茨城県花園山のぺグマタイト鉱物

       茨城県花園山のぺグマタイト鉱物

1. 初めに

   今から5年ほど前、2001年の早春、同じ技術士で千葉県の石友・T氏と那珂ICで落ち合い
  茨城県花園山に向かった。途中、中郷SAで福島県三和町にローズクオーツを探しに行くと
  言う石友・K氏とバッタリ出会い、3人で行くことになった。
   3人とも、何回目かの訪問なので、産出する場所が判っており、鉱山ズリで花園山の代表
  である「紅柱石」と柘榴石などを何個かずつ採集したが、3人とも、「採れなくなった」と
  言うのが実感だった。

   茨城県ひたちなか市にある、最先端半導体工場から技術コンサルタントとしして招請され
  2006年7月に赴任した。
   仕事が軌道に乗るまでは、『ハンマに封印』してという決意で赴任したが、最初の
  1週間の現状分析で、改善策の粗筋が読め、2週間目の週末には骨董市やミネラル・ウオッ
  チングで産地を回る余裕も出てきた。
   「福島県の”飴石”(貝化石中の方解石)」産地を回り、「福島県矢塚の緑簾石」産地を
  回っても、まだ陽は高く、「花園山」を訪れることにした。

   この1年、各地の金銀鉱物産地は無論、苗木地方を始めとするぺグマタイト鉱物産地でも
  パンニングにより、今まで採集できなかった鉱物種を発見できており、花園山でも試してみ
  る積もりであった。
   ズリの土砂を100mほど離れた川まで運び、パンニングして、「鉄コルンブ石」などの
  希元素鉱物のほか「チタン鉄鉱」や「紅柱石」など、花園山を代表する標本を採集できた。
   大きな「白雲母」など子供たちの喜びそうな標本も多い。華々しい鉱物で脚光を浴びる
  ことはないが、まだまだ楽しめる産地です。
  ( 2006年7月採集 )

2. 産地

   常磐道北茨城ICで下り、すぐに左折し、花園の標識に従って進む。水沼ダムの上を通り
  花園神社域に至る。ここまで、約10kmで、信号も少なく、20分程度です。
   私が知っている花園山のポイントは次の3ケ所です。

  (1)花園山登山道脇の鉱山ズリ
  (2)花園神社奥の院の駐車場から川の上流の右岸のペグマタイト脈
  (3)花園神社の駐車場から南西に林道を走った右側のペグマタイト貯鉱場と
     その奥の採掘跡

   今まで、訪れて成果が一番多いのは(1)です。

    花園山のズリ

3. 産状と採集方法

   「茨城の自然をたずねて」によれば、花園神社から西には、竹貫(たかぬき)変成岩が露出
  し、この岩は地下約20kmで高温の変成作用を受けた粗粒の片麻岩である。
   この黒雲母片麻岩が高温・高圧で溶けて紅柱石、柘榴石になった。この鉱山は、セラミッ
  クの原料として花崗岩ペグマタイトの石英や長石を採集したと言われている。以前は、ズリ
  の表面採集でも紅柱石を採集できたが、今回は、ズリの土砂を100mほど離れた川まで運び
  パンニングで採集した。

    パンニング

4. 産出鉱物

 (1)鉄コルンブ石【Ferrocolumbite:FeNb2O6
     黒色、板状結晶の集合体として産する。頭が尖っているのが特徴

     コルンブ石【写真準備中】

 (2)チタン鉄鉱【Ilmenite:FeTiO3
     黒色、板状結晶で産する。鉄コルンブ石や鉄重石と同じような産状だが、弱い磁性がある
    ことで鑑定できる。

     チタン鉄鉱【写真準備中】

 (3)紅柱石【Andalusite:Al2SiO5】
     灰紅色の細柱状結晶が放射状に集合して産出する。紅柱石の回りを紅柱石から変質した白雲母
    が覆っていることが多い。
     コランダムが白雲母に混じっている標本もある。

     紅柱石

 (4)鉄バン柘榴石【Almandine:Fe3Al2(SiO4)3
     真っ黒い偏稜24面体で産出するが、全周完全なものは少なく、また錆びがきているものが
    ほとんどである。
     今回採集した標本の中に、小さいながら、鮮やかな紅色、累帯構造が明瞭に見えるものが
    あった。

     鉄バン柘榴石チタン鉄鉱【写真準備中】

5. おわりに 

 (1) 私の仮住まいから花園山までは、60kmほどで、途中高速道路を使えば1時間余りで到達でき
    ここに赴任中に、何回か訪れてみたい。

 (2) 最近では脚光を浴びることもない地味なペグマタイト鉱物産地だが、「白雲母」などの大き
    な結晶表面採集で発見できる。
     子供たちでも、十分楽しめる産地です。

6. 参考文献

 1)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
 2)        :茨城の自然をたずねて,,
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