今回不参加だったYさんが、雑誌「M」に載っている事が話題の1つになった。雑誌「M」は
なかなか入手できないので、茨城・Tさんが重品を3冊提供してくれ、急遽開いたジャンケン
大会の勝者の手に収まった。
参加者の最近の採集品を拝見する機会があったが、奈良・Yさんが某所で採集した
「ブルー・トパズ」は結晶の完全さ、色、透明感そして大きさからして、まちがいなく『日本一』
の折り紙がつくものだった。
次にYさんが取り出したのは、「穴虫のサファイア」だった。丸ケースに、大粒のものだけ
約200ケ、もう1つには1,500ケあまり納まっていた。見つけるたびに、”正”の字を書いて
1ケずつ数えた、と聞いて、呆れたのを通り越し、その徹底振りには感心した。
Yさんが「サファイアが入った砂を送りましょうか?」、と言ってくれたので、いただくことに
した。
ミネラル・ウオッチングが終わって10日ほどして、「100gの砂」と「マニュアル」そして「鉄礬
柘榴石」、「チタン鉄鉱」が送られてきた。
砂が入った袋には”青玉 100粒以上含?”と書かれ、100粒以上採れたかどうかで、腕の
良し悪しがわかる仕掛けになっているようだ。
「マニュアル」に従い、妻が挑戦し、「117粒を発見した」、と言ったが、私が見るとサファイ
アでないものが混じっていて、正確には115粒だった。これでも、マズマズ合格なのだろう。
私は、「マニュアル」にない、実体顕微鏡を使う方法で妻の選鉱カスの中から、さらに33個
のサファイアを発見し、合計148個になった。
サファイアを選びながら、「高温石英」「珪線石」「正長石」「紫蘇輝石(頑火輝石もしくは
鉄珪輝石)」なども選り分けた。
私が発見した中には、コランダム(鋼玉)結晶の理想形である『六角柱状』のものがいくつ
かあり、”Our Collection” を飾ることになった。
集中してサファイアを探していると暫し(しばし)暑さを忘れることができた。貴重な川砂を
恵与してくれた奈良の石友・Yさんに深く感謝している。
( 2009年7月採集 )
近鉄南大阪線・二上山駅周辺の
小さな流れなのだろう、と想像
している。
草下先生の「鉱物採集フィールド・ガイド」に、『 奈良県と大阪府の境にある二上山の
黒雲母安山岩の中に、細粒のざくろ石、チタン鉄鉱とともに、青色の鋼玉が多少含まれ
ている 』、との書かれているので探しに行った。
結果は、HPにも書いたとおり、”多量の鉄礬柘榴石”を採集しただけで、未練が残る
3.2 採集方法
「作業工程」
「選別の順番」
妻は、これに従って、ものの1時間で選別を終え、「117粒」を発見した。
(2) 私流【実体顕微鏡を活用】
そこで、妻が選別した残り砂を選別することにした。Yさんのマニュアルには、同じ
@ 検査皿に川砂を入れる。
A 実体顕微鏡下で検査
B サファイア 発見!!
ほかの鉱物も同時に見つける。
C 回収
楊枝の先端を唾で湿らせると
この方法だと、妻が選んだカスから、10粒近い六角形の理想的な結晶を含め33粒
採集できたサファイアの重さは計測していないが、単純に1mm角、厚さ0.5mm、
W = 1× 1×0.5×10-3×4×148 ≒ 0.3g
Yさん流の単位を使えば、『1カラット』余り、真に、宝石クラスだ。
(2) ランキング
(3) 次なる楽しみ
( Almandine of Anamushi , Kashiba City , Nara Pref. )
産地の1つだ。
(1) Yさん流
Yさんの”ロゴ・マーク(?)”入りのA4サイズの用紙3ページにわたって、「用意する
道具類」、「作業工程」そして「選別の順番」を詳しく書いてくれた。
「用意するもの」
・ 白いA4サイズの紙
・ スプーン
・ 磁石(強力なネオジム磁石が望ましい)
・ ピンセットまたは爪楊枝
・ 標本箱
・ ミネラライト
@ スプーン半分の砂を紙の上に広げる
A 磁石でざくろ石などの鉄系鉱物を除く
B サファイア(青色鉱物)をピックアップ
C 紙を180度回転させ、再選別
@ サファイア
A 珪線石
B 頑火輝石
C ジルコン(ミネラライト使用)
私の専門の1つが、「パターン認識」で、人が目視で検査した場合、必ず”見落とし”
(サファイアを見逃している)と”虚報”(サファイアでないものをサファイアと判断する)
があると信じている。
人がもう一度、(同じ方法で)選別するだけで、”採集率が20%アップする”、とあった
が、方法を変えてみることにした。
検査皿(直径約5cmのプラスチック容器の蓋)
に、川砂を散布する。
( 粒同士が重ならないように )
検査皿を上から下に、左右に動かしながら
選別する。
鉄礬ざくろ石の赤系が多い視野の中で
サファイアは、透明〜半透明、鮮やかな
青色で目立つ。
( これが難しい )
サファイアとそれ以外の鉱物を
分けて、プラスチック丸ケースに
回収する。
簡単に吸着
丸ケースの端で楊枝を叩くと
簡単に離れる。
(離れないのは唾のつけ過ぎ)
のサファイアが見つかった。
この方法は、時間が掛かるのが欠点で、私は延べ6時間かかった。
( 物は考えようで、欠点は、「長く楽しめる」、という長所にもなる )
4. 産出鉱物
今回は、サファイア(鋼玉)のみ紹介する。
鉱物種名
俗名
【英名:組成】
標 本 写 真 備 考
鋼玉(コランダム)
サファイア(Sapphire)
【CORUNDUM:Al3O3】
薄板状
六角柱状〜厚板状
六角柱状、板状が
理想形
結晶図
【検索図鑑から引用】
5. おわりに
(1) サファイアの含有率
Yさんが送ってくれた川砂の重さは100g、とあったが、念のため自宅の秤で計測した
ところピッタリ100gだった。
さすがに、几帳面なYさんだ。( 計り直すお前のほうが一段上だ・・・蔭の声 )
ピッタリ 100g!
比重を4.0として、148個の重量Wは次のようになる。
このような貴重な川砂を贈ってくれたYさんに、厚く御礼申し上げる。
Yさんのことだから、何人かに砂を送り、誰が何個発見したかを記録しているに違い
ない。
ランキングの発表が楽しみだ。
サファイアを選びながら、色が変わっている、結晶形がシッカリしているなど面白い
鉱物を選り分けておいた。これらを分類、同定するのが次なる楽しみだ。
( 赤い「鉄礬柘榴石」が紛れ込んでいるのは”ご愛嬌” )
分類待ちの鉱物たち
6. 参考文献
1) 柴田 秀賢、須藤 俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
2) 草下 英明:鉱物採集フィールド・ガイド,草思社,1988年