帰宅後、Tさんから写真を添えたお礼のメールをいただき、今どき2cmを筆頭に多数の
私が、今回ここを訪れた目的は、狙って「メタ輝安鉱」を採集したかったからだ。石友
貴重な標本を恵与してくれた滋賀の石友・Nさんと同行いただいた皆さんに厚く御礼
3.2 採集方法
Nさんに恵与いただいたリッチなものと、今回私が採集した標本を並べ、産状など
比較結果から、『採集のヒント』をまとめておこう。
@ 母岩
A 共生鉱物
B 色・外観
たまたま、「輝安鉱」の標本として持ち帰ったものにも”シミ”のようなものが共生して
『いつまでもあると思うな産地(親)と鉱物(金)』、だが、その一方でこのように新しく
さて、2000年に赤谷鉱山を訪れた記録が私のHPにある。
このとき、”紅い鉱物”を採集し、「紅安鉱?」ではないか、はたまた”辰砂”かと
「鶏冠石」としておいたが、これが「メタ輝安鉱」だったかも知れず、この標本を探し
私自身は、”発見者”になることにはほとんど執着しないが、興味のある方は
これも、ミネラル・ウオッチングを面白くする1つのキーワードになりそうだ。
(2) 「福井・下味見」局
大正2年8月26日
(3) 念願叶って
( Digest Version of Mineral Watching Tour in Hokuriku Area , Sep. 2009
Nagano,Niigata,Ishikawa,Fukui & Gifu Pref. )
良品が採集できるとは想定外だったようだ。
赤谷鉱山産「自然砒」
【採集、撮影:Tさん】
菱面体結晶が
球状に集合した
いわゆる「金平糖」
粘土中にあったせいか
酸化が進まず、銀白色
部分が残っている。
Nさんが送ってくれた見本をポケットに忍ばせ、ズリでそれらしい石を叩き続けて1時間
一向に「メタ輝安鉱」は姿を見せない。
外道で、「針状輝安鉱」、「母岩付き自然砒」などは嫌と言うほど出てくる。(贅沢!!)
ポケットに忍ばせたNさんの恵与品をもう一度ジックリ見直す。どうやら、母岩は緻密な
玉髄質のようだ。
狙い違わず、叩いた石の断面が赤い。「来た!メタ輝安鉱だ!」。これで、念願が
叶った。
申し上げる。
( 2009年9月 採集 )
2. 産地
過去のHPに詳しく記載されていますので詳細は割愛する。
産地で思い思いのポイントに
散らばって、採集
Tさん親子は『金平糖』
Ms.Nと私は『メタ輝安鉱』を
狙う。
【対岸から撮影:Nさん】
3. 産状と採集方法
3.1 産状
これも、過去のHPに詳しく記載されていますので詳細は割愛します。
「金平糖」を採集するときは、@ ふるい掛け、かA パンニングが有効なのだが、
「メタ輝安鉱」は、、「ハンマで叩き、割れ口をルーペで見ることの繰り返し」だ。高品位
標本は、「初めに」でも書いたように、割った瞬間”紅(あか)色”が目に飛び込んでくる
ので、ルーペがなくてもわかるはずだ。(確認のためには、ルーペが必要)
4. 産出鉱物
(1) メタ輝安鉱【METASTIBNITE:Sb2S3】
メタ輝安鉱は、輝安鉱【STIBNITE:Sb2S3】と化学式(=組成)が同じ
いわゆる『同質異像』の関係にあるが、その外観(見た目)は全く違う。
を検討してみたい。
区 分 採 集 者 標 本 写 真 説 明
全体 Nさん
石英粗面岩の石英脈を
鉱染する”銀黒”様硫化
鉱物と共生
Mineralhunters
【2009年9月採集】
玉髄質の石英塊の
「輝安鉱」と共生
拡大 Nさん
輝安鉱がほとんど
見られない
石英部分に生成
Mineralhunters
【2009年9月採集】
輝安鉱が少ない部分の
石英に接して生成
「輝安鉱」の表面にも共生
一見、Nさんの恵与品と私のものでは、母岩が違う印象を与えるかも知れな
いが、これは、石英粗面岩に走る石英脈に対してどう割ったか、の違いだけ
である。
つまり、Nさんは、「石英脈に直角」に、私は輝安鉱が良く見える「石英脈に
平行(沿って)」に割った結果なのだ。
Ms.Nが採集した標本は、輝安鉱の柱状結晶が縦割りになったもので、石英
との際に「メタ輝安鉱」が見られ、石英がエンジ(鈍い赤)色に鉱染していた。
Nさんのも私のも、輝安鉱が少ない(ほとんどない)部分の石英に接している
傾向がみられる。
ただ、”不毛の”石英脈ではなく、必ず近くに輝安鉱があるし、今回採集した
標本のように、輝安鉱に接しているものもある。
Nさんから恵与いただいたサンプルを一目見て、どの鉱物に似ているか、と
言われると、「洋紅石」だろうか。「ベンガラ(赤鉄鉱)」に似てなくもないのだが
もっと明るく、輝きがある。
『非晶質』(結晶しない)、とされるが、微細な尖った結晶の集合のように見え
るので、そのような印象を受けるのだろう。
いるくらいで、質さえ問わなければ量的にはかなりありそうだが、肉眼でも”紅色”が
見られる質の高いものは稀の印象だ。
5.おわりに
(1) 「紅い鉱物」考
2008年発行の加藤先生の「一覧」に、メタ輝安鉱の産地として、福井県福井市赤谷
鉱山が記載してある。
2006年発行の松原先生の「型録」には、メタ輝安鉱の名がないこところから、発見さ
れて、まだ2、3年のようだ。
発見される鉱物や産地があるのも、ミネラル・ウオッチングを楽しくしている要因の
1つだろう。
考えたが、一部黄色(石黄【ORPIMENT:As2S3】)に似ている部分もあり
「鶏冠石」としておいた。
出してもう一度見直す必要がありあそうだ。
もし、このとき、「メタ輝安鉱」の存在を知っているか、疑問をもって分析に出してお
けば、”新産鉱物の発見者”になり得たかもしれない。
@ 不明な鉱物は分析を依頼する。
A 国内で産出未報告の鉱物でもその外観、物性などをインターネットで調べて
おくとよいだろう。
以前のページで紹介したが、「赤谷鉱山」は「味見鉱山」と呼ばれた時期もあった。
「赤谷」は鉱山よりもさらに山奥にある集落だが、「味見」は、福井市あるいは大野
市寄りにあるより規模の大きな集落で、「上味見」、「下味見」の2つの集落がある。
赤谷鉱山に最も近い集落は「下味見」である。
私の別な趣味の1つに、郵便切手などを集める「郵趣」がある。赤谷鉱山があった
「福井・下味見」局の消印を押した郵便切手が売られていたので、すぐに入手した。
「福井・下味見」局消印
菊5厘切手田型
赤谷鉱山を訪れ、「これでこの産地も、ようやく卒業できそうだ」、と何回か書いた
気がする。2009年4月のHPを読んだ石友・Nさんに「メタ輝安鉱」の佳品を恵与いた
だき、”雌伏2ヶ月”、今回「メタ輝安鉱」を狙って採集でき、この産地も卒業できそう
だ。
貴重な標本を恵与してくれた滋賀の石友・Nさんと同行いただいた石友の皆さん
に改めて御礼申し上げる。
6.参考文献
1) 松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
2) 加藤 昭:日本産鉱物分類別一覧 −無名会七十五周年記念−,無名会,2008年