「鉱物同志会」の採集会が開催されたとき以来、3年ぶりに
訪れ、産地の変貌ぶりにまず驚かされましたが、ルチル、磁鉄鉱、真珠雲母など、
この産地の代表的な鉱物を採集できましたので、報告します。
(2002年2月採集)

2.産地

茨城県常陸太田市手前で国道349号線のバイパスに入り、これを北上し、「真弓」
の表示のある信号の次の信号で右折し、里川を渡り、長谷の集落に入る。
鉱山の入り口には、営林署のチエーンが張られ、車では進入できない事が多く、ここから
約1km歩くと、右手に長谷鉱山の露頭が見えます。
3年前には、採石場の中段より下に苦灰石や蛇紋岩の垂直の壁の露頭が所々に残っていた
のですが、植生工事のためか、全体がなだらかな斜面になって、ほとんどの露頭やズリ石が
姿を消しています。しかし、逆に、頂上付近には、新たに大きな苦灰石と磁鉄鉱の露頭が
でているところもあります。

左:長谷鉱山採集参加者 右:苦灰石露頭と”博士”
【Yさんご一家とMさん】

3.産状と採集方法

長谷鉱山は、蛇紋岩に伴う鉱脈から農薬に混ぜる滑石を採掘していたと聞いていますが、
現在は稼動してる気配がありません。
緑泥片岩に挟まれた苦灰石や灰簾石の露頭や転石から、磁鉄鉱、金紅石(ルチル)、チタン鉄鉱
などを採集する。小さな鉱物が多いので、ルーペが欠かせません。
3年前には、ベンチカットの中段部に集中して金紅石(ルチル)、チタン鉄鉱などが採集できた。

4.産出鉱物

(1)磁鉄鉱【Magnetite:Fe2O4】
緑泥片岩の中に、良く知られた八面体の結晶のほかに、塊状のものも産出する。
チタン鉄鉱は磁石に付かないが、磁鉄鉱は、強烈に反応するので、”博士”は、磁石で釣り
上げる作戦でした。この方法は、昨年5月連休の梓鉱山採集会で、Oさんの娘さんがやって
いたのを真似たそうです。
磁鉄鉱の母岩は、軟らかいので、金ブラシで擦ると母岩が削れ、磁鉄鉱だけが浮かび
上がってきて、標本が一段と見栄えがします。2cm級はありませんでしたが、1cm弱の
結晶の母岩付きが採れます。

  左:磁鉄鉱   右:磁石で釣り上げる”博士”
(2)金紅石(ルチル)【Rutile:TiO2】
苦灰石の脈や晶洞中の中に、金黄色〜黒の針状結晶をなす。大きさは、長くても5mm程度です。
大きさが、ルーペサイズなので、全く採れない(分からない?)人も多い。
Yさんと”博士”が、白い石を集め、私が割って、ルーペで確認する、分業制で、
1人1ケの標本を確保しました。
平成10年ころ、網目状に結晶が残った標本を見つけたのですが、ルチルとは思わず、
割ってしまいました。「おかしいな」とか「変だな」と思ったらとっておかないと
ダメですね。
  ルチルの針状結晶【5mm】
(3)真珠雲母【Margarite:CaAl2Si2Al2O10(OH)2】
灰緑色で硬い(ひすいのように、靭性が高く割りにくい)灰廉石の表面にある雲母で、
ここで産出する雲母はすべて真珠雲母 と思って、間違いないそうです。
真珠雲母
(4)滑石【Talc:Mg3Si4O10(OH)2】
雲母状の緑色で産出。すべすべした触感とモース硬度1と柔らかく、爪で簡単に
キズがつくのが特徴です。
滑石
(5)曹長石【Albite:NaAlSi3O8】
ペグマタイト産地では、珍しくありませんが、ここで、頭付きの結晶を採集しました。
平成11年の採集会でも、会員の女性の方が採集したと記憶しています。
曹長石
(6)チタン鉄鉱 【Ilmenite:FeTiO3】
緑泥片岩に挟まれた苦灰石、まれに緑泥片岩の中に、真黒で金属光沢をもつ
粒状結晶で産出。結晶面が見える場合もある。
(7)斜灰廉石【Magnetite:Fe2O4】
灰廉石に接して、赤銅色で産出。
(8)菱苦土石
方解石に似た色、形で産出するが、滑石に接しているものは、菱苦土石とみて間違いない。
(9)その他
水晶 、方解石、苦灰石などが産出します。
以前、ここで、黄銅鉱とそれに伴う孔雀石も採集できた。
苦灰石【透明結晶】

5.おわりに 

(1)鉱物採集のスタイルには、「農耕民族」と「狩猟民族」の2つがあるよう
です。
"Mineral Hunter"を自称する私は、前者で、今まで採れたところを中心に、腰を据えて
捜す方です。一方、Mさんは、後者のタイプで、今回もズリのあちこちを探し回って、
新しい露頭を発見してくれました。
皆さんは、どちらですか?
(2)Yさんの奥さんに、「山ボウシ」の枝をとって差し上げたところ、
自宅に飾って下さったと、写真を送っていただきました。
木の実と新芽が同じ枝についており、春が近いことを感じさせられます。
山ボウシ
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