滋賀県石部町灰山の鉱物

滋賀県石部町灰山の鉱物

1.初めに

 滋賀県石部町灰山は「ベゼリ石」を初めとする、銅・亜鉛の2次鉱物を多産したことで
有名で、2003年に出版された松原 聰博士の「日本の鉱物」にも、「水亜鉛銅鉱」が
掲載されている。
 妻の希望の京都観光の行きしなに、10年ぶりで訪れたが、産地は大きく変貌しており
「ベゼリ石」の自力採集はできなかった。
 以前、滋賀県の石友Nさんから頂いた、「自形結晶をしたベゼリ石」の貴重なことを改めて
認識した。Nさんのお話では、現在、下のほうを採掘しているので、「ベゼリ石」は当分
難しいだろうとのことである。それでも、「自形結晶をしたブロシャン銅鉱(ラング石?)」を
はじめ、各種の2次鉱物を採集できた。
(2003年9月採集)

2.産地

  灰山は、国鉄草津線石部駅の西、約500mにある。遠くからも、切り立った露頭を
 望むことができ、分かりやすい産地です。

  灰山

3.産状と採集方法

  灰山は、秩父中古生層(チャート、粘板岩、石灰岩)及び花崗岩が”丘”状をなしており
 全体に平坦なこの地域では、目立つ特異な地形を示している。
  灰山は、主に黒灰色と白色の網目状をなす石灰岩からなり、部分的にスカルン鉱床が発達し
 露頭付近では、雨水などの影響で露天化作用が強く、母岩が角礫状に割れ、その隙間には
 黒褐色の酸化鉄〜ヒシンゲル石様鉱物で充たされている。2次鉱物はそれらの表面や空隙に
 生成している。
  灰山という地名は、ここから産出する良質の石灰岩を焼いて、いわゆる”石灰(いしばい)”を
 造ったことに由来するそうです。
  10年ほど前に訪れたときには、採掘は休止状態で、採掘残りのテラス状の場所で
 石灰岩の巨岩の間を”狸堀り”状態に掘って採集していました。今回訪れると、バラス用に
 採掘を再開しており、かつてのテラス部分は、跡形もなく消えていました。
  しかたなく、赤土混じりのズリで、青色、緑色の2次鉱物がついた褐鉄鉱に覆われた石を
 かき集め、早々に退散しました。

4.採集鉱物

(1)水亜鉛銅鉱【Aurichalcite:(Zn,Cu)5(CO3)2(OH)6】
   緑青〜天青色の小さな針状、葉片状の結晶が集合し、小さな球顆状や皮膜状で産する。
   色が濃いものは銅の含有量が多く、白く見えるものは少ないとされている。

  水亜鉛銅鉱

(2)ブロシャン銅鉱【Brochantite:Cu4(SO4)(OH)6】
   ここのブロシャン銅鉱には、双晶をなし、板状結晶の集合体で産するものがある。
  良く似た外観のアントレル石、ポスンジャク石、ローウオルフ石、ラング石か
  肉眼では判別できないので、一応ブロシャン銅鉱とした。

  ブロシャン銅鉱
(3)菱亜鉛鉱【Smithsonite:ZnCO3】
    無色〜淡褐色透明な、微細結晶の集合体で、ぶどう状をなす。

  菱亜鉛鉱

(4)石膏【Gypsum:CaSO4・2H2O】
    ガラス光沢・葉片状結晶の集合体で産出する。

  石膏

(5)玉髄【Agate:SiO2】
    晶洞の中に、小さな玉髄の球が数珠状に連な垂れ下がった、いわゆる”鍾乳石状”で
   産出する。
    表面には、白い皮膜状の鉱物が見られますが、特定できていません。

  玉髄

5. おわりに

(1)現役の採石場は、日々採掘が進み、ある日突然露頭が現れたかと思うと、逆に突然何も
   なくなってしまうことを繰り返します。
   再び、新たな露頭が出現するのを、辛抱強く待つしかなさそうです。

6.参考文献

1)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂,1994年
2)松原 聰:日本の鉱物,学習研究社,2003年
3)岡本 鑑吉,中澤 和雄,太田 稔:滋賀県石部町灰山より産する
                   銅・鉛・亜鉛の次成鉱物,地学研究,1985年
4)岡本 鑑吉,宮脇 律郎,中井 泉:滋賀県灰山産ピータース石,地学研究,1986年
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