先日、単身赴任から持ち帰ったまま、1年近く積んである文書のケースがあるのに気付き、
開けてみると件(くだん)の地図が出てきたので表題のページをまとめてみる気になった。
『 石(鉱物・鉱石)無し県 』、とされていた千葉県だが、かつては地図に『父』の鉱山マーク
で表示するほどの鉱山があったわけだ。千葉の石友・Mさんによれば、「最近、名称未発表な
がら、特殊な構造のシリカ鉱物が南房総市で発見された」ようで、まんざら捨てたものでもなさ
そうだ。
さて、年度末の3月を迎え、卒業、進級、入学、入社、転勤など人生の節目(少し大袈裟か)
を迎える読者もおられると思う。
かく言う私も、某電子部品メーカーから招請をいただき、技術コンサルタントとして2010年3月
20日ごろから千葉県に単身赴任することが決まり、”件の地図”は、この前触れだったのかも
知れない。
”アラフォー”ならぬ、四捨五入すれば”アラセブ”に近い私だが、トヨタ車のリコール問題に代
表されるように、揺らいでいる『日本のものづくり』に技術士として微力でも貢献できれば、との
想いで応諾した次第だ。
『3度目のハンマーに封印』、などと気負わずに、自然体で仕事とミネラル・ウオッチングを楽
しもう、と思っている。
( 2010年3月 入手 )
鉱山マークの有る部分を中心に、拡大してみよう。
「あはかもがわ」駅と「ふとみ」駅の間、海岸際に鉱山を示す『父』マークがある。
@ 安房鴨川駅が「わがもかはあ」、と右から左へ読む”右書き”になっているので、
戦前(1945年以前)
A 「江見町」が町制施行した昭和8年(1933年)11月以降
B 総武本線「本八幡駅」ができる昭和10年(1935年)以前
ただ、、昭和6年(1931年)に開通した成田線の佐原-笹川間の線路が載っていない、
など、最新の情報を反映していない箇所もあるようだ。
これらから、地図が発行されたのは、昭和9年〜10年ごろだろうと推測する。
3.2 鉱山名
冒頭に紹介した「千葉県鴨川銅山の絵葉書」のページで、鴨川銅山(鉱山)があった場所
を調べた。「日本鉱産誌」によれば、安房鴨川駅の南方2kmにあった、とされる。現在の地
図上でプロットしてみると、”赤い点線の□” の範囲になる。
・「日本鉱産誌」にあるように
安房鴨川駅から南に
2km とすると、
赤い点線の四角の
範囲になる
・海の中や島では
あり得ないから
「青年の家」から
約200m北の
海岸近くだろう。
・「雀島」の近くの
ようだ。
・銅山近くの高い
位置からは
南南東の海上に
「仁右衛門島」が
見えたはずだ。
これと、上の地図の『父』マークの位置を見比べてみると、鉱山マークが約200mほど南に
ずれていて、現在「青年の家」がある、巾着山の採石場跡あたりだ。
『父』マークが採石場を示すこともあるが、巾着山で採石が始まったのは、昭和30年代末
(1965年ごろ)で、この地図に載るはずがない。
これらのことから、『父』マークが示しているのは、鴨川銅山(鉱山)である可能性が高い。
No | 所 在 地 | 鉱 山 名 | 鉱 物 種 | 1 | 一宮町 | 東浪見鉱山 | 砂鉄 | 2 | 鴨川市 | 鴨川鉱山 | 含ニッケル蛇紋石 | 3 | 鴨川市 | 嶺岡鉱山 | 含ニッケル蛇紋石 | 4 | 茂原市 | 茂原鉱山 | 天然ガス | 5 | 成東町 | 成東鉱山 | 天然ガス | 6 | 長生村 | 合同千葉鉱山 | 天然ガス | 7 | 飯岡町 | 飯岡鉱山 | 砂鉄 |
「天然ガス(ヨードを伴う)」や「砂鉄」は、海に面する千葉県の地質ならではの鉱物種だろう。
標本に納められた鉱物・岩石とその産地のリストを 氏が送ってくれたので、その一部を
この標本の年代判定の手掛かりは、現在なら産地名を富山県とするところ、『越中国』、
ミネラル・ウオッチングのストーブ・リーグの徒然に、古書店をのぞくと、偶然、年代判定に
@ 「発掘捏造(ねつぞう)」
他人事だが、鉱物界はどうなのだろうか?
A 「DNAからみた人類の起源と進化」
『地球上の現生生物はすべて単一の祖先から由来したもの』は、含蓄のある指摘だ。
(2) 「石(鉱物)なし県」
『 名称は未発表 (SiO2)・n(CH4,C2H6,C3H8,C4H10) n<3/17
千葉県でのミネラル・ウオッチングの楽しみが、また1つ増えた。
(3) 『3度目のハンマーに封印』
3回も「ハンマーに封印」と言っておいてそれを悉(ことごと)く破れば、”狼老人”のそしりを
− 高木勘兵衛・長島乙吉・宮沢賢治 −
( People Related with Kinsekisya Mineral Specimens
- Kanbei Takagi , Otokichi Nagashima , Kenji Miyazawa - , Tokyo )
ここに紹介し、年代判定してみよう。
No 鉱物・岩石種 産 地
1 石墨 越中国婦負郡高清水
2 硫黄 岩代国信夫郡一切經山
3 金鉱 陸中国鹿角郡辨天(べんてん)金山
・ ・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・
70 玄武岩 但馬国城崎郡玄武洞
71 熔岩 駿河国富士山
72 火山灰 大隈国櫻嶋
と旧国名になっていることだ。
明治4年(1871年)、”廃藩置県”が行われたのだが、郵便物のあて名などに旧国名を多
くの人が使い、明治の末から大正の初めになってようやく県名が浸透・定着したようだ。
したがって、「この標本は明治末期から大正初期のものだろう」、とS氏にお伝えした。
関する2冊の本があったので入手して読んでみた。
毎日新聞社のチームが、徹夜の張り込みでF元副理事長による旧石器捏造の一部
始終をスクープした。捏造がなぜ起こったかの原因の1つとして、遺物が出てきた地層
で判定する手法が日本では主流だということ。
極端に言えば、旧石器時代の地層からでてきた江戸時代末期の通貨・天保銭は
旧石器時代のもの、と判定して発表できる世界らしい。
旧石器と言えば、行商の傍ら、群馬県岩宿の赤土層から旧石器を発見した相沢氏が
有名だが、氏は「自分は岩宿遺跡という未熟児を産み落とした。未熟児だから専門医
(学者)に見せたら、専門医は『これは自分の子供だ』と言い出した」、とある講演で語
っている。
この本では、「学者と在野研究者の関係は現在も同じだ。在野の功績が認められる
には、遺跡を発見したうえで学会の権威の『お墨付き』に頼らざるを得ない。」と実態
を述べている。
”DNA鑑定”、というと足利冤罪事件を思い浮かべる読者も多いと思うが、最近はそ
の精度も向上し、新たに古生物学にも応用されているようだ。
従来の古生物学は、「化石」をベースにしているが、これは「石器」と同じで、捏造や
誤謬を伴う危険性がある。現に、『ピルトダウン人』の骨と称する捏造事件があり、な
がく人類学の進歩を妨げたとされる。
千葉の石友・Mさんが、「千葉県南房総市で日本の新鉱物が発見された」、と教えてくれ
た。
最近届いた「鉱物情報」によれば、新鉱物の産状・化学式は次のようだ。
砂岩中の脈の空隙に、方解石を伴い、無色透明八面体結晶の集合として産する。スピ
ネル型双晶をすることが多い。結晶の大きさは0.01〜2mm程度。有機物を含む特殊な
構造のシリカ鉱物で、2008年にIMAで日本の新鉱物として承認された。 』
2010年2月、千葉県の某電子部品メーカが人財(人材の間違いではない)を求めていると
打診があった。会社幹部はじめ製造関係者から、Mineralhuntersに、との招請をいただき、
3月20日ごろ、単身赴任することになった。
免れないので、今回は(も?)、気負わずに、自然体で仕事とミネラル・ウオッチングを楽し
もう、と思っている。
6. 参考文献
1) 日本鉱産誌編纂委員会編:日本鉱産誌 銅・鉛・亜鉛,東京地学協会,昭和31年
2) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
3) 長谷川 政美:増補 DNAからみた人類の起源と進化 −分子人類学序説−
海鳴社,1996年
4) 毎日新聞旧石器遺跡取材班,毎日新聞社,2001年
5) 松原 聡:日本産新鉱物・新産鉱物 鉱物情報No.162,鉱物情編集部,2010年