琥珀探しの方法は、次の2つが一般的のようだ。
@ 海岸に波で打ち寄せられたものを探す
A 琥珀を含む露頭の転石から掻き採る
まず、ガイドブックにもある海岸を訪れた。”海が荒れたあとなら、必ず拾える”、とあるのだが
探せどもそれらしいものは見つからない。
しかたなしに露頭を訪れると、何やら黒色の丸いものが飛び出していた。もしかして”琥珀”と
夢中で掻き採った。鶏卵ほどの大きさで、形は琥珀そのものだが、色が黒すぎる。
この日は夕方までに山梨に戻らなければならず、残り時間は少ないが、気になる海岸があっ
た。
300m足らずの海岸で満潮時に打ち上げられた海草などをかき分けながら探すと、『灰褐色の
琥珀』、『ノジュールに入った貝化石』、そして『サメの歯』など、白亜紀の遺物を観察できた。
こうして、気になる産地の2つ目をクリアすることができた。この近くの海岸では、『砂鉄』も
観察でき、心置きなく産地を後にすることができた。
( 2013年2月 観察 )
ここでの採集方法は、次の2通りになる。
@ 海岸に波で打ち寄せられたものを探す
A 琥珀を含む露頭の転石から掻き採る
海岸で採集する場合、一番考慮しなければならないのは『潮の干満』だ。春先は潮干狩りに
適していることからもわかるように、潮の干満が激しい。
何も琥珀だけでなく、静岡県やんだ海岸での「沸石・魚眼石」や新潟県・富山県での「ヒスイ」
探しでは、潮の干満が成果を大きく左右するし、身の安全にも影響する。
今では、インターネットで日本全国の海岸の潮の干満を『潮見表』なるページで調べることが
できる。ここを訪れた日と一週間後の「潮見表」を対比して示す。
潮位の違いが劇的に変化しているのには驚かされる。これを知らずに、満潮の時に訪れると
身の危険を感じ、採集すら難しいだろう。
念のため、比重を測定してみた。
空気中の重さ = 32.7 グラム
水中での重さ = 2 グラム
比重(SG) = 32.7 / (32.7−2) = 1.07
一般に琥珀の比重は、1.03〜1.10 とされ、その中間の値を示し、琥珀に間違いない
だろう。
(2) 石炭【coal: 】
鉄黒色、断口貝殻状で光沢輝く。次のような特徴を備えたものもある。
@ 植物の特徴を残す
石炭の元が植物だったことを示すいくつかの痕跡が残されている。
1つは、鱗(うろこ)状の樹皮と思われる凹凸を残している。もう一つは、木目を
残すものだ。
A 変成の特徴を残す
石炭は、地層に挟まれた植物が強い圧力や熱を受け、炭素(C)分が高くなったものだ。
石炭の産地になり損ねた千葉県では、植物だけが厚く堆積したのではなく、鉄分や石灰
分などの薄い層が挟み込まれて積み重なったようだ。
その結果、黄鉄鉱や方解石(霰石)などが石炭の中の薄い層として観察できる。
(3) 化石【Fossil: 】
ここでは、いくつかの化石を観察できる。それらは、「サメの歯」や「貝」だ。温暖だった
時期には、この辺りの海をサメが泳ぎ回り、抜け落ちた歯が地層に挟まれ化石になったものが
地層が隆起し、波に洗われて、砂浜に打ち上げられている。
貝の成分のカルシウム分で周りの土砂が固まり、いわゆる”ノジュール”となったものも
地層が隆起し、波に洗われて、砂浜に打ち上げられている。
海岸では、大勢の人たちが「潮干狩り」で、アサリを採集している。「この辺りで、『琥珀』が
採れると聞いて来たんですが」、と話しかけると、「そんなのは、年に何回あるかないかだ」、と
厳しい答えが返ってきた。
アサリ採りを見ていると”ズリ採集”のようで面白い。そこは、”何でもハンター”のこと、たちま
ち、アサリハンター”に変身だ。
岩を持ち上げるとスキマに、アサリやカニがいるのを採集する。3男の嫁さんもはまってしまっ
たようだ。
常連らしい人の口から、聞くともなしに面白い話が次々と飛び出してくる。
@ 「○○浦」の海水の塩分濃度は高い。
そのため、持ち帰ったアサリの砂を吐かそうとしても、普通の塩水では吐かない。常連
の人たちは、ペットボトルでこの浜の塩水を持ち帰って砂抜きにつかう、とのこと。
この浜は、「琥珀」が採集できることで有名だが、塩分濃度が高い、つまり比重の大きな
海水であればあるほど「琥珀」は浮きやすくなり、海岸に打ち寄せられるのだろうか。
塩分濃度が極端に高い「死海」で海水浴をしながら片手にパラソルを持ち本を読んでい
る水着姿の女性の写真を子どもの頃に見た記憶がある。
【後日談】
持ち帰ったアサリを砂抜きしようとしたのだが、一向に口を開けない。みそ汁にしたが
身は砂だらけで食べられず、汁だけを飲んだ。
しかし、「ここのアサリは養殖でなくて、天然ものだから、ここのを食ったら余所のは食
えない」、と常連が言うだけあって旨味が全く違った。
A 「砂鉄」が多いとアサリは棲まず、ハマグリが棲む
銚子よりも南の海岸では、「砂鉄」を採掘した時期もあったらしい。その地域には、ハ
マグリが生息しているらしい。
【後日談】
銚子付近の海岸の砂の上に、黒い砂が溜まっている箇所がある。黒い砂の正体は
「砂鉄」だ。
B 地元の味
食欲旺盛な3男の家族のために、「この辺りで美味しいものが食べられる店を知りませ
んか」、とアサリ採りの常連さんに聞いてみた。
「ここから南に2kmほど行った『△△』か銚子港近くの『浜めし』だろう」、という。『浜めし』
は3男の嫁さんが携帯端末で調べてくれて知っていたが、『△△』は初めて聞く名前なの
で、隠れた味どころかと訪れてみた。入口に置いてあるメニューの写真を見て、これなら
単身赴任先のファミレスでも食べられそうなので、予定していた『浜めし』に向かった。
店の前には、10人近くが列を作って並んでいた。待つこと30分ほどで、店の中に入り
さらに10分ほど待って席に案内された。
ウニ、いくら、本マグロの丼(どんぶり)が名物で、「3色丼」や「ウニマグロ丼」などを
注文する。
やや小ぶりな器に新鮮な海の幸を山盛り乗せた注文品が届く。食べられるだろうか、
と案じたが、ペロリとお腹に収まってしまった。
(2) 銚子の自然
東日本大震災では、銚子周辺では甚大な被害はなかったようだが、漁港の古い建物には
立ち入り禁止のロープが張られ、大震災の傷跡を残したままだった。
銚子の海岸で孫を遊ばせながら、「今、大津波が来たらどうなるのだろう」、との思いが頭か
ら離れなかった。標高が数mしかない海岸で津波に襲われたらひとたまりもない。
常に、”地震が起きたらあの高台に逃げる”を意識していた。
行き帰り、妻や3男の家族は、車窓から見える大きな風力発電の風車に興味津々だった。
銚子付近は年間を通して強い海風が吹き、風力発電に好適な場所のようで、つい先日、海上
風力発電施設が稼働を開始したとテレビで報じていた。
何台かの風力発電の風車が並んでいる風景は、意外と銚子の自然に溶け込んでいる。
”原発に頼らない”、自然エネルギーがまだまだ活用できそうだ。