山梨県韮崎市御座石金山の含金黒鉱

山梨県韮崎市御座石金山の含金黒鉱

1.初めに

 山梨県には、戦国時代の金山遺跡が数多く残されている。それらは
江戸時代に編纂された地誌や今に伝わる伝承をもとに、武田氏ことに
武田信玄による開発と説明されることが多い。

  甲斐の諸金山と御座石金山

 それらの1つに、「御座石金山」がある。しかし御座石金山に関する
文書などの資料を目にしたことはなく、その存在はベールに包まれている。
 15年近く前、鳳凰三山の玄関口にあたる御座石鉱泉近くで、古い坑道を
みつけたのを思い出し、昨年から何回か挑戦していたが、雪に阻まれ
3度目の正直で、産地を訪れることができた。
 この日も前日に降った雪が残る中での探索であったが、坑道やその周辺で
含金(?)黒鉱鉱石を採集できた。
 「御座石鉱泉」の人の話では、近くに製煉所跡も残っているようですので
改めて、探索してみようと考えています。
(2004年3月採集)

2.産地

 国道20号線で長野方面に向かい、韮崎市円野(つぶらの)町」に入ると
「←御座石鉱泉」の小さな標識が目に入る。これに従って、1kmも進むと
未舗装の悪路になり、約10km進むと「御座石鉱泉」があり、その手前の
市営駐車場に車をとめる。

  御座石鉱泉

 ここは、鳳凰三山(地蔵岳、観音岳、薬師岳)の玄関口になっているようで
 「御座石鉱泉」のパンフレットに、鳳凰山と御座石鉱泉にまつわる伝承が
次の様に、記されている。

 『奈良朝46代孝謙天皇は帝位退位後、奈良法皇と称せられ仏門に入られ
 この近くの山に修行遊ばされた。ここから法皇(鳳凰)山と呼ぶようになった。
  修行の折、御座した場所から霊験あらたかな鉱泉が湧き出で、ここを
 御座石鉱泉と呼ぶようになった。』

 「御座石鉱泉」前を流れる小武川(こむかわ)を上流に向かうと、”やけ”の
みられるガレ場があり、その近くに古い坑道が残っています。

  ガレ場

3.産状と採集方法

 「山梨県地質誌」によれば、御座石鉱山は、御坂層群の黒鉱式鉱床および鉱脈と
 され、黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、重晶石を含むとされています。
  黒鉱に伴う金は、山梨県の金山では他に例を見ない、ユニークな存在です。

     
         坑道         内部【深さ15m】
            御座石金山旧坑

  坑道の入口付近やガレ場にには、鉄錆に覆われた部分や石英脈が走る部分があり
 その近傍に、真っ黒い黒鉱があるので、ハンマーとタガネで掻き採ります。

4.産出鉱物

(1)黒鉱【Black Ore:-----】
    閃亜鉛鉱、方鉛鉱、重晶石などを含む真っ黒い鉱石に黄鉄鉱などの結晶が
   点在しています。
    石英脈や一部に微細な水晶なども見られます。金を含んでいると言われますが
   肉眼で見える自然金は見つけられず、念のため黒鉱を砕いてパンニングもしてみたが
   金の痕跡は確認できなかった。

   黒鉱

5.おわりに

(1)「御座石鉱泉」の玄関には、御座石鉱山の一部に緑青を吹いた握りこぶし大の
   カラミ(鉱滓)が置いてあります。
    鉱泉のかたのお話では、昭和21年ごろにも鉱山は採掘しており、カラミは
   あちこちの製煉所跡に落ちているとのことでした。
    古い時代のものは、製煉技術が発達していなかったので、金属分がカラミに
   含まれ、手に持つと重く感じるとのことでした。
(2)これらの製煉所跡も探索してみよう、と考えています。

6.参考文献

1)御座石鉱泉:案内パンフレット,「御座石鉱泉」総合案内所,2004年
2)山梨県:山梨県地質誌,山梨県地質図編纂委員会,昭和45年
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