長野県川上村千曲川(ちくまがわ)の砂金 その3











      長野県川上村千曲川(ちくまがわ)の砂金 その3

1. はじめに

    2014年正月を迎え、31日まで仕事だったり、2日から仕事の息子たち3家族と愛犬2匹が入れ
   替わり発ち替わり帰省し、嵐のような一週間が過ぎて、ジージとバーバだけの生活に戻った。

    『2014年のミネラル・ウオッチング始め』をどこにしようかと考えていて、以前千葉県の石友・Mさ
   んが電子データ化して送ってくれた「信濃鉱物誌」の『金』の章を思い出した。ちょうど、信濃の金と
   縁が深い「甲斐国 甲州金」をまとめている途中でもあり、新年そうそう”金”が採れれば縁起も
   良さそうだ。
    思いたって訪れたのは、長野県川上村の千曲川だ。だいぶ前、湯沼鉱泉社長に教えてもらった
   情報をベースに、川上村を流れる千曲川で砂金を探査し、いくつかのポイントで産出を確認した。
   何回かミネラル・ウオッチングを開催し、HPに掲載したように、皆さん満足できる砂金を採集でき
   たようだ。

    ・2010年 秋のミネラル・ウオッチング Part2
     ( Mineral Watching Tour , Fall 2010 ,- Part2 - Nagano Pref. )

    今回は、新たらしい産地開拓の意味もあって、まだ皆さんを案内していないポイントで探査して
   みた。私の見立てでは、”川の相”は申し分ない場所だが、なかなか出ない。昨年秋の台風で増
   水したときに運ばれた土砂が『含砂金砂礫層』の上に厚く被ってしまったようだ。この下にある筈、
   と信じて掘り続けるとると、パンニング皿に赤茶色に錆た針金や釘が入るようになった。こうなれ
   ば、砂金は近い。

    
      錆びた鉄クズが入るパンニング皿

    パンニング皿をこね回すように操り、少量の水を循環させながら皿の底に残る多量の砂鉄(磁
   鉄鉱)を手前に寄せる。真っ黒い砂鉄の中から、”黄金色”、肉眼サイズの砂金が姿を現わす。砂
   金を乾いた指先に吸い付けて、持参したタッパーの中に回収する。あとはこれの繰り返しだ。

    この日は、新しいポイントの探査が目的なので、小一時間ほどで妻の待つ車に戻った。湯沼鉱
   泉にも寄りたかったが、今年から参加することにした趣味の会があり次の機会となった。帰途に
   見た八ヶ岳とその周辺は例年になく雪が多く厳しい姿だったが、今年も何か良いことがありそうな
   予感がする。

    
             厳冬の八ヶ岳

    ( 2014年1月 採集 )

2. 産地

    このページをまとめるにあたり、川上村の地図に自分の記憶にある、砂金の産出が確認できた
   ポイントや確認できなかった場所などのメモを書き加えてみた。結論としては、川上村を流れる
   千曲川流域一帯が産地だ。詳しい場所は、湯沼鉱泉に宿泊して社長に教えてもらうとよいだろう。

    
                    川上村砂金産地

    この地図を見ると、川上村は長野県の東南端にあり、南は山梨県、東は埼玉県、北東は群馬
   県上野村だ。日航ジャンボ機が墜落した時のことを社長に聞くと、「最初は、おらほう(長野県側)
   から入ったダ」、と教えてくれたが納得だ。

    千曲川は、埼玉県境の甲武信ケ岳(2475m)が源流で、村を東から西に流れているので、川上
   村は『千曲川源流の村』、と謳(うた)っている。私のHPにもたびたび登場する「甲武信(こぶし)
   鉱山」は甲武信ケ岳にあると誤解している読者がままおられるが、ここではない。

    埼玉県に入るとそこは秩父で、”紐(ひも)金”で名高い「秩父鉱山」なども近いので、砂金の源
   はこちらかとも思い「東沢」水系を探査したが金は発見できなかった。
    今まで川上村の千曲川で砂金を確認できたポイントから、砂金の源は、支流の金峰山川と梓川
   に挟まれた、俗に「甲武信鉱山」と呼んでいる一帯だろう。
    山梨県境の国師ケ岳(2592m)から北に、雨降山(2156m)、長峰(2065m)と山塊が続き、長峰
   の北にのびる尾根の東西に長尾金山、梓金山、川端下金山などと呼ばれた旧坑が点在しており、
   この一帯を総称して「甲武信鉱山」、と呼んでいる。

3. 産状と採集方法

    砂金は比重が約20と、水晶(石英:2.6)の約8倍もあり、川の砂礫層の下に堆積しているので、
   砂礫を掘り起こして、パンニングするのが一番簡単な採集方法だ。パンニング方法と理論は次の
   ページにまとめてある。

    ・鉱物採集の技(1) パンニング
     ( Technique for Mineral Hunting (1) , Panning , Yamanashi Pref. )

    砂金は『寄せ場』、と呼ばれるポイントに集まる。川の流れを観察し、砂金が溜まっていそうだと
   思われる次のような場所を狙ってみた。

    (1) 川の流れと直角に岩盤の割れ目や構造物の溝がある。
    (2) 川の浅瀬に葦(よし)などが生えている。

        
               ブロックの間                       葦の根元
                             砂金の『寄せ場』

    採集方法は、カッチャやスコップですくい上げた土砂を皿に入れ、パンニングするだけだ。土砂
   が固まっていたり、大きな石が噛み合っているので、ツルハシやバールなどでほぐしながらすくう。
    この産地は「砂鉄(磁鉄鉱)」が多いので、磁石を使ってパンニングの早い段階で取り除くと
   楽だ。

4. 採集鉱物

 (1) 砂金【Placer Gold/GOLD:Au】
      文字通り、黄金色の粒で産出する。川上村千曲川の砂金は、厚みがあるというより、粒状や
     柱状で大きく、パンニング皿の中で循環水で洗っても動かないので簡単に見分けられる。
      下の写真のハート形をした砂金は、川上村周辺で数多く産出する水晶の「日本式双晶」を
     思わせ、お気に入りの一粒だ。

     
              砂金【最大 2mm】

5. おわりに

 (1) 信濃の砂金産地
      千葉県の石友・Mさんが電子データ化して送ってくれた、八木先生の「信濃鉱物誌」・『金』の
     章を再掲する。

     『 1. 南佐久郡川上村
       2. 諏訪郡金沢鉱山
       3. 東筑摩郡錦部村
       4. 西筑摩郡楢川村片平村

       川上村川端下、向山には戦國時代(天正年間)に武田信玄の採掘せる金鑛脈あり
      同地の古生層地の各所に採掘の跡を残せり。其の後慶長、天保年間にも稼業せる
      ものにして其の盛時は、梓山千戸、川端下千戸を有し、五ケの佛寺さへも建立せら
      れ、今 其の舊蹟を見ることを得べし。
       甲金と稱する一分金は梓山と川端下より産せる 金によりてつくられたるものにして、
      ○中に定の刻印あり。信玄の枕金二十四萬両を産出せりと傳ふ。
       同村梓山部落の南梓川沿岸砂礫層中には砂金を産す。九、十月の農閑期に採集
      することあり。其他産地として聞く処多きも未だ詳査せられたるものなし。        』

      「信濃鉱物誌」には、長野県内4ヵ所の砂金産地が掲載してあり、今回紹介したのは、No1の
     砂金だし、「山金」を採集したことも幾度かHPに載せた。
      No2の金沢鉱山は、現在金鶏鉱山や向谷鉱山がある一帯で、ここでもミネラル・ウオッチング
     を開催し「自然金」を採集できた。

      ・2010年 秋のミネラル・ウオッチング
       ( Mineral Watching Tour , Fall 2010 , Nagano Pref. )

      「信濃鉱物誌」に、『甲金と稱する一分金は梓山川端下より産せる金によりてつくられたる
     ものにして、・・・ 』
、とある。
      「甲(州)金」は、甲斐一国内流通の通貨で、江戸幕府の貨幣改鋳に併せて、金の含有量を
     増減する改鋳が何回か行われた。そのたびに、古い甲州金は溶かされ金地金となって新しい
     甲州金に生まれ変わった。

      私が入手した「甲州金」の中にも、信玄の時代に梓山と川端下で採掘した金がごくごく微量
     だが入っているかも知れないと考えると、”ロマン”だ。
      これが、甲府在住四半世紀の記念に「甲州金」を買おうと決めた理由だ。

 (2) 「田上(たなかみ)トパーズ!」
      2013年12月、テレビを見ていると、滋賀発地域ドラマ「田上(たなかみ)トパーズ!」の
     予告編が流れた。夜遅い(!?)22時からの放映なので、録画しておいて、何日か経って
     妻と見た。粗スジは、

      『 東京の建設会社に勤める水島鉱介は高校生の娘・陽菜と二人暮らし。自身が手掛ける
       大きなプロジェクトが動き始めた矢先、鉱介は突然、故郷・滋賀県への異動を告げられる。
        陽菜はバンドに打ち込んでいただが、ある日、メンバーが陽菜の歌について悪く言って
       いるのを聞き、バンドを続ける自信をなくす。
        心にもやもやしたものを抱えたまま、二人は滋賀県に引っ越し、祖父と3人の生活に。
       鉱介の異動先は、まさかの子会社のケーブルテレビ局。
       慣れない仕事や滋賀独特の県民性、田舎暮らしにとまどう父と娘。
       そんなある日、陽菜はクラスメートから、町で行われるバンドコンテスト「軽音楽甲子園」に
       一緒に出てほしいと声をかけられ、心がゆれる陽菜。

        地域に密着したケーブルテレビ局の人たち、故郷で暮らす老いた父親、亡くなった妻の
       妹など、多くの人とふれあいながら、再びトパーズのような輝きを取り戻す、父と娘の物語。』

      ドラマの後半、悩みを抱えた陽菜が失踪する。ケーブルテレビ局に陽菜らしき姿を”見ない”、
     と寄せられた場所を地図の上に”×”でプロットすると、空白地帯が。そこは、祖父が陽菜を連
     れて行き、父・鉱介の若いころの夢を語ってくれた田上山だった。

      東京での仕事の経験から、「見た」、という情報には価値があるが、「見ない」、という情報は
     不必要、むしろ余分だとすら、と思い込んでいた鉱介には目からウロコの思いが。

      上の川上村砂金産地の地図にも”×”印を入れておいた。”ある”のは砂金1粒見つければ
     証明できるが、”ない”というのを立証するのは”悪魔の証明”とも呼ばれるほどで不可能だ。
      ただ、科学分野であれば、サンプル箇所、人などを増やすことで、『統計学的に○○%の
     確からしさで”ない”、と言える』
、と結論付けることが可能だ。
      このためには、多くの石友の協力が必要だが、『採れない』ことを承知で参加する人がいる
     だろうか。

      なお、最近では黄玉をカタカナで「トパズ」と表記するが、番組のタイトルどおり「トパーズ」、
     としてあるので、ご承知ください。

6. 参考文献

 1) 小出 五郎:長野県川上村川端下(かわはけ)付近の鉱物,我等の鉱物,昭和16年
 2) 加藤 公夫:写真版 北海道の砂金掘り − 三津田三郎さんの採金技法 −,
                                北海道新聞社,昭和61年
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