恵那市蛭川恵比寿鉱山の鉱物

         恵那市蛭川恵比寿鉱山の鉱物

1. 初めに

   2004年6月、蛭川市蛭川恵比寿鉱山でミニ鉱物ウオッチングを開催し、参加者は
  トパーズ、蛍石などを採集し、その美しさに惹かれ、その後もリピータとして、何度も
  訪れる人が多かったようである。
   長島乙吉・弘三父子による「日本希元素鉱物」誌に、恵那市蛭川恵比寿鉱山の
  章があり、希元素鉱物として、「モナズ石」が産出する、とある。
   2005年ミネラルウオッチング納めの一環で、恵比寿鉱山を訪れ、希元素鉱物を
  求めて、30cm近い積雪を掻き分け、降りしきる雪の中、パンニングを試みた。
   鉄マンガン重石や錫石は多量に観察できたが、少量のトパーズや水晶がある
  のみで、希元素鉱物は観察できなかった。
   ご一緒いただいた、名古屋の石友・Sさん一家に改めて、御礼申し上げます。
  ( 2005年12月採集 )

2. 産地

   加藤・松原・野村先生による「鉱物採集の旅 東海地方を訪ねて」に記載してある
  有名な産地です。地図を参考に示しますが、近年道路が新しくできて、昔の地図は
  役に立たないかも知れません。

    恵比寿鉱山【鉱物採集の旅から引用】

   今でも道路脇に鉱山施設が残されていますので、わかると思います。

3. 産状と採集方法

   恵比寿鉱山は、濃飛(のうひ)流紋岩に類する流紋岩、石英斑岩や花崗斑岩中の
  鉄マンガン重石や輝水鉛鉱などを明治時代から1960年頃迄採掘した。
   「日本希元素鉱物」誌には、故肥田密造氏がビスマスを精錬し、その後、湿式で
  硝酸蒼鉛鉱として回収しているとある。
   ズリは、かなり広範囲に広がっており、Sさんの奥さんは雪を掻き分けての表面採集
  Sさんと私はズリの土砂を川まで運びパンニングによって採集した。

       
   一足早くここ掘れ”ワンワン”        パンニング
                   採集風景

4.採集鉱物

 (1)鉄重石【Ferberite:(Fe,Mn)WO4】
     パンニングで得られるものは、黒色・板状〜厚板状の結晶で、縦に条線が特徴
    表面が赤錆で覆われているものもある。稀に、頭付き結晶も見られる。

     鉄重石

 (2)トパーズ【Topaz:Al2SiO4(F,OH)2】
     透明〜不透明、ガラス光沢の短柱状結晶で、C軸に並行(縦)に条線があることと
    ”キラキラ”とした特有の輝き(高い屈折率)で水晶と区別できる。

     トパーズ【頭付き】

 (3)錫石【Cassiterite:SnO2】
     赤〜褐〜黒色、透明〜不透明のダイヤモンド光沢〜金属光沢をなし、粒状〜
    短柱状で産する。
     パンニングでは、写真のように両錐の完全結晶が得られることがある。

     錫石【両錐】

 (4)水晶【Rock Crystal:SiO2】
     煙水晶が採集できるとの情報がありましたが、2004年の鉱物ウオッチングでは
    誰も採集できなかった。その後訪れた名古屋・Sさんは、比較的容易に採集できた
    とのことであった。
     今回パンニングで小さいながら頭付きのしっかりした煙水晶を確認できた。

     水晶

 (5)重石華【Tungstite:WO2(OH)2】
     緑黄色、塊状〜土状〜粉末状で鉄重石の分解物として、鉄重石に接して観察
    できる。
     同じような産状の鉱物として、鉄重石華 【Ferritungstite:(H2O,K)(W'''''',Fe''')2
    (O,OH)6・nH2O】と加水重石華 【Hydrotungstite:WO2(OH)2・H2O】があるが
    区別できない。

     重石華

5. おわりに

 (1) 前回訪れた時、ここは蛭川村でしたが平成の市町村合併で恵那市に合併され
    『恵那市蛭川』 になっていた。
     ここでは、輝蒼鉛鉱も採集できるとあるが、今回パンニングしたズリにはカケラも
    見当たらず、場所が違うようです。

 (2) 雪を掘ってズリ採集しているSさんの奥さんの姿を見ていると、父親のため雪の
    中から筍(たけのこ)を掘り出した孝行息子の話を思い出した。
     骨董市で、『筍尋寒冒』 と題する台湾の郵便切手があるのを発見し、つい
    つい求めてしまった。

    『筍尋寒冒』【台湾】

6. 参考文献

 1)長島乙吉、弘三:日本希元素鉱物,長島乙吉先生祝賀記念事業会,1960年
 2)柴田秀賢、須藤俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
 3)加藤昭、松原聡、野村松光:鉱物採集の旅 東海地方を訪ねて,築地書館,1983年
 4)加藤昭:二次鉱物読本,関東鉱物同好会,2000年
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