福島県御斎所鉱山のマンガン鉱物

福島県御斎所鉱山のマンガン鉱物

1.初めに

福島県御斎所鉱山は、磐城鉱や南部石などマンガン新鉱物を産出し
最近でも、マンガンベルゼリウスなどの希産鉱物を求めて、大勢の鉱物コレクターで
賑わったと聞いている。
マンガン鉱物は、一般に結晶の大きなものが少なく、ルーペサイズも多いので、
マンガン重石、パイマン、菱マン、満バンざくろ石くらいしか収集の対象にして
いなかった。
福島県の浜通り(太平洋側)の鉱山は、踏破したいと考えていた矢先、福島県の石友の
SさんとOさんに案内していただき、初めて訪れた。
既に大勢の人達が訪れており、ほかの関東地方の産地の産地と同じように荒廃している
ことを覚悟していたが、マンガンのズリ石は、まだまだ残っていた。
初冬の小春日和の中で、紅葉を愛でながら、大きなハンマを振り、マンガン新鉱物の
磐城鉱と南部石をはじめ大きなパイロファン石などが採集でき、初回としては
十分満足のいく採集でした。
これからも大雨などで沢が荒れる度に、新しいマンガン鉱が現れると予想され、
まだまだ期待できる産地です。
(2001年12月採集)

2.産地

常磐道いわき湯本ICでおり、「御斎所街道」を石川町に向かって走る。
約20分で、「田人(たびと)」への道に入りすぐ橋を渡り、渡りきった
右手にある駐車場(トイレ付き)に駐車する。
ここには、「柿の沢発電所」がありますのでこれが目印です。
柿ノ沢発電所の放水路
川原に出て、上流に向かい浅瀬を横切り約700m行くと、左手(右岸)に沢が
見える。ここが、御斎所鉱山のズリが広がっている場所です。
御斎所鉱山のある沢【対岸から見る】
ここは、沢の中に小さな滝がある自然が残された産地です。
小さな滝がある御斎所鉱山のズリ

3.産状と採集方法

ここは、変成層状マンガン鉱床といわれている。栃木県の加蘇鉱山と
同じようにマンガン透閃石が出るところから、高温の変成と考えられる。
マンガン鉱物は、地表の雨水や酸素の影響で表面が真っ黒い2酸化マンガンに
変化している。
真っ黒で、手にもって重たく感じる塊を探し、大き目のハンマで割って、新鮮な面を出し、
破断面を丹念に観察する。ここでは、大ハンマが不可欠です。
大ハンマでマンガン塊と格闘

4.産出鉱物

(1) 南部石【Nambulite;(Li,Na)Mn4Si5O14(OH)】
「南部石」は、チャート中のブラウン鉱からなる鉱石を切る脈中にブラウン鉱、
曹長石と菱マンガン鉱そしてネオトス石と共に産出する。
バラ輝石よりだいだい味が強いことが特徴。
橙(オレンジ)色の鉱物があったら要注意。
南部石【写真準備中】
(2)磐城鉱【Iwakiite;Mn(Fe,Mn)2O4】
磐城鉱は、ヤコブス鉱(Jacobsite)と同質二像の関係にある。ヤコブス鉱は
磁マンガン鉱とも呼ばれるように、強い磁性を示す。
ヤコブス鉱が黒色なのに対して、磐城鉱はやや緑がかった黒色の亜金属〜金属
光沢を示す。
磐城鉱
(3) パイロファン石【Pyrophanite;MnTiO3】
バラ輝石の中に、六角板状で鮮やかな赤褐色を呈する結晶で産する。過去に、
群馬県の萩平鉱山でパイロファン石を採集したことがあるが、御斎所鉱山ほどの
大きなものを採集したことはなかった。
パイロファン石
(4)マンガンカミントン閃石【Mangancummingtonite;Mn2(Mg,Fe)5〔OHSi4O11〕2】
チロディ閃石とも呼ばれ、淡い黄色で、多くは繊維状の集合として、産出する。
もしかしたら、含マンガン透閃石かも知れません。
カミントン閃石

5.おわりに

(1)初めての産地でしたが、石友のお蔭で、一通りのマンガン鉱物が
採集できました。
(2)マンガン鉱石は硬く、割るのに一苦労します。また、割った時に破片が
遠くまで飛び散りますので、メガネ(ゴーグル)を着用するのと、回りの人への
配慮が安全上欠かせません。
川を何回か横切りますが、渇水期のこの時期でも水量があり、しかも川底の石が
ヌルヌル滑りますので、長靴の着用は無論、転倒などに十分注意しましょう。

6.参考文献

1)松原聡監修:日本の新鉱物,フォッサマグナミュージアム,2001
2)加藤昭:マンガン鉱物読本,関東鉱物同好会編,1998
3)松原聡:日本産鉱物種,鉱物情報編,1987
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