1年前の2009年10月、Mさんとここを訪れ、狙っていた希元素鉱物で変種ジルコンの
1種・「山口石」や「イットロ蛍石」などをを採集できたことはHPで報告した。
このとき歩いたルートと「日本希元素鉱物」の記述を照らし合わせてみると、目的地より
前回のポイントから約400m奥まで車を乗り入れ、そこから転石を見ながら沢筋を上流に
しかし、「山口石」や「菱柱状の錫石」、そして益富、桜井両先生が発見したという「トパズ」
今回も「日本希元素鉱物」の記述をもとに、”目印”と”距離”を地図に落としたルート・マッ
この地域の「アマゾナイト」も乾くと青緑色が薄れ普通の長石と見分けが付きにくいものが
(1) アマゾナイト/天河石(微斜長石)【Amazonite(MICROCLINE):KAlSi3O8】
青緑色に着色しているのは、微量に含まれる鉛(Pb)の影響とされている。希元素
(2) 煙水晶/石英【Smoky QUARTZ/QUARTZ:SiO2】
(3) 鉄電気石【SCHORL:NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4】
この産地の目玉は、変種ジルコンの一種・山口石【Yamaguchilite/ZIRCON:ZrSiO4】
「山口石」の名は、ここに産するリン(P)を多量に含む変種ジルコンに東大・木村教授な
これにより、変種ジルコンの内、緑色のものを「苗木石」、褐色のものを「山口石」と
さて、肝心の「山口石」だが、実は、ここを訪れる前に、長野県西筑摩郡田立(ただち)村
(2) 『天河石』考
Mさんとの待ち合わせ場所を田立駅にしていた。約束の時間の2時間も前に到着し、駅
「滝」と「石」、どちらが先に名付けられたのか、調べてみたいと思っている。
( "Yamaguchilite" ( Altered ZIRCON ) from Nakatsugawa City , Gifu Pref. )
数百メートル手前を探索していたようだ。そこで、今回、その続きをほぼ1年ぶりに再探査
することにした。
遡ると、点々と大きな「ペグマタイト」塊や「アマゾナイト(天河石)」が落ちていて、いやがお
うにも期待が高まる。
などは一向に姿を見せない。
沢筋を500mも遡ったあたりでも、まだ「アマゾナイト」の転石が見られるが、中津川市での
「苗木石」採集の時間が迫り、引き返すことにした。
ここでは、数個の「アマゾナイト」と「煙水晶を伴うペグマタイト晶洞」を採集しただけだった。
どうやら、「日本希元素鉱物」にある産地は、前回探索したあたりらしい。ここは、安全で、
女性や子供でも簡単に「アマゾナイト」を拾うことができ、ほとんどの方が知らない産地だと
思うので、次回のミネラル・ウオッチングの候補地の1つだ。
同行いただいたMさんに厚く御礼申し上げる。
( 2010年7月 採集 )
2. 産地
この産地は、文献などにも紹介されているので、詳細は割愛する。
プを作成して持参した。そして、実際に歩いたコースと産出した鉱物をマップに書き加えて
みた。
ルート・マップ
3. 産状と採集方法
この地域は、随所に花崗岩が風化してマサ化した箇所(この地方の方言で”ぞれ”と
呼ぶ)が見られ、その一部には風化に耐えて残った露頭もある。
露頭が自然に崩れたり、かつて砂防ダム用の石材を掘った場所からでた(?)、ペグマ
タイトの塊やカケラがかなりの量、沢筋に落ちている。
産状
多いので、沢筋など、水分を含んだ場所で採集するのが良いようだ。
逆に、「紫色の蛍石」は、乾燥すると紫色に見えるのだが、水に濡れていると煙石英の
ように見えて見逃してしまう。何とも、悩ましい限りだ。
4. 産出鉱物
「日本希元素鉱物」には、「変種ジルコン」、「チンワルド雲母」、「アマゾナイト」、「錫石」
そして「イットロ蛍石」など、幅広いペグマタイト鉱物が産出するとある。
今回、私が採集した標本を紹介する。
カリ長石の一種、微斜長石で白〜黄〜緑〜青色の塊状で産出する。図鑑にあるような
単結晶の採集は難しい。
アマゾナイト(微斜長石)
鉱物に含まれるウラン(U)やトリウム(Th)などの放射性元素は、崩壊し最終的には
安定な鉛(Pb)になる。
「アマゾナイト」は、希元素鉱物の”道しるべ”となりそうだ。
花崗岩の晶洞(ガマ)の中に、結晶している煙水晶があった。水晶の表面に共生して
いる、黒い六角板状鉱物は「チンワルド雲母」のようだ。
全体 拡大
煙水晶を伴うペグマタイト晶洞
真黒い柱状結晶の集合として、花崗岩の晶洞(ガマ)の中に産出する。鉄分を含む赤
茶色のガマ粘土に覆われているのは残念。
鉄電気石
5. おわりに
(1) 『山口石』
である。
どが付けたものだが、「苗木石」同様に、鉱物種としては認められていない。
同じ中津川市にある苗木地方(高山や蛭川を含む)で採集できる「苗木石」との外観的
な違いは、下の表に示すように色しかない。
鉱物名 俗 名 理想的な化学式 外観色 結 晶 図
ジルコン
(変種ジルコン)苗木石 (Zr,Hf,Y,etc)(Si,Nb,Ta)O4 緑色
結晶図
【日本希元素鉱物から引用】山口石 (Zr,Hf,Y,etc)(Si,P)O4 褐色
簡単に呼ばれているが、色だけで決定するのは危険、ともされてもいる。
しかし、私のような”甘茶”が判断できる基準は色しかないので、「山口石」として
ある。
2009年10月に訪れ、「山口石」を採集できた場所から数百メートルしか離れていない
のだが、今回、希元素鉱物は全く採集できなかった。したがって、「日本希元素鉱物」に
記述されている場所は、2009年に訪れた場所だったのだと思い至った。
【現在、長野県南木曽(なぎそ)町田立】の「アマゾナイト(天河石)」産地に立ち寄ってき
た。
採集品をいくつか持ち帰り、実体顕微鏡で確認すると、「山口石」があり、『溜飲を下げ
た』 次第だ。
山口石
アマゾナイトを日本では、「天河石(てんがせき)」、と呼ぶがその語源について、ブラジ
ルのアマ(天)ゾン河や天の河にちなむ、など諸説あるようだが、私は何か違和感を覚え
ている。
周辺をブラブラしていると、待合室に写真が飾ってあった。その中の1枚に「天河滝」なる
1枚があった。
アマゾナイトが日本で一番最初に発見されたのが、ここ田立で、ここには、「田立の滝」
という名瀑があり、「天河滝」もその1つのようだ。
「天河滝」【田立駅待合室掲示】
6. 参考文献
1) 長島 乙吉、弘三:日本希元素鉱物,日本砿物趣味の会,1960年
2) 長島 乙吉:苗木地方の鉱物,中津川市教育委員会,昭和41年
3) 中津川鉱物博物館編:第10回企画展 長島鉱物コレクションと蛭川の鉱物
同館,2006年
4) 松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年