新潟県新発田市赤谷鉱山の鏡(赤)鉄鉱

       新潟県新発田市赤谷鉱山の鏡(赤)鉄鉱

1. 初めに

   鉱物産地として有名な「赤谷鉱山」が日本には2箇所ある、という事をあなたが
  知っているとすれば、相当なものです。

 鉱山名所在地主な産出鉱物      備   考
赤谷(あかに)鉱山福井県足羽郡美山町自然砒、輝安鉱自然砒は、”金米糖” 
呼ばれる独特な形態
赤谷(あかに)鉱山新潟県新発田市東赤谷鏡(赤)鉄鉱、霰石青色の霰石は
松原著 「日本の鉱物」に記載

   HPにあるように、福井県の赤谷鉱山には、何回か訪れているが、新潟県のほうは
  今まで、一度も訪れたことがなかった。今回、「栃木・福島・新潟鉱物採集の旅」の
  一環で、三川鉱山を訪れた”ついでに”、立ち寄ってみた。
   東京の石友・Mさんい教えていただいた場所や「新潟県地学ハイキング」にある
  ズリで、「青色の霰石」こそなかったが鏡鉄鉱をはじめとする代表的な鉱物を短時間で
  採集する(拾い集める)ことができた。
   情報をいただいた、Mさんに厚く、御礼申し上げます。
  ( 2005年10月採集)

2. 産地

   「新潟県地学ハイキング」によれば、東赤谷の集落から加治川ダムに行く途中の
  道沿いに、かつて鉱山が稼行していたときのズリや切り通し面があり、そこで各種の
  鉱物が採集できるとあります。
   ここは、有名産地ですので、詳細は省かせていただきます。
   一部の”ズリ”は、現在稼行している会社の所有地となっているところがありますので
  立ち入りに当って、トラブルがないように注意が必要です。今回、訪れたのが平日で
  居合わせた人に了解を得て立ち入らせていただいた場所があります。

     
   赤谷鉱山産地【 「新潟地学ハイキング」に最新情報を加え改訂 】

3. 産状と採集方法

   赤谷鉱山は、石灰岩にドロドロに溶けた高温の花崗岩が上昇してきて接触し
  石灰岩と花崗岩の間で反応がおこり、カルシウムを含んだ鉱物の多い鉱床が
  つくられた。このような鉱床を、接触変成(スカルン)鉱床と呼んでいます。
   その後の火山活動で、鉄、銅、亜鉛などの金属鉱物が多量につくられた。

年代   約2〜3億年前  約1億3000年〜6000万年前      約2000万年前
説明図
説 明サンゴ・ウミユリ・フズリナ
の住む海の底
泥岩・砂岩・石灰岩が堆積
石灰岩に花崗岩が貫入
最初のスカルン鉱床誕生
流紋岩溶岩の噴出
質の良い赤谷鉱床形成

   赤谷鉱山から運び出された鉱石に伴って出た不要な廃石(ズリ)があちこちに
  埋もれていますので、これらの表面から拾い上げて採集しました。
   花崗岩の貫入に伴う石英脈には、水晶が生成している個所があるので、そこでは
  ハンマーとタガネで掻きとります。

       
          ズリ               露頭と転石
              新潟県赤谷鉱山採集地

4. 産出鉱物

 (1)鏡(赤)鉄鉱【Hematite:Fe2O3】
    鋼黒〜黒色、金属光沢の小さな板状、雲母状結晶の集合体で産する。手にもつと
   ズシリと重く感じ(比重5.3)、真っ黒でキラキラと輝く鉱物片が手につく。このような
   特徴から「鏡鉄鉱」とか「雲母鉄鉱」とも呼ばれている。
    薄い結晶を太陽にかざすと、かすかに赤く見えることがあり、「赤鉄鉱」の名が与え
   られたと思われる。

    鏡(赤)鉄鉱

 (2)閃亜鉛鉱【Sphalerite:ZnS】
    赤谷鉱山のものは、鉄分が少ないためか俗に”ヤニ鉱”と呼ばれる飴色をした半透明の
   結晶で産する。鉛灰色サイコロ状の方鉛鉱も一緒にでることが多い。

    閃亜鉛鉱

 (3)黄銅鉱【Chalcopyrite:CuFeS2】
    鏡鉄鉱の微細な結晶が集合した中に、真鍮色、金属光沢をした脈状で産する。
   一部は、”虹色”を示す斑銅鉱に変化している。

    黄銅鉱

 (4)黄鉄鉱【Pyrite:FeS2】
    鏡鉄鉱の微細な結晶が集合した中に、苦灰石などを伴って、やや白っぽい黄色
   金属光沢をした直方体、あるいは5角12面体で産する。
    苦灰石を伴う標本の鏡鉄鉱の上には、菱鉄鉱(?)と思われるガラス光沢、黄褐色の
   粒状結晶が見られる。

       
         5角12面体            菱鉄鉱(?)を伴う
                    黄鉄鉱

 (5)苦灰石【Dolomite:CaMg(CO3)2】
    晶洞の内側に白色、不透明、菱形の自形結晶の集合体で産する。菱形が変形し
   葉片状結晶が立っているように見える。松原先生の「日本の鉱物」にも、赤谷鉱山の
   苦灰石が掲載されている。

    苦灰石

 (6)灰鉄輝石【Hedenbergite:CaFeSi2O6】
    灰緑〜暗緑色の針状〜細柱状結晶の集合体として産する。針状のものは放射状に
   なる場合もあるが、柱や針状結晶には全体として方向性があるように見える。
    下の白い部分は、結晶質石灰岩(大理石)で、かつては、赤谷鉱山産のものを原料にして
   「炭酸カルシュウム」を製造していたが、産出が途絶え、現在では他所の産地のものを
   使って製造を続けている。

    灰鉄輝石【真っ白い結晶質石灰岩に伴う】

 (7)緑簾石【Epidote:Ca2Fe'''Al2(SiO4)(Si2O7)O(OH)】
    黄緑色の粒状結晶の集合体として産する。

    緑簾石

 (8)灰礬ざくろ石【Grossular:Ca3Al2(SiO4)3】
    方解石や苦灰石の中に埋もれるようにして、レモン茶色〜赤褐色、ガラス光沢の
   24面体結晶として産する。結晶の角は丸まり、粒の大きさは、1mm以下である。

    灰礬ざくろ石

 (9)このほか水晶、珪灰石などが採集できます。

5. おわりに

 (1)200年8月に、2回岩手県の湯田町にある和賀仙人鉱山を訪れた。採集許可を
   もらうため作業場に挨拶に行った。技術士としての興味から、主任と年配の部下の方に
   工場の作業内容を聞くと、赤谷鉱山から赤鉄鉱を運び、塗装の下地塗りに使う
   ”ベンガラ”を製造しているとのことでった。
    「新潟県の赤谷鉱山ですか」と話すと、「知っているのか?」と親しみを持ってくれ
   年配の方のとりなしもあって、簡単に採集許可をいただけた。
    このとき以来、知ったか振りをしたのに、実際には訪れていないことに少し後ろめたさを
   感じていた。今回、「栃木・福島・新潟鉱物採集の旅」の一環で、赤谷鉱山を訪れた
   ことで”穴埋め”ができたかと思います。
    聞くところによると、和賀仙人鉱山にあった作業場は閉鎖されたとのことで、複雑な
   心境です。

 (2)「新潟県地学ハイキング」には、鉱山が稼行中の様子が生き生きと描かれています。
    この本にはその当時の坑口や選鉱場の位置が書き込まれており、いつかそこを
    訪れてみたい、と考えています。
     そこには、「日本の鉱物」に記載された、「青色のあられ石」があるのではないかと
    想いつつ・・・・・・・・・・。

6. 参考文献

 1)地学団体研究会編:新潟地学ハイキング,新潟日報事業社,昭和53年
 2)松原 聰:日本の鉱物,滑w習研究社,2003年
 3)山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタルワールド,平成16年
inserted by FC2 system