山梨県黒平向山鉱山出穴坑の水晶

山梨県黒平向山鉱山出穴坑の水晶

1.初めに

山梨県の水晶鉱山の1つに黒平向山鉱山がある。2002年12月初めに
横浜のMさん、埼玉のAさんと友人のASさんと黒平に採集に行ったときに
次回は向山鉱山に行きたいという話になった。
年が明けて2003年、新年早々に降った雪が甲府市街でも日影には残って
いるほどで、標高の高い黒平での採集は難航が予想されたが、横浜のMさん
埼玉のAさんに声を掛けたところ、2つ返事で行きたいということなので案内した。
深いところでは40cmも雪が積もっており、産地まで普段なら30分のところ
その3倍もかかってしまうなど、悪戦苦闘して産地にたどり着いた。
Mさんが透明度が高く表面に半球状の白雲母が晶出した10cm近い水晶を
採集するなど、それぞれ出穴坑らしい標本が採集できた。
雪解け後の本格的な鉱物採集シーズンまでに、皆さんを案内できるよう
更なる産地開拓を図っておきます。
(2003年1月採集)

2.産地

黒平の集落を抜け、クリスタル・ラインで焼山峠に向かって300mも
走ると平馬沢の右岸に入る林道入口がある。ここに車をおき、林道を上流へ
向かうと砂防ダムの下流で沢を横切る。(4WDならここまで入れる。)
雄鷹山【写真中央】
上流にもう一つ砂防ダムがあり、この上流150mから、雄鷹山の北にある
ピークからの尾根を登る。
ここの入口が分かりにくく、2度目の訪山のときに、私の故郷の近く筑波山にある
”出船入船”に似た岩を”出船”と名付け、これを目印にした。
約300mも登ると、「出穴(であな)」と呼ばれる坑口がある。
「出穴」は、明治中期と太平洋戦争中に採掘された坑道で、入口付近から晶洞が
出始め、大晶洞があったことから、出穴の名前が付いた、と言われている。
出穴(であな)坑口

3.産状と採集方法

雄鷹山一帯は、アプライトで、その中に貫入した石英脈の晶洞部分に水晶が
族生している。
石英脈が地表で見える場所は少なく、黒平鉱山のようにマサ化している部分も少なく
地表面で晶洞を当てる事は難しい。坑道内で石英脈を追いかけて、晶洞部分から
採集するか、坑道内外のズリを掘り返して採集します。
石英脈の厚いところは50cm以上ありますが、晶洞は小さく、それが頭付き水晶が
少ない理由でしょう。
「出穴」坑道内のガマ

4.産出鉱物

向山鉱山での採集品は、水晶がメインで、普通の無色、透明のものから、各種の
バリエーションが採集できます。しかし、頭付きは極めて少ない。
(1)水晶【Rock Crystal:SiO2】
無色、透明で屈折率が高く、薄い平板状の水晶も多数見かけますので
産出しないとされている日本式双晶も可能性は残っています。
この坑の水晶の表面には、半球状の白雲母が付いているのが特徴です。
水晶の破断面に白雲母が晶出したものもあり、白雲母が最後にできたことを示して
いる。
平板水晶
(2)松茸水晶【Rock Crystal Pararell Growth:SiO2】
松茸水晶は平行連晶の1種で、水晶の生成が何回かにわたって行われたことを
示している。
母岩付きで透明度の高いものを採集した。
この産地では、行く度に松茸水晶が採集でき、今回は母岩付きで透明度の高いものを
採集した。
松茸水晶

5.おわりに

(1)この採集が本格的な2003年の採集初めとなった。
山梨県にある有名鉱山の1つである向山鉱山を訪れ、この産地らしい標本を
採集でき、幸先の良いスタートである。
(2)黒平方面は、1月中旬にも雪が降り、しばらくは採集が難しそうで
一日も早い雪解けが待たれます。

6.参考文献

1)角田謙朗:山梨県の水晶案内,山梨地学第20号〜第26,27合併号,1976〜1984年
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