裏磐梯吾妻珪石山の鉱物

裏磐梯吾妻珪石山の鉱物

1.初めに

福島県裏磐梯吾妻珪石山は、昭和30年ころに、珪石を採掘したと聞いて
います。3年ほど前の今ごろ、初めてここを訪れ、燐灰石入り水晶や不透明
ながら30cmもある水晶の巨晶を採集した。
今回、3年振りで訪れ、水晶の双晶、輝水鉛鉱、珪孔雀石そして水晶の巨晶
などを採集した。
古い採石所跡で、しかもアプローチが急峻なので、安全には十分注意しましょう。
(2001年9月採集)

2.産地

郡山から国道49号線を会津若松に向かって走り、猪苗代湖が見えはじめて
しばらく走ると「常磐道→」のある「堅田中丸」の交差点があり、ここから
115号線に入る。
「高森」の集落から、福島吾妻裏磐梯線に入り、大倉川の橋を渡ってすぐに
川の上流に向かう林道に入る。大倉川の橋の袂にある、観音様が目印です。
約3km行くと、左側に廃屋(鉱山関係の宿舎との説がある)があり、その先で
林道は分岐している。
この手前の広場に駐車し、ゲートのある林道を約500m歩くと、右手の沢に
大きな砂防ダムが2つ見える。
この急な沢を上り詰めた上がやや平坦になり、珪石の採石場跡です。
吾妻珪石山の採石場跡【廃屋から見る】

3.産状と採集方法

ここは、下層が砂岩や粘板岩で、そこに花崗閃緑岩や石英脈が貫入し、
その晶洞部分に、水晶や各種の鉱物があります。
吾妻珪石山の露頭

4.産出鉱物

(1)水晶【Rock Crystal:SiO2】
ここの石英脈に晶洞はあるのですが、六角柱状の大きな水晶は少ない。結晶が
あっても、大きなものは白濁しているケースが多い。
前回は、晶洞の中から、透明な水晶で、中に棒状の燐灰石を含有するものが
採集できたのですが、今回は見当たらなかった。
その代わり、日本式双晶と見られる平板状のものと、V字形をした、異形の双晶を
採集した。

吾妻珪石山の水晶  左:日本式双晶   右:異形双晶
さらに、不透明だが15cmほどの巨晶を採集した。これは、採石場跡の特定の
場所にかたまって置いてあるものから、手ごろなものを持ち帰った。
吾妻珪石山の水晶巨晶
(2)輝水鉛鉱【Molybdenite:MoS2】
花崗閃緑岩の晶洞の中に、六角板状の自形結晶をしたものや花びら状のものなど、
数個の標本をかたまった場所で採集した。
吾妻珪石山の輝水鉛鉱【六角板状の自形結晶】
(3)珪孔雀石【Chrysocolla:CuSiO3/nH2O】
晶洞には、水晶に混じって、黄銅(鉄)鉱の結晶が酸化して赤茶色になったものが見られ、
それらが雨水で溶け出して、石英の上に皮膜状に付着したものと思われる。
ほかに、孔雀石も所々で散見できる。
黄銅(鉄)鉱が酸化して赤茶色になった部分には、糸状の自然銅も見出せた。
石英の上の皮膜状珪孔雀石

5.おわりに

(1)この近くに、「金堀」の集落があることからも分かるように、江戸時代から
会津地方の代表的な金・銀鉱山が沢山あったようです。
それらの多くは、明治21年に、磐梯山の大噴火で湖の底に沈んでしまった。
(2)採石場の近くには、山葡萄がたわわに実をつけていました。山葡萄の木は多い
のですが、実を目にするのは稀で、数房持ち帰り、「ワイン」を醸造中です。
山葡萄
(3)吾妻珪石山について、色々文献を探してみたところ、「福島県鉱物誌」に記述を
見つけることができた。
それによれば、ここは塊状石英の産地で、花崗閃緑岩中に脈状、レンズ状または不規則
塊状をなす石英で、ペグマタイトにつき物の長石帯・長石石英混交帯あるいは文像花崗岩を
まったく欠いている。
塊状石英は、乳白色ないし白色半透明のいわゆる白珪石で高純度である。
化学分析の結果、SiO2分は99.6%前後で、ほかにAl2O3とFe2O3を若干含んでいる。
「福島県鉱物誌」が引用している文献は、1962年(昭和37)のもので、この頃盛んに
採掘していたと想像しています。
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