このミネラル・ウオッチングの常連、兵庫県・Nさん夫妻は、ある”事情”(わかる人は
わかるはず)で、参加できないのを残念がっていた。そこで、年内採集タイムリミットの
12月初めに、案内することにした。
前日、山梨県の新産地を回り、湯沼鉱泉に行くと社長はじめ、生まれて2ケ月になる
”モコモコ”の川上犬までが大歓迎してくれた。Nさんの奥さんは、社長が採集した標本
をいただき、ご機嫌だった。
熱めの鉱泉に浸かり疲れを癒した後、ビールを飲みながら、お姐さんの造った心の
こもった、美味しい料理をいただき、静かに夜が更けていった。
翌朝、眼を覚まして窓の外を見るとビックリ、一面の銀世界だった。社長の「気を
つけて行けよ」、の声を背に、御所平穴沢の産地を目指す。妻の4WDの軽自動車は、
晩秋のミネラル・ウオッチングで性能保証済の上、スタッドレスタイヤを装着したので
雪道も難なく登り、車で行ける最高地点に到達した。
雪を踏みしめながら産地を目指す。産地は南側斜面にあるため、積雪が全くなく
ズリも凍結していない。ズリを掘って探すが、なかなか「電気石」は出てこない。Nさんが
”松茸水晶があった!!”、と見せてくれたのは、3cmほどの立派な単晶だった。
ようやく、私が1つ発見し、「見本」に進呈すると眼が慣れたのか、やがて奥さんが
”あった!!”と歓声を上げた。
産地に到着するなり焚き火を起こし、頃合をみてアルミフォイルに包んだサツマイモ
を入れて置き、お昼ごろ取り出すと”ホクホク”と美味しかった。
最後に「試掘坑」を見学するなどして、産地を後にした。結局、「電気石」は3ケ採集
できただけだった。しかし、自宅で採集品をクリーニング、鑑定してみると私の採集し
た中に、「板チタン石・鋭錐石の群晶」があった。またまた妻が『母岩付き団球状電気
石』という面白い標本を採集した。妻は、穴沢と”相性”が良いようだ。
同行いただいた兵庫・N夫妻に厚く御礼申し上げます。
( 2007年12月採集 )
この本に記載された写真と現在の状況は、同じ場所とは全く思えないほどに変貌
している。
この産地は、社長や地元の小Yさんによれば、正しくは「御所平(ごしょだいら)」ある
いは「御所平穴沢(あなざわ)」と呼ぶので、このHPも「穴沢」 としてある。
産地だけでなく、「扁平電気石」の外観もわかりにくく、湯沼鉱泉に宿泊し、「天然
水晶洞」で、産状と標本を良く見た上で、社長に産地を聞いて訪れることをお勧め
する。
10年以上前、湯沼鉱泉社長が再発見した時には、坑内から母岩付電気石が採集
できたそうだが、今ではもっぱらズリでの表面採集かズリを掘ってみることになる。
今回は、歯ブラシだけを持参し、怪しげなものは擦って確認する作戦をとった。
妻が採集し、『 またまた”母岩付き”採集!? 』 と一時騒然となった標本は
拡大写真の毛状〜針状結晶の集合から「苦土電気石」に間違いない。
しかし、全体の形が『団球状』であり、『扁平電気石』とは呼べないだろう。何が
違ってこのようになるのか、興味深い。
(2) チタン鉱物
穴沢では、チタン鉱物が採集できるとの報告があるが、今まで一度も採集でき
なかった。( 気付かなかった? )
今回、球状〜粒状の白雲母を伴う水晶の群晶の一部が層状に真っ黒になって
いる標本を採集した。
黒色部分を実体顕微鏡で観察すると、「板チタン石」と「鋭錐石」が密に集合した
”リッチ”な標本である。
@ 鋭錐石【ANATASE :TiO2】
黒色、金属〜ガラス光沢、8面体(正方錐)で、長軸と直角方向に条線がある
特徴的な結晶として、雲母の上に見られる。
A 板チタン石【BROOKITE :TiO2】
黄褐色半透明のガラス光沢〜真っ黒い金属光沢、薄い六角板状で鋭錐石を
伴って雲母の上に産出する。
(3) 水晶/石英【QUARTZ:SiO2】
ズリには、各種の水晶の単晶、群晶が見られ、形態、インクルージョンにもバリ
エーションが見られる。
@ 松茸水晶【 Scepter Quartz 】
A インクルージョン(内包物)
インクルージョンには、「磁硫鉄鉱」などの金属鉱物、「雲母」などの珪酸塩鉱
物が見られる。
(4) 褐鉄鉱/主に針鉄鉱【Limonite/GOETHITE:FeOOH】
磁硫鉄鉱の鉄分が水に溶け、晶洞部分などに溜まり、面白い形状に成形した
褐鉄鉱が見られることがある。
表 裏
褐鉄鉱/主に針鉄鉱
湯沼鉱泉の社長に話すと、「欲しい、欲しい、とガツガツしないから良いのでは
ないか」、との事だった。
(2) 焼き芋
産地に到着するなり枯れ木を集め焚き火を起こし、頃合をみてアルミフォイルに
包んだサツマイモを入れて置いた。1時間半ほど経ったお昼ごろ取り出して食べると
”ホクホク”して美味しかった。
寒い日には、『火は何よりのご馳走』で、その上、焼き芋まで味わうことができ、真
冬のミネラル・ウオッチングの楽しみ方が1つ増えた。
( 真夏の”自家農園産スイカ”とペアにすべく、2008年は”サツマイモ”作りに挑戦
せねばと思っている )