2009年 秋のミネラルウオッチング オークション・データの分析

         2009年 秋のミネラルウオッチング
            オークション・データの分析

1. 初めに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春のGWと
   秋の年2回、定期的にミネラル・ウオッチングを開催するようになって9年目を迎えた。
    参加したみなさんのお話を聞くと、このミネラル・ウオッチングの楽しみはいくつかあるようだ。

    (1) 行ったことがない産地や新産地を訪れる
         2009年6月の月遅れGWミネラル・ウオッチングでは、前に湯沼鉱泉で働いていた
        Kさんのご厚意で、氏が20日ほど前に発見したばかりの、『第4松茸水晶産地』
        を訪れることができた。
         私たち夫婦を含め5人しか訪れていない新産地なので、奈良のK親子はじめ、
        皆さん”美味しい思い”ができたようだ。
    (2) 和気藹藹(あいあい)
         東京・H夫妻が「この採集会は、参加して楽しい」、とおっしゃる。どちらかといえば
        子ども、女性そして熟年男性が多いせいか、”ガツガツ”採集する人が少なく、良い
        場所を譲り合うなど、採集が楽しいようだ。
         参加者が、関東、関西、北陸、甲信越と広範囲、職業もマチマチで、この趣味が
        なければ出会うことがない方々と年に数回お会いできるのも楽しいようだ。
    (3) 宿での楽しみ
         このミネラル・ウオッチングは、1泊2日が基本で、長野県川上村にある湯沼鉱泉を
        常宿にしている。
         ぶっきらぼうだが優しい社長、いつも細かい心配りを忘れないお姐さんに会うのを
        楽しみにしている人々も多い。( ”モコモコ”の川上犬も )

         宿では、「宴会」、「玉手箱」、「オークション」、「大人の時間」そして「朝飯前の採
        集会」があるが、「玉手箱」、「オークション」を楽しみにしている人も多い。
         なぜなら、1級標本が市価の数分の一から1/10程度で入手できるからだ。

    さて、民主党新政権が発足して2ケ月になろうとしている。2010年度の予算編成で新たな
   試みが『事業仕分け』だ。一般企業なら、当り前の作業で、私もこれに似た仕事に携わって
   いた時期があった。
    そんなことから、2009年10月に開催したミネラル・ウオッチングのオークション結果を分析
   (仕分け)してみた。

     @ 市価に比べ割安なのに、落札平均単価は549円と高く、良質なものが多かった。
        ( 市価なら数千円か )
     A 出品単価が高い=”良質標本提供者”は、横浜・T夫妻
     B 落札単価が高い=”目利き”は、愛知・KD さん
     C 出品合計金額が高い=”出品貢献者”は、M.H
     D 落札合計金額が高い=”落札貢献者”は、兵庫・N夫妻
     E 私は、出品標本産地の半分近い45%を未だ訪問れていない。
     F 私が、初めて知った産地や初めて知った産出鉱物のある産地が約20%もある。

    などなど、面白い結果になり、出品した方、落札した方、ともに喜んでいただけたようだ。
   私自身、未訪問産地の標本や今回不参加の妻が好きな考古学の関連文献を落札でき満
   足しており、次回以降も継続したいと考えている。
    ( 2009年10月開催 )

2. 「オークション結果一覧」

    ミネラル・ウオッチングが終わって数日後、会計担当の愛知・Tさんが作成してくれた「オー
   クション結果一覧」が担当の兵庫・N夫妻から転送されてきた。そこには、出品者、鉱物名
   (資料名)、産地、落札者、落札価格などがEXCELデータでキチンと整理されていた。

          「オークション結果一覧」 【落札者省略】        
鉱物・資料名 産地 点数 出品者 落札
合計
金額
(円)
ウミユリ(化石) 岐阜県 3 愛知・KDさん 2,800
珪灰石 岐阜県春日鉱山 2 愛知・KDさん 500
吉村石 愛知県田口鉱山 2 愛知・KDさん 700
黄銅鉱 兵庫県 1 滋賀・Nさん 500
焼餅石 長野県武石村 3 滋賀・Nさん 1,900
ソーダ雲母 加保坂 1 滋賀・Nさん 500
輝水鉛鉱 京都府大江町仏性寺 2 滋賀・Nさん 1,500
緑水晶 岐阜県柿野 1 滋賀・Nさん 500
煙水晶 滋賀県浅井町山門 6 滋賀・Nさん 2,700
菱亜鉛鉱 滋賀県石部金山 4 滋賀・Nさん 1,200
砂金 山梨県 1 横浜・Kさん 700
灰長石(真鍮入り) 箱根町須雲橋 2 横浜・Kさん 1,900
緑柘榴石 秩父鉱山 2 東京・H夫妻 1,600
方鉛鉱、水晶 白板鉱山 1 石川・Yさん 1,100
紫水晶 石川県尾小屋鉱山 1 石川・Yさん 200
緑鉛鉱 石川県尾小屋鉱山 7 石川・Yさん 700
満バン柘榴石 長野県 5 京都・T夫妻 1,500
自然砒 福井県赤谷鉱山 1 愛知・Tさん 700
トパズ 岐阜県中津川市 2 愛知・Sさん 400
写真(大) 於:甲武信鉱山 3 滋賀・Oさん 900
写真(小) 於:甲武信鉱山 6 滋賀・Oさん 600
チタン鉄鉱 奈良県穴虫 1 滋賀・Oさん 200
鉄バン柘榴石 奈良県穴虫 1 滋賀・Oさん 100
透緑閃石、滑石 愛媛県五良津 1 滋賀・Oさん 100
水晶(日本式双晶) 長崎県 1 滋賀・Oさん 1,100
カリ長石(微斜長石) 山梨県黒平 6 M.H
一部ASさんの
恵与品
3,900
自然硫黄 長野県米子鉱山 12 M.H 1,400
ザバリツキー石 岐阜県高根鉱山 6 M.H 1,800
自然金、ホセ鉱A 甲武信鉱山貯鉱場 4 M.H 13,200
四大文明展図録 東京国立博物館
2000-2001年
1 横浜・T夫妻 4,000
  合  計  30   89   11 48,900

    30の産地(会場)の鉱物と文献、写真など89点が出品され、落札金額合計 48,900円に
   なっている。
    この売上を19名の参加者で割ると、一人あたり約2,600円、宿泊費(含む飲み物代)が安く
   なった勘定だ。

3. 「オークション結果」の仕分け(分析)

 (1) 落札平均単価
      落札平均単価=落札合計金額/出品点数とすると、落札平均単価は 549円になる。
     市価なら数千円になるわけで、良質なものが多かったことを示している。

 (2) 良質標本提供者
      出品単価=出品金額/出品点数 とし、最も高い人(ファミリー)を良質標本提供者とす
     る。
      横浜・T夫妻が1点出品し、4,000円で落札され、ダントツ1位だ。

順位 名前 出品
単価
(円)
備  考
1 横浜・T夫妻 4,000 ”一点豪華主義”
2 横浜・Kさん 867  
3 東京・H夫妻 800  

 (3) 目利き
      目利き度=落札金額/落札点数 とし、単価の高い=質の高い標本を落札した人(ファ
     ミリー)を”目利き”とする。
      愛知・KDさんが1位で、出品貢献者、落札貢献者の上位にも名が見える。

順位 名前 落札
単価
(円)
備  考
1 愛知・KDさん 1,650 落札4点  
2 M.H 1,029 落札7点
内写真3点  
3 東京・H夫妻 713 落札8点  

 (4) 出品貢献者
      出品合計金額の高い順に、出品貢献者とした。世話人のM.Hになっているのは妥当な
     ところだろう。

順位 名前 出品
合計
金額
(円)
備  考
1 M.H 20,300 出品28点  
2 滋賀・Nさん 8,800 出品18点  
3 愛知・KDさん 4,000 出品7点  

 (4) 落札貢献者
      落札合計金額の高い順に、落札貢献者とした。全出品の20%近い16点を落札した兵庫
     N夫妻(正確には、Nさんの奥さん)が1位だ。

順位 名前 落札
合計
金額
(円)
備  考
1 兵庫・N夫妻 8,000 落札16点  
2 M.H 7,200 落札7点  
3 愛知・KDさん 6,600 落札4点

    以下は、私に関することだが、参加者の多くの人も同じような状況だと思われる。なぜなら、
   100円単位にもかかわらず、落札平均単価が500円近くで、1つの標本を多くの人(ファミリー)
   が競り合っていたのは、『未採集(未入手)標本』や『未訪問産地』があったため、と推測され
   る。

 (5) 産地訪問度
     私は、出品標本産地の半分近い45%を未訪問で、関西や中部に住む人たちよりも”足が
     短い”
 ようだ。
      自分が住んでいる山梨県内にも訪れたことがない産地があるのは、「砂金」、という
     余り興味がない鉱物だからだ。

 鉱物・資料名  産   地   備   考
ウミユリ(化石) 岐阜県   
珪灰石 岐阜県春日鉱山   
黄銅鉱 兵庫県   
輝水鉛鉱 京都府大江町仏性寺  
煙水晶 滋賀県浅井町山門 OK牧場の近く?
菱亜鉛鉱 滋賀県石部金山 灰山?
砂金 山梨県   
灰長石(真鍮入り) 箱根町須雲橋   
方鉛鉱、水晶 白板鉱山   
水晶(日本式双晶) 長崎県  

     出品された標本産地(私の出品を除く)に占める私が訪れたことがない産地の比率を
     「未訪問率」として地域別に出してみると、下の図のようになった。

       

  「地域別未訪問率」

・北陸、四国が0%なのは、産地の
 数が限られているせいだろう。
・私が住む甲信越だけでなく、
 関東 が50%は、新産地が続々
・関西が57%なのは、やはり遠い
 ことと、欲しい鉱物が今採れる
 可能性の低さだろう。
・ミネラル・ウオッチングで訪れた
 ことがない九州が100%は当然だ。


    私が、初めて知った産地や初めて知った産出鉱物がある産地が約20%もあるのは、驚き
   だった。

4. 私の落札品

    今回、私が落札できた標本、資料をご紹介する。

鉱物名
資料名
産地・会場 出品者 落札
金額
(円)
     写   真 備 考
ウミユリ(化石) 岐阜県 愛知
KDさん
1,500  
菱亜鉛鉱 滋賀県
石部金山
滋賀
Nさん
300  
灰長石
(真鍮入り)
箱根町須雲橋 横浜
Kさん
1,000  
写真(大) 甲武信鉱山 滋賀
Oさん
300   
写真(小) 甲武信鉱山 滋賀
Oさん
300 不参加者
への贈呈用
2点含む
四大文明展
 図録
東京国立博物館
2000-2001年
横浜
T夫妻
4,000  

5. おわりに

 (1) 未訪問産地の多さ
      出品された標本産地のうち、45%の産地を訪れたことがなく、20%はその存在、あるい
     は、そこで産出する特定の鉱物を知らなかったのには、我ながら愕然としている。
      この理由を考えてみると、いくつかありそうだ。

      (1) 続々発見される新産地
           特に、関東・甲信越では、新しい産地が次々に発見されるが、私にとって余程
          魅力のある鉱物でない限り、訪れようとは思わない。
      (2) 情報不足と採れる可能性?
           九州の産地をいつか巡検したいと思いながら、情報がないため、訪れていない。
          情報がなければ、費用と時間を掛けて行っても採れるあてもなし・・・・・・・・。
      (3) 地元の素晴らしさ
           地元・山梨県とそのお隣、長野県には素晴らしい産地が多く、ついつい地元の
          産地を繰り返し訪れる傾向がある。
           この2、3ケ月でも地元産地を訪れると、遠く関西のネットでよく知られた某氏
          の一団や関東のメンバーに会ったことが何回かあった。
           わざわざ遠くから来るのは、この地域がそれだけ素晴らしいからだろう。

 (2) 「オークション」と「玉手箱」
      「オークション」と「玉手箱」を始めたのは、ミネラル・ウオッチングを開催するようになっ
     て、数年してからだったと思う。
      オークションには、”逆ブービー方式”を採用していたが、集計が煩雑なのと、出品者の
     割り切れない気持ち解消、そして湯沼鉱泉社長へのお見舞いにするため、売上増加を
     図る必要があった2008年夏から”青天井方式”を採りいれてみた。参加者が良識ある
     方々なので、格別不都合もなさそうなのでこのまま定着しそうだ。

      「玉手箱」は、益富先生の始められたものにならって、採用している。「ラベル」を必ず
     付けて、出品していただいている。
      「オークション」品と同じものや皆さんの『未訪問産地標本』や『新産地標本』が並ぶこ
     ともあり、好評なので、これも続けていく積りだ。

5. 参考文献

 1) 益富 壽之助:鉱物  −やさしい鉱物学 -,保育社,昭和60年
 2) 草下 英明:鉱物採集フィールド・ガイド,草思社,1988年
 3) 中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年
 4) 松原 聡、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
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