茨城県朝日トンネルの 『 弗素燐灰石 』







          茨城県朝日トンネルの 『 弗素燐灰石 』

1. 初めに

    2012年2月中旬、茨城県自然博物館で開催された『 鉱物、大好物展 』を妻と2人で訪れ
   たのは既報のとおりだ。

         茨城県自然博物館  『 鉱物、大好物展 』
    ( " I Love Minerals " , Ibaraki Nature Museum , Ibaraki Pref. )

    茨城県自然博物館では、多数の鉱物標本が多くの人々から寄贈され、大切に保管されて
   いる。これらのなかに、「朝日トンネル」の工事に伴って産出した標本が展示してあった。

     『 寄贈された標本@
       トンネル工事現場を探る
       筑波山麓を南北に貫く道路として、朝日トネルが2012年3月開通する。このトンネルの
      掘削に伴って、緑柱石やマンガンを含む燐灰石などが採集された。            』

      
               トンネル採掘現場写真

    私が会員になっている京都・日本地学研究会が年4回発行する、「地学研究」誌の60巻
   第2号を読むと 「茨城県朝日トンネルからの産出鉱物について」と題する記事があり、巻末
   「標本玉手箱」のページで「土浦市朝日トンネルの弗素燐灰石」が配布されるとあったので
   返信用封筒を同封し依頼したところ、1週間ほどで送られてきた。

     
             「弗素燐灰石」
       【土浦市朝日トンネル南口坑】産

    『 長波紫外線ランプで、黄〜黄金色の蛍光を発する、とあるのだが、私の持っている
     ミネラライトでは全く蛍光しないのが残念だ。近いうち、長波紫外線ランプを手に入れね
     ば・・・・・・・。                                              』

    これらの情報をHPに掲載して間もない4月中旬、神奈川県の石友・Kさんから、「鑑定依頼」
   とともに、朝日トンネル産鉱物標本を恵与いただいた。それらは、灰緑色、脂ぎった光沢から、
   「弗素燐灰石」だと鑑定した。
    4月は仕事が忙しく、私用も立てこんでいたので、5月連休後にKさんに産地を案内していた
   だく予定だったが、GWに現況確認に訪れたKさんからのメールには、無情にも『絶産』の2文
   字があった。

    『いつまでもあると思うな□と○』、の鉱物産地だが、余りにも早い産地の変貌には正直驚く
   と同時に、今となっては貴重なものになった標本を送ってくれたKさんに感謝している。
    ( 2012年4月標本恵与 5月絶産情報 )

2. 産地

    「地学研究」誌はじめ多くの情報がある。茨城県のHPには、朝日トンネルの地図が掲載し
   てあるので引用させていただいた。
    トンネルは、南北から掘り進んだようで、それぞれ「南口(土浦側)坑」、「北口(石岡側)坑」
   と呼び、それぞれ産出鉱物に特徴があった。

     
          朝日トンネル
       【茨城県のHPから引用】

    朝日トンネルの東には燐酸塩鉱物やペグマタイト鉱物で脚光を浴びた「雪入(ゆきいり)」、
   北西には緑柱石で有名な「仏生寺」などの産地があり、必然性を感じる場所だ。

    茨城県かすみがうら市雪入の鉱物
    ( Minerals from Yukiiri , Kasumigaura City , Ibaraki Pref. )

    2001年11月北関東鉱物採集行
    (Mineral Hunting in Northern Kanto Area in Nov.2001,Tochigi,Fukushima and Ibaraki Pref. )

3. 産状と採集方法

    石友・Kさんや「地学研究」誌の情報を総合すると、トンネル南側は「両雲母花崗岩」、中央
   以北はホルンフェルス化した堆積岩に黒雲母花崗閃緑岩脈が貫入しており、これらのペグマ
   タイト脈や石英脈に伴って、「鉄電気石」、「緑柱石」そして「弗素燐灰石」などが産出したよう
   だ。

     
                   産状
              【撮影:石友・Kさん】

4. 産出鉱物

 (1) 弗素燐灰石【FLUORAPATITE:Ca5(PO4)3F】
      鉄電気石を伴う花崗岩に粒状で産出する。ここの花崗岩には晶洞が見られず、弗素燐
     灰石をはじめとする産出鉱物で、結晶面が明らかなものは希なようだ。
      下の写真の標本は、灰緑色で脂ぎった光沢を示す六角柱状の結晶面と錐面が観察で
     きる貴重なものだ。
      石友・Kさんがカッターナイフの刃で引っ掻くと白い粉が出たそうで、モース硬度5と軟ら
     かい燐灰石の特徴をよく示している。
      また、長波紫外線ランプで、黄〜黄金色の蛍光を発するするものとそうでないものがあ
     るようだ。

     
                 弗素燐灰石
            【採集・撮影:石友・Kさん】

5. おわりに

 (1) 『 いつまでもあると思うな□と○ 』
      2012年4月、石友・Kさんから鑑定依頼があって、1ケ月後のGW明けに現地を案内して
     いただく予定だったが、2週間後に届いたメールには『絶産』の2文字があった。
      この産地は、東京から近く、しかも工事現場なので、早晩産地は消滅するだろうと予想
     はしていたが、余りの速さには驚いた。

      2月の時点で「弗素燐灰石」はじめ各種の鉱物が産出する情報は得ていたのだが、仕
     事の忙しさにかまけ、素早く行動しなかったので手遅れになったようだ。

      夏場の電力不足対応で、4月〜6月の土曜日はラインが出勤になっている。私も時々、
     土曜日出勤することがあり、まとまった時間をミネラル・ウオッチングに割けないのが今の
     悩みだ。

6. 参考文献

 1) 江坂 et al :茨城県朝日トンネルからの産出鉱物について 地学研究 vol60 No2
            日本地学研究会,2012年
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