するとすぐに右手に広い土を取った跡が現れた。小Yさんに教えてもらった川上村大深
山(おおみやま)の同じような場所で「普通輝石」、「鉄普通角閃石」を採集したのは既報
の通りである。
似たような地質なので、ひょっとしたら「輝石」が採集できるのではないか、と思い崖の
川上村にも本格的な春が訪れ、桜、梅、杏(あんず)が一斉に花開いていた。古い諺に
ここは崖の表層がめくれるようになっったり、細かく崩れて崩落する。崩れかかった崖
このニュースを石友・小Yさんに知らせたところ、「湯沼鉱泉でも輝石が採れ、社長
次回、湯沼鉱泉を訪れたとき、社長に見せてもらう積りだ。
( AUGITE from Omiyama , Kawakami Village , Nagano Pref. )
下を探すと真っ黒い輝石の結晶が点々と散らばっていて簡単に採集できた。
『 人の行く裏に花あり・・・・ 』、とある。農作業などで地元の人しか通らないような道端
で鉱物標本が採集できるとは、正に諺通りである。
この産地は、山梨県と長野県の境の信州峠と川上村役場を結ぶ幹線道路からは見えない
位置にあるせいか産出報告を目にしたことがなく”ひょっとして新産地??”となった。
川上村には似たような地質の場所は何箇所もあるようなので、この方面を訪れたとき
に新しい産地を開拓してみたい。
( 2009年4月採集 )
2. 産地
湯沼鉱泉方面から川上村役場に向って走り、スパー「ナナーズ」のとろから農免道路に
入る。約1kmも走り前川にかかる橋を渡ってすぐに左折する。
ものの200mも走ると右手に土取り場跡が見えてくる。ここ一帯が産地だ。信州峠と川上村
役場を結ぶ幹線道路からは見えない位置にあるので、ここで「輝石」が採集できることは
あまり知られていないようだ。
「土取り場跡」の産地
3. 産状と採集方法
産地は風化した安山岩、軽石、火山灰が堆積した地層で、縞模様が美しい。火山活動
で吹き飛ばされたか、安山岩から風化して抜け落ちた輝石が特定の層にかたまっている
のが確認できる。
ここでは、数10cm離れた何層かに「輝石」を確認することができ、八ヶ岳の何回かの
噴火で生まれたようだ。
輝石産状
や崩落して堆積した土砂の中からピンセットでつまみ、ビニール袋に回収するのが良い
だろう。
ここも一部はレタス畑の縁にあり、レタス栽培時期は採集しないほうが良いだろう。
表土が溶け、レタス栽培が始まる前の今時分(4月初旬〜中旬)が良いようだ。
4. 産出鉱物
(1) 普通輝石【AUGITE:(Ca,Mg,Fe)2Si2O6】
黒色、輝きが強いガラス光沢の短柱状あるいは長柱状結晶として産出する。結晶の
大きさは大きくても10mm前後で、単晶以外に双晶や複雑な形の貫入双晶も多い。
不思議なことに、大深山ではかなりの比率で見られた「鉄普通角閃石」は全く見ら
れなかった。
輝石
5. おわりに
(1) 川上村の「輝石」
すでに私のHPでもいくつか紹介したように、川上村の多くの場所で「輝石」などが
採集できるようだ。
が丸箱に入れて持っている」 、と教えてくれた。
6. 参考文献
1) 柴田 秀賢、須藤 俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,図鑑の北隆社,昭和48年