「マニュアル」に従い、妻が挑戦し、「117粒を発見した」、と言ったが、私が見るとサファイ
アでないものが混じっていて、正確には115粒だった。これでも、マズマズ合格なのだろう。
私は、「マニュアル」にない、実体顕微鏡を使う方法で妻の選鉱カスの中から、さらに33個
のサファイアを発見し、合計148個になった。
この結果をYさんに報告すると、神奈川の石友・Hさんに伝わり、Hさんから、「実体顕微鏡を
使って、朝4時までかけて150粒発見した」、とメールがあった。
Yさんから、『 御両人とも、小生想定外のとんでもない作業をなさっておられたのだ。
H氏の「目が疲れた」との一文も漸く(ようやく)ガッテン出来ました。しかしここまで来ると
『将に獣偏、病垂れの世界だ!』、と改めて尊敬の念を深くした次第です。』 、とメールが
あった。
この頃、私は選鉱カスをもう一度実体顕微鏡を使って選鉱し直していた最中で、約1/3
終わった時点で153粒を得ていたので、「最終的には160粒を超えるだろう」、と見込んで
いた。
その後、2日ほどかけて全部を選鉱し終えると、最終的に165粒になった。律儀なYさんが
何人(家族)かに送った結果も知ることができた。
この砂をYさんが採集した「竹田川」がどこか判らない、とHPに書いたところ、千葉の石友・
Mさんと、当のYさんから、2002年11月に、奈良・Aさん親子に案内していただいた川だと
教えていただいた。
あの川は、生活雑排水が流れ込み、11月でも悪臭がし、ヘドロ状だったことを思い出し
貴重な川砂を恵与してくれた奈良の石友・Yさんに深く感謝している。
( 2009年7月採集 )
場所がどこか判らなかったのだが
想像通り、近鉄南大阪線・二上山駅
南を二上山から流れ落ちる小川だと
石友・Mさん、そして勧進元・Yさんに
教えていただいた。
草下先生の「鉱物採集フィールド・ガイド」に、『 奈良県と大阪府の境にある二上山の
黒雲母安山岩の中に、細粒のざくろ石、チタン鉄鉱とともに、青色の鋼玉が多少含まれ
ている 』 、との書かれているので探しに行ったのだった。
結果は、HPにも書いたとおり、”多量の鉄礬柘榴石”を採集しただけで、未練が残る
3.2 採集方法
「作業工程」
「選別の順番」
妻は、これに従って、ものの1時間で選別を終え、「117粒」を発見した。
(2) 私流【実体顕微鏡を活用】
そこで、一度選別した残り砂をもう一度選別することにした。その方法をもう一度
@ 検査皿に川砂を入れる。
A 実体顕微鏡下で検査
B サファイア 発見!!
ほかの鉱物も同時に見つける。
C 回収
楊枝の先端を唾で湿らせると
この方法は、時間が掛かるのが欠点で、私は延べ6時間(1回目)+6時間(2回目)
(3) 一般的な方法
『 縁のある盆に白紙を敷いて、その上に金剛砂(川砂)をうすくひろげ、つま楊子
@ 色が薄く、石英の破片にしか見えない。
@、A を見逃すのは解るにしても、B が数個あったのは意外だった。
(2) 腕の良し悪し
それでも、ランキングが気になるのは、悲しい性。知りえた情報からまとめてみた。
これ以上選鉱するのは
正確な数字?
上表の順位は、ラウンド中、カウント中、もしかして再チャレンジするかも知れない
ただ、上の表を見ると、次のようなことがわかってくる。
@ 袋による”当りハズレ”は少ない。
(3) 次なる楽しみ
「頑火輝石」や「珪線石」など、私が住む山梨周辺ではなじみが薄い鉱物が多く、
( Almandine of Anamushi , Kashiba City , Nara Pref. )
産地の1つだった。
(1) Yさん流
Yさんの”ロゴ・マーク(?)”入りのA4サイズの用紙3ページにわたって、「用意する
道具類」、「作業工程」そして「選別の順番」を詳しく書いてくれた。
「用意するもの」
・ 白いA4サイズの紙
・ スプーン
・ 磁石(強力なネオジム磁石が望ましい)
・ ピンセットまたは爪楊枝
・ 標本箱
・ ミネラライト
@ スプーン半分の砂を紙の上に広げる
A 磁石でざくろ石などの鉄系鉱物を除く
B サファイア(青色鉱物)をピックアップ
C 紙を180度回転させ、再選別
@ サファイア
A 珪線石
B 頑火輝石
C ジルコン(ミネラライト使用)
私の専門の1つが、「パターン認識」で、人が目視で検査した場合、必ず”見落とし”
(サファイアを見逃している)と”虚報”(サファイアでないものをサファイアと判断する)
があると信じている。
お知らせする。この方法は、実体顕微鏡を使うという点で、奇しくも神奈川・Hさんの
方法と同じだった。
検査皿(直径約5cmのプラスチック容器の蓋)
に、川砂を散布する。
( 粒同士が重ならないように )
検査皿を上から下に、左右に動かしながら
選別する。
鉄礬ざくろ石の赤系が多い視野の中で
サファイアは、透明〜半透明、鮮やかな
青色で目立つ。
( これが難しい )
サファイアとそれ以外の鉱物を
分けて、プラスチック丸ケースに
回収する。
簡単に吸着
丸ケースの端で楊枝を叩くと
簡単に離れる。
(離れないのは唾のつけ過ぎ)
かかった。
( 物は考えようで、欠点は、「長く楽しめる」、という長所でもある )
草下さんの「鉱物採集フィールド・ガイド」に載っている一般的なやり方は次の通
り2)だ。
Yさんのやり方との違いは、「ルーペを使う」ことだろう。
(枝?)とルーペを持ってはじのほうから虱(しらみ)つぶしに見つけるのだ。
なにしろ相手はけし粒のようなものだから、よほど心に余裕のあるとき、暇な
とき、そして体調がよいとき(目がかすんだり、くしゃみがでそうなときはやめた
ほうがよい)でないとだめだろう。
砂をなるべく平にならして、明るい光(日光がよい)をあててみると、小豆色の
ざくろ石の間で心なしか ちらっ青く光って見えるものがある。良く場所を確か
めたら、楊子(枝)の先でそこを中心に丸を描き、まわりの砂をどけておいてか
ら、丸の中の砂をじっくりとかきよせて探しだすのだ。
興にのると一日中やっていてもあきることはないが、小さいビニール袋一杯
ぐらいからせいぜい10個も拾い出せればよいほうだろう。それでも青く透徹した
六角板状のサファイアを発見したときの嬉しさは、実際やってみなければ分ら
ないだろう。 』
4. 産出鉱物
今回も、引き続きサファイア(鋼玉)のみ紹介する。
鉱物種名
俗名
【英名:組成】
標 本 写 真 備 考
鋼玉(コランダム)
サファイア(Sapphire)
【CORUNDUM:Al3O3】
薄板状
六角柱状〜厚板状
六角柱状、板状が
理想形
結晶図
【検索図鑑から引用】
5. おわりに
(1) 見落としやすいサファイア
2回目の選鉱で発見したサファイの特徴を調べてみると、意外なものがあった。
A 形が薄板状でなく、団塊状に近い。
B 完全な六角厚板結晶
「 マニュアル 」通りに選鉱している人は、もしかしたら、妻と同じように、『六角柱状
〜厚板状』 の理想的な結晶を多数見逃しているのではないだろうか。
「 ”青玉 100粒以上含?”と書かれ、100粒以上採れたかどうかで、腕の良し悪しが
わかる仕掛けになっているようだ 」、と勝手に解釈していたが、勧進元のYさんには、
そのような意図は毛頭なかった、とメールにあった。
順位(暫定) 氏 名
(住所)発見個数 備 考
1 Mineralhunters
(山梨)165 実体顕微鏡
2 H氏
(神奈川)150+α?
実体顕微鏡
・・・・・・・、と中止宣言 3 Sさんの奥さん
(愛知)100+α 目視
4 Kさん
(愛知) 86 目視
5 Kさん
(愛知) ? ラウンド中
5 Hさん
(愛知) ? ラウンド中
方々ばかりですので、あくまでも暫定であることをお断りしておきます。
暫定1位、2位の発見数が165粒と150+α粒と差が10%程度と僅かで、
袋による含有率の差は少ないようだ。
A 方法による差
発見数の差は、むしろ方法による差が大きいようだ。実体顕微鏡を使う方
法だと、使わない方法に比べ、約1.5倍〜2倍発見できるようだ。
本来であれば、このページで『分類待ちの鉱物たち』について、報告するはずだった
が、「サファイア の続き」でお茶を濁してしまった。
同定をどうすべきか、悩んでいる。もうしばらく、お待ちください。
6. 参考文献
1) 柴田 秀賢、須藤 俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
2) 草下 英明:鉱物採集フィールド・ガイド,草思社,1988年