秩父鉱山大黒川原のスカルン鉱物と自然金

秩父鉱山大黒川原のスカルン鉱物と自然金

1.初めに

 私が、最初に秩父鉱山に行ったのは、まだ東京に住んでいた15年以上前で
大黒坑下の川原で子どもの頭大の塊を割り、晶洞中から水晶と共に硫砒鉄鉱の
群晶を採集して感激したのを思い出します。
 横浜市のMさん、東京都のTさん親子と秩父鉱山で巡検を行い、Tさんの案内で
緑簾石や黄色い灰鉄(灰礬?)ざくろ石が採集できるという、秩父鉱山大黒川原の
露頭を訪れた。
 ここには、石英脈の中の自然金を追っている先客があり、後発の我々は
露頭前の転(割)石から、当初予定したスカルン鉱物が採集できたので
早々に引き上げた。
 標本は大きな結晶ではないが、黄色の柘榴石、緑色の緑簾石のコントラストが
良く、案内していただいたTさん親子に、厚く御礼申し上げます。
(2003年3月採集)

2. 産地

 秩父鉱山大黒坑の手前に大黒トンネルがあり、その下の川原は「鉱物採集の旅
-東京周辺をたずねて-」にも紹介されている秩父鉱山の代表的な産地の1つです。
大黒トンネル下露頭

3. 産状と採集方法

 秩父鉱山は、接触交代鉱床・熱水鉱床の代表で、石灰岩に石英閃緑岩などの高温の
マグマが貫入してできたと言われます。
 大黒トンネル下の川原では、大黒坑から流れた鉱石が採集でき、川岸の露頭には
熱変成を受けた粘板岩や石灰岩が見られ、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱などの金属鉱物と緑簾石や
灰鉄ざくろ石などのスカルン鉱物が採集できます。晶洞の中では、自形結晶をなす
美しい鉱物が採集できます。ここでの採集は、次の2通りです。
 @川原の中で、褐鉄鉱を帯びた転石を捜して割る。
 A露頭でザクロ石や緑簾石の脈を含む部分を掻きとる。

4. 採集鉱物

(1)灰鉄ざくろ石【Andradite:Ca3Fe2(SiO4)3】
   黄色〜黄褐色を帯びた、偏菱24面体結晶の集合で産出する。
灰鉄ざくろ石
(2)緑簾石【Epidote:Ca2(AL,Fe)3(SiO4)3(OH)】
   黄緑色〜濃緑色の針状または細柱状結晶でスカルンの晶洞の中に産出する。
  ざくろ石の表面に晶出しているものもあり、スカルンの最後期にできたと
  思われる。
緑簾石
(3)透緑閃石【Actinolite:Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH2)】
   緑色の先が細った針状結晶で晶洞の中に産出する。単に緑閃石やアクチノ閃石と
  呼ばれることもある。
透緑閃石
(4)この他、この川原では、菱マンガン鉱、ブーランンジェ(毛?)鉱、硫砒鉄鉱
   磁硫鉄鉱、葉片状磁鉄鉱、石膏なども採集できます。

5.おわりに

(1)Mさんと秩父鉱山の自然金の産地はどこだろうか、と話していた矢先
  自然金を追っている人たちに出会い、産地が分かった。
  自然金は、石英脈にきているそうです。
  (自然金の産地を発見した、Oさんに場所を確認中です。)
(2)次回は、自然金を狙ってみたいと考えています。

6.参考文献

1)加藤 昭、松原 聡共著:鉱物採集の旅-東京周辺をたずねて-,築地書館,1982年
2)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3)新井 重三監修・須藤 和人編:埼玉県 地学のガイド,コロナ社,昭和61年
4)奥山 優:秩父鉱山の自然金 スカルン中の柘榴石に伴う自然金
         ペグマタイト 第57号,2002年
inserted by FC2 system