長野県川上村千曲川(ちくまがわ)の砂金











         長野県川上村千曲川(ちくまがわ)の砂金

1. 初めに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春のGWと
   秋の年2回、定期的にミネラル・ウオッチングを開催するようになって9年目を迎えた。
    2010年秋は、「山梨県・長野県のマル秘産地を訪ねて」、と題して開催することにした。
   しかし、開催する週に入って、台風の上陸、しかも山梨、長野を直撃することが予想され
   中止にした。それでも、『・・・・・、槍が降ろうが、・・・』、という”○印5人組”で、決行したこ
   とはすでに報告(一部未発表)した通りだ。

    ・2010年 秋のミネラル・ウオッチング
     ( Mineral Watching Tour , Fall 2010 , Nagano Pref. )

     すでに下見を済ませ、(パンニング技術があれば)確実に砂金が採集できることを確認
    してあった、「千曲川の砂金」産地は濁流で危険なためスキップせざるを得なかった。

     千曲川の砂金はどこから来ているのか知りたくなり、「2010年秋のミネラル・ウオッチン
    グ Part2」の下見を兼ねて、妻と2人で訪れた。(今回も妻は車で待機)

     3週間ぶりに、「湯沼鉱泉」を訪れると、社長、お姐さんも元気で、生まれて間もない”モ
    コモコ”の川上犬の内残った2匹が庭を走り回っていた。

       川上犬子犬【湯沼鉱泉】

     社長に川上村の砂金採掘場について聞くと、「 ○○の深くなった所で、ふたとこ(2箇
    所)ばかし掘ってたダ 」、とのこと。この辺りを中心に、探査してみることにした。
     千曲川の支流AのポイントA1でパンニングしてみたが、小さな”粉”のようなものがある
    だけで、早々と切り上げた。ポイントA2では、肉眼でもわかる「砂金」が産出する事を確認した。
     支流BのポイントB1でも、肉眼サイズが確認できた。
     千曲川の源流の1つは、埼玉県との県境にある「甲武信岳」から西に流れてくる「東沢」
    「西沢」などだろう。埼玉県側には、「自然金」で有名な秩父鉱山があり、こちら方面から
    も砂金が流れて来ているのかを確認するのが、今後の課題だ。

     この日は、朝9時の気温が7℃、日中は12℃まであがり、風もなく「小春日和」の中での
    パンニングだったが、夏でも冷たい川の水は一層冷たく感じられ、ゴム手袋を忘れたのが
    悔やまれた。
    ( 2010年11月採集 )

2. 産地

    長野県川上村を流れる千曲川流域一帯が産地だ。詳しい場所は、湯沼鉱泉に宿泊し
   社長に教えてもらうとよいだろう。

      
                       川上村砂金産地地図

3. 産状と採集方法

    砂金は比重が約20と、水晶(石英:2.6)の約8倍もあり、川の砂礫層の下に堆積してい
   るので、それを掘り起こして、パンニングするのが一番簡単な採集方法だ。パンニング方
   法と理論は次のページにまとめてある。

    ・鉱物採集の技(1) パンニング
     ( Technique for Mineral Hunting (1) , Panning , Yamanashi Pref. )

    今回訪れたポイントは、川上村の集落に近いことや釣り人のメッカの1つでもあり、乾電
   池や鉛でできた釣りの錘(おもり)などがパンニング皿に入っていることがある。パンニン
   グ皿の中の軽い土砂を洗い流すと、まっ黒い「磁鉄鉱」の中に、”黄金色”の砂金が姿を
   あらわす。
    100均で売っている、U字型(馬蹄形)の磁石を持参すると、「磁鉄鉱」が簡単に取り除け
   楽に砂金だけを採集できるはずだ。

        
               土砂                         砂金
           【乾電池もある】                 【黒いのは「磁鉄鉱」】
                            パンニング

4. 採集鉱物

 (1) 砂金【Placer Gold/GOLD:Au】
      文字通り、黄金色の粒で産出する。川上村の砂金は、厚みがあるというより、粒状や
     柱状で産出し、大きな粒が隠れていそうな雰囲気だ。
      小さな粒には、パンニング皿の中にある時、赤く見え、銅線のような銅製品の破片が
     錆びて「赤銅鉱」になったものだろうと思うほどだった。

        
              ポイントA2産                  ポイントB1産
                              砂金

 (2) ジルコン【ZIRCON:ZrSiO4】
      花崗岩から抜け落ちたと思われる無色透明〜ピンク色、六角柱状、両錐の微細な
     結晶が採集できる。大きさが、0.2mm程度しかなく、実体顕微鏡下で初めて認識で
     きる。

      ジルコン

5. おわりに

 (1) 川上村の砂金
      川上村で砂金を採集してみようと思い立ったのは、つい1ケ月ほど前だった。16世紀
     ごろ、甲斐・武田信玄の時代に川上村で黄金二十万両(一説には二百万両)を採掘し
     たと伝えられている。当時の賑わいは「梓(あずさ)千軒」、「川端下(かわはけ)千軒」
     ともたとえられたようだ。
      2009年、川上村から出土した武田信玄の時代の陶器に”金粒”が付着しているのが
     確認され、単なる伝説ではなかったことが裏付けられた。
      この新聞記事の切り抜きを石友・小Yさんが送ってくれたのだが、単身赴任先に持参
     していないのが悔やまれる。

      坑道での「山金」採掘に先だって砂金採集が行われたのは歴史の教えるところで、
     川上村でも、砂金採集が行われたはずだと読んだ。

      2010年10月、恒例の「秋のミネラル・ウオッチング」の下見の時、川上村を東から西
     に流れる千曲川で、砂金の”寄せ場”と睨んだ場所でパンニングし、私のコレクション
     の中では大きめの砂金を数粒採集し、産出を確認できた。

      今回は、砂金の源を確認する目的で千曲川の支流でパンニングを行い、2か所で確
     認でき、この地域が豊かな砂金地帯であることを再認識した。

      帰りに、湯沼鉱泉に立ち寄り、社長に砂金採集結果を報告すると、「オラは(砂金採
     集なんかに)行かねえゾ」、と言いながらも、「あんなとこに、砂金があるダナ〜」、と
     感慨深げだった。

      「秋のミネラル・ウオッチング Part2」に参加されて、もし採集できなければ、腕が未
     熟と言われても反論できないだろう。

     千曲川の源流の1つに、埼玉県との県境にある「甲武信岳」から西に流れてくる「東沢」
    「西沢」などがある。埼玉県側には、「自然金」で有名な秩父鉱山があり、こちら方面から
    も砂金が流れて来ているのかを確認するのが、今後の課題だ。

 (2) 赤い砂金
      秋も深まり、『読書の秋』が訪れてきた。買いためた書籍を端から読み始めている。
     読書時間は、床に入ってから寝入るまでの短い時間なので、なかなか進まない。

      秋葉安一(安市)著、「岩石をたたいて」を読むと、『「金の本当の色は何色か」、とた
     ずねられた』、というフレーズが何回か登場する。
      「私がまだ若年頃だったし、金は黄金色にきまっているのが常識であるから、答えに
     つまっていると、その方は『金の色は赤い』と仰(おっしゃ)った 」、とある。

      上の説明で、”文字通り黄金色で・・”などと常識的なことを書いたが、”赤い砂金”が
     ある事を現物と文献で知った。

      幾度か出張したマレーシアで、あるとき、金製品の店に案内された。マレーシア人(
     特に中国系)は、金という形で資産を持つ人が少なくない。純度が高い純金の方が
     嵩(かさ=体積)が少なく、いざと言うときに持ち運びが便利なので、現地の人に人気
     が高い。
      ”18金の黄金色”を見慣れた私には、”赤銅色”の塊が本当に純金なのかという疑問
     が付きまとい、結局買わなかった。

6. 参考文献

 1) 小出 五郎:長野県川上村川端下(かわはけ)付近の鉱物,我等の鉱物,昭和16年
 2) 加藤 公夫:写真版 北海道の砂金掘り − 三津田三郎さんの採金技法 −,
                                北海道新聞社,昭和61年
 3) 秋葉 安一:岩石をたたいて,北海印刷,昭和62年
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