福井県美山町赤谷鉱山の”卵形”自然砒

1.初めに

 福井県にある赤谷鉱山は「金米糖状自然砒」の産地として、鉱物コレクターの間で
世界的に有名です。過去何回か訪れ、最大15mmの金米糖や稀産とされる
立方体をなす”サイ形”(=さいころ状)自然砒を採集した。
 2003年に入って、3回目、通算6回目の訪山となった。産地に行き、採集を始めて
いると愛知県の石友Hさんも到着。今回も、雨男(Hさん)と晴れ男(私)の一騎打ちで
あったが、台風一過の好天気で私の勝ち!!。
 今回は、フルイ掛けに加え、パンニングを併用し、自然砒のでき方を暗示する
「卵形球顆に抱かれた金米糖」を採集できた。
 また、今まで見過ごしていたと思われる「高温石英」も採集でき、この産地は
高温の条件下で形成されたと推定される。
(2003年9月採集)

2.産地

 赤谷鉱山は、福井足羽郡美山町赤谷にあります。
鏡鉄鉱(赤鉄鉱)で有名な新潟県の赤谷鉱山と混同する方と出会いますが、全く違う
産地ですので、お間違いのないように。

3.産状と採集方法

 変質した流紋岩中に産し、抜け落ちた(流紋岩が風化した?)単晶がズリ粘土
の中から探し出せます。
 採集方法は、ズリ粘土を川の中でフルイ掛けして、残った小石の中から、拾い
出します。

  フルイ掛けするHさん

 「フルイ掛け」で採集していると、石英(玉髄?)の卵形球顆の空洞に自然砒が
入っているものがあることに気が付いた。
 金米糖だけを探していると、見逃してしまう標本なので、こんなこともあろうかと
持参した大ブリのパンニング皿で、振るい掛けの「カス」をパンニングすると
自然砒や「高温石英」などの面白い標本が採集できた。
 自然砒の比重は5.7で、石英の2倍強あり、パンニングで充分選り分けられます。

  「フルイ掛け」と「パンニング」

4.産出鉱物

(1)”卵形”自然砒【Native Arsenic;As】
   ”卵形”は、私がつけた造語です。”卵”のような楕円体をした石英(玉髄?)の
   球顆の中に自然砒が入っているものである。
    球顆の殻は卵の殻のように薄く、一部が割れたものがある。卵の白味部分は
   石英から長石系の鉱物で、”自然砒”を囲むように詰まっている。
    これらが風化、粘土化し抜け落ちると推定しています。

  ”卵形”自然砒

(2)高温石英【High Quartz;SiO2】
    今まで、6mm目のフルイ掛けでは、見つけられなかった小さな結晶を
   パンニングで採集した。数的には、もっとあるものと思われる。

  高温石英

5.おわりに

(1)訪れるたびに、変り種の標本が採集できます。”金米糖”だけでなく、広い目で
   採集すると、楽しみが広がります。
(2)”卵形”自然砒の写真を見ると、卵が割れ、雛がまさに、孵化する瞬間を
   思わせます。
    ”孚”と書いて、”まこと”と読ませる、某製作所の新入社員の頃に受けた
   教育を思い出しています。

6.参考文献

1)市川 新松:福井縣鑛物誌,同,昭和8年
2)木股 三善、宮野 敬:原色 新・鉱物岩石検索図鑑,北隆館,2003年
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