2次鉱物が生じている部分の母岩は”ボロボロ”に近く、タガネやドライバーで
簡単に崩すことができる。標本は、ダメージを受けやすいので、慎重に取り
扱う必要がある。
先人(グループ?)が、幅、深さ60cm、長さ1.5mにわたって掘り込んでおり、その
周辺では表面採集でもそこそこの良標本が多数得られた。
(1)水鉛鉛鉱【Wulfenite:PbMoO4】
緑鉛鉱の表面やその近傍、割れ目の”ヤケ”の表面に結晶が見られる
”飴色”で表面の輝きが強い。結晶は、板状、サイコロ状そして錐状の3通り
が見られる。
(2)緑鉛鉱【Pyromorphite:Pb5(PO4)3Cl】
緑〜黄〜灰白色でガラス光沢を示す。皮膜状〜ビヤ樽のように中太い
針状結晶、そしてそれらが放射状に集合した”菊花状”、”イガ栗状”
そして”柱状”で産出する。
「緑鉛鉱」と言いながら、”灰白色”〜”黄色”まであり、むしろ緑色の
方が少ない印象である。
(3)青鉛鉱【Linarite:PbCu(SO4)(OH)2】
天青色、ガラス光沢の針状〜柱状結晶や皮膜状で産する。長石が変質
したと思われる白色粗鬆質粘土のような晶洞の中に微細な頭付き結晶が
見られる場合もある。
(4)白鉛鉱【Cerussite:PbCO3】
白色、半透明のギラギラした光沢の柱状〜皮膜状で産する。微細な針状で
産する場合もあるとの情報もあるが、稀のようである。
(5)硫酸鉛鉱【Anglesite:PbSO4】
白色、半透明〜不透明で、「重晶石」に似た小さな厚板状結晶が折り重なる
ように集合して産する。
(6)珪孔雀石【Chrysocolla:(Cu,Al)2H2Si2O5(OH,O)4・nH2O】
青緑色、ガラス光沢で塊状や仏頭状集合で見られる。破面は貝殻状を示す。
このように立派な珪孔雀石を関東地方で採集できる場所は少ない。
(7)方鉛鉱【Garena:PbS】
黒色、金属光沢の微細な粒状結晶の集合で産する。部分的には、結晶の
粒が大きくなり、特有の劈開面がみられる部分もある。方鉛鉱には、閃亜鉛鉱も
伴っており、また、金色の黄銅鉱が見られることもある。
これらが、「水鉛鉛鉱」はじめとする鉛の2次鉱物の”源”になっていると思わ
れる。
4.2 今回の採集品【2006年10月】
(1)水鉛鉛鉱【Wulfenite:PbMoO4】
緑鉛鉱や青鉛鉱の表面やその近傍、割れ目の”ヤケ”の表面に結晶が見られる
”飴色”で表面の輝きが強い。結晶は、板状、サイコロ状そして錐状の3通り
が見られる。
(2)赤銅鉱【Cuprite:Cu2O】
輝銅鉱(?)→黒銅鉱に変化した表面部分に、赤色、皮膜状や絹糸状で産する。
あまりに鮮やかな紅色なので、”ルビーシルバー”と誤認して、石友・Mさんに
『 ルビーシルバー 発見 !! 』 誤メールを入れたほどである。
(3)桃簾石【Thulite:Ca2AlAl2(Si2O7)(SiO4)O(OH)】
桃色で母岩の石英の中に点在する。某オークションに「○○○の桃簾石」として
出ていたので、よほど珍しい鉱物かと思いきや、その気になって産地を見回すと、
”掃いて捨てるほど”あることが判った。
日本産の桃簾石は、単斜灰簾石【Clinozoisite】とされ、いわゆる「桃簾石」は
”桃〜赤色の単斜灰簾石”と呼ぶのが正しいようである。
このほか、「孔雀石」などが観察できる。「ブロシャン銅鉱」が産する、との情報も
あり、それらしい標本は採集できたが、確認できていない。
(2) 今回案内したTさんも、2006年1月の鉱物同志会新年会のオークションに出品された
「水鉛鉛鉱」に涙を飲んだ1人であった。
Tさんは、同志会の某氏からこの産地の存在をほのめかされたが、場所は教えても
らえなかったらしい。
(3) この産地は、規模が小さく、2次鉱物が見られる露頭は限られているが、まだまだ
良品が眠っているとの印象である。