二上山
関東と違い、陽が出るのが遅く、まだ薄暗い。二上山の麓にある、「穴虫」の
信号の先を近鉄の線路に沿って100m余り行くと、「疋田建設 二上砕石場」が
ある。近鉄線の線路をくぐると、右手に砕石砂が山積みになっていて、ヘッドライトに
照らされてキラキラ光る。この光るものの正体はT君が見せてくれた真っ赤な柘榴石。
採石場の側を流れる小川が産地です。
<注意>
この場所は、私有地とのことですので、採集に当っては、了解を得る必要があります。
今回、Aさんが平身低頭でお願いしてくれ、数分間だけ採集させていただいた。
妻の話では、採集が終わって引上げるまで、社員と思しき人が監視していたとの事。
3.産状と採集方法
二上山は安山岩からなり、これに含まれる柘榴石などの鉱物が安山岩の風化で砂となり
付近を流れる小川に流れ出し、比重が重たいので川底に堆積した。一種の漂砂鉱床です。
かつては、この柘榴石を紙やすりなどの原料として採掘しており、大正12年に発行された
「鉱物界之智嚢」には、その様子が写真入りで紹介してあります。
穴虫の柘榴石採掘【鉱物界之智嚢より引用】
この場でざくろ石を選り分けることは不可能ですので、川底の土砂をスコップで掬って
バケツに入れる。後は、自宅に帰ってのお楽しみ。
穴虫の産地
【後日談】
自宅に帰り、パンニングを行ったところ灰色の土砂が見る見る真っ赤になり、柘榴石だけが
残る。これを乾燥させ、実体顕微鏡で見ながら、鉱物を選り分けます。
パンニング前 パンニング後
4.採集鉱物
(1)鉄バン石榴石【Almandine:Fe3Al2(SiO4)3】
真っ赤〜黄色まで、各種の柘榴石が採集できます。大きさは、最大でも3mm程度です。
ざくろ石
(2)ここでは、サファイア、ルビー、トパーズなど50種以上の鉱物が報告されています。
今回、錫石、透輝石と思われる標本を採集しましたが、何れも実体顕微鏡サイズです。
5.おわりに
(1)日下さんの本には、「サファイアは半日選り分けて10ケも採れれば・・・・」と
ありますが、延べ2時間ほど、実体顕微鏡と睨めっこしましたが、見つかりませんでした。
堆積している深さ(層)が違うのか、など次回に向け調査スタートしました。
6.参考文献
1))大阪地域地学研究会:関西地学の旅 宝石探し,東方出版,1998年
2)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3)日下英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
4)森川勉、畠山久重:鉱物界之智嚢,中興館,大正12年